目の前の急病人を助けない大人が、子供に道徳を教えられるのか

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「人を助けることは大切」と小さな頃から教え込まれてきているはずの日本人。しかし、実際に行動に移せる大人はというと…。今回の『「二十代で身につけたい!」教育観と仕事術』では、著者で現役小学校教諭の松尾英明さんが、つい先日遭遇したという「駅で倒れている急病人」に対する周りの人間の行動から垣間見えた「道徳教育」の問題について記しています。

ホームで人が倒れていたら

公衆道徳の話。

人を助けることは大切。道で倒れている人がいたらどうするか? 当然「助ける」と答える。普通の答えである。「急いでいるから放っておく」「どうしていいかわからないから助けない」と子どもが答えたら、どう思うか。親や教師なら「その考えを改めさせたい」と思う。しかし、現状でそれはなかなか難しいのがわかった。

先週、実際その場面に出くわした。私は現在、電車通勤である。目的の駅についてホームに降りた。すると、前方50mほど離れた別車両から人が降りて、うずくまるように倒れた。大勢の人がいるが、誰も近寄らない。歩きながらちらっとは見るが、脇を通り過ぎて行く。「スルー」または「傍観」である。

その場まで行ってみると、倒れているのは二十代ぐらいの男性である。苦しそうに荒く息をして、目をぎゅっとつぶっている。車内は満員に近く、多くの人が車両の中から立って男性を見下ろしている。

先に降りた人も含め、誰も助けないのである。お陰様で私が「いい人」の役をおおせつかった上にこうしてメルマガのネタにもなる訳である。そういえば、銀座まるかんの創業者、斎藤一人さんが「歩道橋前で重い荷物を持ったおばあちゃん」を探し求めて数十年。やっと見つけた瞬間に急いで声をかけてつかまえたという話があるが、あれと同じである。人を助けて自分を役立てることは、赤ん坊すらもつ本能的欲求であり、「助けさせてもらったこと自体が感謝&報酬である。

しかし、この「ラッキーな事態」に周りの誰も動かなかった。多分、先に挙げたような「どうしていいかわからない」心理ではないかと思う。気持ちとしては助けたい人も多いのではないかと思うが、実際動かない(動けない?)のである。

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