英国軍司令官が「プーチンはすでに負けた」と宣言している。停戦が実現したとしても、プーチン大統領の行動は短絡的だったと考えざるを得ない。ロシアに対して、中立を宣誓していた国々がどんどん反ロシアになってきているのだ。(『房広治の「Nothing to lose! 失う物は何も無い。」』房広治)
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「プーチンはすでに負けた」
英国の軍の司令官のトニー・ラダキン(Sir Tony Radakin)は、「In many ways, Putin has already lost the war in Ukraine.」と発言している。これが現在の世界のセンチメンタルである。
最新鋭の武器をもった世界第2位のロシアが、小国のウクライナの占領に、ここまで手間取るとは誰も思っていなかった。それこそ、軍事評論家と呼ばれるテレビに最初から出演していた人々の予想は、180度間違っていたのだ。
NATOもアメリカもEUも国連も、ウクライナがここまで善戦するとは誰も思っていなかった。
ラダキン氏の発言はプーチン大統領がロシア兵をウクライナの前線から後方に少しだけ撤退させるという方向転換に対してのものだが、今後、世界の中でのプーチン大統領の孤立は避けられない。
軍隊の大きさの違い
ウクライナの軍隊のランキングは22位で、ロシアは2位であるとYouTubeなどでは比較されている。
この動画のデータからは、ウクライナがロシアの攻撃をここまで抑えられるというようには想像できない。
例えば、戦闘機の数は325機 vs 4,208機である。しかも、ロシアは、最新鋭の2020年代の飛行機がたくさんあるのに、ウクライナの方の戦闘機は1970年代のソ連時代からの旧型が多い。
Next: ロシア軍の通信をハッキング?ウクライナの優秀なエンジニアが大活躍
通信のハッキング合戦でもウクライナに軍配か
ロシアがオックスフォード大学をハッキングしようとしたことについては、当メルマガで以前に書いた。ロシアは、いろいろな国々の政府機関、有名企業、有名大学をハッキングしようと試みている。
クレミア半島への侵攻もまずは、通信をジャミングさせて、クレミア政府の通信を使えなくして、簡単に制圧してしまった。
ところが、今回ウクライナ政府や軍は、ロシアのハッキングを防いでいるようだ。しかも、逆にロシア側の軍の通信を傍受しているようなのだ。
これは、ソ連時代にウクライナは、IT産業重点地域であったため、多くの優秀なエンジニアを抱えているためだと私は信じている。
日本も早く、優秀なエンジニアを育てるSTEM教育に重点を置かなければいけないという想いが日に日に強くなる。
戦場でのドローンの威力
民間と軍事技術の境目がなくなっているのを感じたのが、今回のウクライナのドローン攻撃である。
ドローンがロシアの戦車を見事に大破させる映像を、皆さんも見たことがあるでしょう。戦車1台分の費用で、ドローン100機は買えるでしょう。
このドローンに必要な部品のいくつかは、アメリカやカナダ製のものだが、アメリカやカナダは、これらの部品の輸出をかなり規制していた。そのため、今回使われたものは、イギリス軍が寄付したものと、ウクライナの民間人のグループが8年前から海外の協力者と同好会グループを創って作り上げたものと考えられている。
実際にこれらドローンを使い、戦車を破壊したのは、もとインベストメントバンカーやコンサルタントだった「民間人」だと言われている。また、別の戦車を手で持てるミサイルで爆破したのは、8年前に夫をロシアとの紛争でなくした人の妻だという。
これら民間人が今回の戦争で活躍しているのが、素晴らしいことだと私は思う。
ちなみに、イーロンマスクは、スターリンクをウクライナ軍やウクライナの民間人たちに使わせているという噂がある。これが本当ならば、民間の力の重要性は日に日に増し、そのこと自体は、健全なことだと思う。
Next: スマホ撮影とYouTubeで世界中を敵に回してしまったロシア軍
スマホ撮影の映像とYouTubeが世論を作った
子ども病院などウクライナの民間施設が爆破される映像などをみると、プーチン大統領に対して、またロシア軍に対して憤りを感じる。大勢の人々が殺されている。
それに対して、ウクライナの攻撃は戦車やヘリコプターや戦闘機など、限られた戦果でしかない。
これらの惨状と戦果は、スマホだけで撮影・編集され、YouTubeにアップすることができ、これが世界に対して、世論をウクライナ寄りにする効果があった。
また、ロシア軍やロシアの人々がYouTubeにアクセスできれば、戦意を喪失させるにも役立つのだと思う。
Googleがロシアでのオペレーションを辞めてしまったのが残念である。
飛べない500機以上の航空機を没収
今週ロシアは、ロシアの航空機会社がリースしている飛行機をリース会社が返還を求めるには、ロシア政府の許可がいるという法律を成立させた。
結果、500機から900機のロシアの航空会社が海外からリースされている100億ドルから200億ドル分の飛行機の返還をリース会社が要求するのが難しくなったと報道されている。
この法律は、西側の経済制裁の一環で、リース会社がロシアの航空会社との契約を破棄し、海外にある機体をすべて差し押さえてしまったことに対する、プーチン大統領の対抗策である。海外にある機体は、ロシアに持ってくることができなくても、ロシア国内にあるものは、そのまま没収してしまおうという作戦である。
問題は、ボーイングもエアバスも飛行機が飛ぶのに必要な部品・消耗品の供給を止めているので、ロシアにあるボーイングとエアバス製の飛行機が飛べなくなるのは時間の問題であることだ。
Next: ガス代のルーブル支払い程度では「ルーブル安」は止められない
ガス代のルーブル支払いに意味はない
ドイツ・インド・中国の、ロシアに対しての「弱腰さ」が目立っている。
ドイツは、天然ガスの供給をロシアから受けなければ、停電が起こってしまうので、天然ガスを買わなくすることができないと判断している。
その支払いをロシア側がルーブルでしろと言ってきたというのに対して、ドイツは断ったというのがニュースになっている。私から見るとこれは、これこそ50歩100歩で、たいした違いはない。
ロシアは、外貨も必要なので、ユーロやドルが手に入るならば、ありがたい話である。もし、本当にルーブルでの支払いをプーチン大統領が要求したとしたら、プーチン大統領は、金融がわかっていない。一時的にルーブルの下落を止めようという考えだろうが、ドイツのガス購入代金ぐらいのルーブルに対する需要がルーブル安を止められるわけがない。
我々の問題は、世界のマスコミがこのことが分かっていないことである。すなわち、ルーブルでしか支払いを認めないとロシアが言ってから、どんどんエネルギー価格が上昇しているのだ。
もしかしたら、プーチン大統領は、金融学的にはインパクトが少なくとも、ルーブルで払えと言えば、エネルギー価格が高騰することを見込んでいたのかもしれない。
交渉では、プーチン大統領の方が西側のリーダーよりも老獪である
中立だった国々が次々と「反ロシア」へ
かつて、大国ソ連の宣戦布告に対して、自国を守った小国としてフィンランドがある。
フィンランドもスウェーデンも、オーストリアもスイスもアイルランドも、NATOのメンバーではない。ところが、今回のプーチン大統領のウクライナ攻撃を見て、フィンランドもスウェーデンも、民衆はNATO入りを真剣に検討することを望んでいる。スイスも永世中立を辞めた。
プーチン大統領の行動は、短絡的と考えざるを得ない。結局、ロシアに対して、中立を宣誓していた国々がどんどん反ロシアになってきているのだ。
これが、ラダキン卿のコメント「プーチンはすでに負けたのだ」というコメントの真意なのだ。
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『房広治の「Nothing to lose! 失う物は何も無い。」』(2022年4月1日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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