実業家トランプは、アメリカの覇権を弱体化させる
トランプさんは、アメリカ国を一企業のように考えている。しかし、この考えかたは、事実としてアメリカの覇権を弱体化させます。
たとえば、シリアのことを考えてみましょう。この国では2011年から内戦がつづいている。ロシア、イランは、アサド現政権を支持。アメリカ、欧州、サウジ、トルコなどは、反アサド派を支援しています。
ところが、アメリカは、本気でアサド打倒に取り組まなかった。なぜ? オバマさんが、中東への関心を失ったから。なぜ? シェール革命で、アメリカは、いまや
- サウジ、ロシアに並ぶ石油大国
- ロシアに並ぶガス大国
になった。
アメリカが中東に関心があったのは、主に「石油あるから」でした。ところが、シェール革命が起こり、いまや自国にたっぷり石油、ガスがある。それで、オバマは「もう中東はいいや」となった。そして、オバマ時代の特に二期目、アメリカとサウジ、イスラエル関係がひどく悪化したのです。
アメリカ実質不在の隙にロシアは攻勢を強めた。アサドはすでに、シリアのほぼ全土を掌握するまでになっている(反アサド、ISの支配地域は、ごくわずか。第2勢力は、米軍が支援をつづけるクルド)。
この例でわかることはなんでしょうか?
「どこかの地域に空白が生まれると、別の大国が入ってくる」
これがシリアの教訓です。で、別の「大国」とは、現状中国、ロシアのことなのです。
たとえば、ドゥテルテさんは、アメリカとの関係を悪化させた。中国は、安心してスカボロー礁を奪いました。ドゥテルテさん、最近は「フィリピンを中国の一つの省にすることもできる」などと発言しているようです。
●「フィリピンを中国の省の一つに」、ドゥテルテ比大統領がジョーク―米華字メディア
ジョークにしても、かなり「売国的」発言です。
では、在韓米軍が撤退すれば、韓国はどうなるのでしょう? もちろん、実質中国に支配される国になるでしょう。
トランプさんは、中東から、韓国から、「米軍を撤退させる」といっている。そうなると、アメリカが去った空白を、中国、ロシアが埋めることになります。アメリカの世界的影響力、覇権は、当然弱体化します。