【書評】尖閣・漁船体当たり事件を「予言」した日本人アナリスト

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2010年に発生した尖閣諸島・中国漁船体当たり事件。その2年前にその出来事を予測して著書に書いていたのが、国際アナリストにしてメルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さんです。北野さんは、自身の著書『日本人の知らない「クレムリン・メソッド」世界を動かす11の原理』で、日本が国際社会に騙されていることを指摘し、今もなお仕組まれているという中国からの「情報戦」について詳細に記していました。今回の無料メルマガ『Japan on the Globe-国際派日本人養成講座』では、そんな北野さんの名著を紹介しつつ、日本人の情報への触れ方に警鐘を鳴らしています。

国際社会は嘘ばかり~北野幸伯『クレムリン・メソッド』を読む

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日本人の知らない「クレムリン・メソッド」世界を動かす11の原理

北野幸伯・著 集英社インターナショナル

2010年に起きた尖閣諸島における中国漁船体当たり事件は、日本中を震撼させたが、その2年前に「尖閣諸島から日中対立が起こる」ことを予測した識者がいる。本誌にもたびたび登場いただいているモスクワ在住の国際関係アナリスト北野幸伯氏である。

氏の『日本人の知らない「クレムリン・メソッド」世界を動かす11の原理』では、なぜそういう予測ができたかの種明かしをしている。

それは簡単なことで、「アメリカが撤退した後に、中国が何をしたのか」に関する事実を見てみればすぐに分かるという。

1.1973年にアメリカは南ベトナムから撤退。翌1974年1月、中国は西沙諸島の南ベトナム実効支配地域に侵攻し、占領。その後、同諸島に滑走路や通信施設を建設。

2.1992年、アメリカ軍はフィリピンのスービック基地、クラーク空軍基地から撤退。1995年1月、中国はフィリピンが実効支配していた南沙諸島ミスチーフ環礁に軍事監視施設を建設し、そのまま居座った。

要は、中国は米軍が後退した真空地帯にはすぐに侵出する、という事実である。尖閣諸島も当時、米軍が日米安保の対象にするかどうか明確にしておらず、また民主党政権の弱腰もあって、軍事的には真空地帯であった。

「国益」のために国家はあらゆる「ウソ」をつく

中国は口先では「平和的台頭」などと言っているが、「国益のために、国家はあらゆるウソをつく」というのが、国際社会の原理であり、それを見破るためには、「真実は、言葉ではなく行動にあらわれる」というのが、氏の考え方だ。

中国の「平和的台頭」に呼応するように、日本国内でも「沖縄に米軍基地はいらない」「平和憲法を守っていれば戦争は起きない」などと言う人がいまだにいる。そういう嘘に騙され続けたら、我々の子孫はベトナムやフィリピンのみならず、チベットやモンゴル、ウィグルのような目に逢うかもしれない。

それを避けるためには、こういう嘘を見破るだけの見識を我々は持たなければならない。

北野氏はロシアの外交官や情報員を養成するモスクワ国際関係大学を日本人として初めて卒業しており、国際政治の嘘を見破る方法を今回「クレムリン・メソッド」として説いている。そのさわりを紹介したい。

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