没落するMicrosoft、「失われた10年」の原因は何だったのか?

 

私自身、Microsoftにいた時に、ウェブ・アプリケーションの可能性に気づき、NetDocsというプロジェクトを立ち上げたことがあります。ちょうど、Googleが誕生した1998年のことです。

Microsoft Officeのように、特定のOSに特化して作られ、パソコンにインストールして走らせるパッケージソフトの時代は終わり、ブラウザ上で動くウェブ・アプリケーションの時代が来ると確信してのことです。Microsoftの中で、この事実に気がついていた人はそれほど多くはありませんでしたが、ネットスケープが公開しているホワイトペーパーを読めば、一目瞭然の話でした。

当時、私自身はWindowsグループでソフトウェア・アーキテクトをしていましたが、Officeグループのソフトウェア・アーキテクトの知り合いスリーニ・コッポルと二人で、ウェブ上で走るオフィスアプリケーションを作るグループを立ち上げたのです。HTMLとJavaScriptのみを使い、IEだけでなく、他のブラウザでも動くような設計のウェブ・アプリケーションです。

当初は、スリーニと私を含めた数人のエンジニアで、まずはブラウザ上でシンプルなワープロを動かすことを目的に小さなプロジェクトを立ち上げ、数ヶ月でそれなりの機能を持つワープロが少なくともIE上で動き始めるところまで持っていくことが出来ました(ネットスケープ・ネビゲーター上での開発も並行して進めていましたが、jQueryのようなライブラリも存在しないので、簡単ではありませんでした)。

しかし、そのプロジェクトがある程度軌道に乗ったところで、それまでOutlookを作っていたブライアン・マクドナルドという副社長クラスの人が私たちのプロジェクトに目をつけ担当重役として指揮を取ることになりました。

ブライアンは、ビル・ゲイツやスティーブ・バルマーからの信頼も厚い人で、予算もふんだんに確保し、あっという間にプロジェクトの人員は200人を超える規模にまで膨らみました。

プロジェクトもその規模になると、ビル・ゲイツやスティーブ・バルマーへの定期的なレポートが必要になるのですが、最初のミーティングから帰って来たブライアンは「Windowsビジネスのことを考えれば、(HTML+JavaScriptではなく)ActiveXで作るようにという指示をもらって来た」と言うのです。

それでは当初の「インストールが不要で、どのブラウザでも動くウェブ・アプリケーション」というビジョンから大きく外れてしまうので、私とスリーニは猛反対しましたが、ブライアンだけでなく、会社のトップの経営判断に逆らうことは不可能で、プロジェクトは一から作り直しになりました。

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