「運ちゃんの勘」を人工知能で。タクシー会社が導入した凄い技術

2017.12.08
by まぐまぐニュース スタッフ
タクシー つばめタクシー 理央周 AI 人工知能
 

タクシーといえば、今も昔もベテラン運転手の勘と経験が頼りの世界です。しかし、そんなイメージを払拭するかのような「AI(人工知能)活用」が、旧態依然としたタクシー業界を変えようとしています。メルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』の著者でMBAホルダーの理央周(りおう・めぐる)さんが、タクシー業界の「AI活用」について分かりやすく紹介しています。

タクシー会社のAI活用

私は常々、流しのタクシーのマーケティングは難しい、と感じていました。

売り手側のタクシーとしては、顧客がいつ、どこで乗ってくれるかわかりませんし、リピートを取ることも難しいといった問題点があります。

一方で、買い手側の乗客としては、必要な時にすぐにタクシーが来るわけではありませんし、好きなタクシー会社や運転手さんを選ぶことができない、という問題点があります。

顧客もタクシー会社もお互いを選ぶことができないのです。

マーケティング活動では、STPというフレームワークを用いて、市場を細分化し、必要なターゲット層として塊にする、そしてポジショニングを決める、というステップです。

しかしタクシーは、路上で手を挙げている人がいたら車を止め、乗ってもらい、目的地を聞き、送り届けるというステップを踏むため、あらかじめターゲットを設定することができません

ということは、顧客層の需要を予測することが非常に困難だということです。

運転手個々人の勘と経験で、「この時期、この時間帯だったら、どこに行けばお客さんがいそうだな」という個人レベルでの需要予測になりがちです。

そのため、経験豊富で工夫ができる運転手さんと、そうでない運転手さんの差ができてしまい、ロスの最適化をすることが難しくなります。

そんな中、愛知県に本拠地を置く、つばめタクシーグループは、NTT Docomoの仕組みを活用しての、タクシー配車の最適化に取り組んでいます。

NTT Docomoが開発してきた、AIを活用した「リアルタイム移動需要予測技術」を使って、携帯電話の基地局接続状況を、個人を特定しない形で統計化したビッグデータを基に、つばめタクシーグループの運行実績データや気象データなどを組み合わせてAIで分析し、「30分後にタクシー需要が大きくなりそうなエリア」を見える化し、自社の運転手に通知をすることで、「どこに行ったら、お客様が多くいそうか」という、タクシー需要と自社配車の最適化を図る、という仕組みです。

顧客がいそうな場所を AIで探し、現在地から直行することで、もちろん自社のロスをなくすことができるのと同時に「タクシーが来ないな」と長く待ち続ける顧客のもとに走れるという、自社と顧客のニーズをマッチさせる理想的なAI活用です。

最近はAIやIoTという言葉を聞かない日がないくらいですが、AIを使ってみよう、というアプローチではなく、顧客が問題としている点は何か、ということを常に考えていると、このような発想が出てくるのでしょう。

やはり、商売の原点は顧客なのだ、ということを思い起こさせる事例です。

image by: つばめタクシーFacebook

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