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解約するか継続するか…老後生活で“加入しておく保険”と“加入していい保険”の見分け方=牧野寿和

老後生活に入った方に保険について相談を受けることがありますが、その方の状況に応じて「加入しておく保険」と「加入しておいてもいい保険」の二つに分けられます。今回はその見分け方について解説していきます。(『【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ』牧野寿和)

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プロフィール:牧野寿和(まきの ひさかず)
ファイナンシャルプランナー、牧野FP事務所代表。「人生の添乗員(R)」を名乗り、住宅取得計画やローンプラン、相続などの相談業務のほか、不動産投資、賃貸経営のアドバイスなども行う。著書に『銀行も不動産屋も絶対教えてくれない! 頭金ゼロでムリなく家を買う方法』(河出書房新社)など。

加入しておく保険と、加入しておいていい保険

「こんな相談をしてもいいですか?」と、心配しながら相談にみえる方がいます。

その相談内容には、早急に対応が求められるケースがあります。

また、ほかの相談を受けて一段落したときに日頃から疑問に思っていたからと、相談を受けることもあります。

老後の生活を過ごすときも「加入しておく保険」と「加入しておいてもいい保険」について、よく相談をいただきますので、今回はその疑問についてお答えいたします。

今回の記事の構成は次の通りです。

1.加入しておく保険
1-1.自動車保険
1-2.自転車損害賠償責任保険等
1-3.火災保険など損失補填してくれる保険

2.加入しておいてもいい保険
 2-1.死亡保険
 2-2.医療保険などそのほかの保険

3.保険に加入する目的

なお、2.加入しておいてもいい保険は、その方の状況によって、加入しておく保険にもなります。

1.加入しておく保険

加入しておく保険とは、保険に加入しておくことで、万が一、自分の貯蓄や資産を売却しても、到底支払うことのできない多額の損失を「補償」してくれる損害保険です。

1-1.自動車保険

たとえば、自動車の運転中に事故を起こした時、損害補償をしてくれる自動車任意保険です。

車を所有する人は、原付バイクを含め「自賠責保険(強制保険)」に加入することが義務付けられています。

しかし、自賠責保険は、被害者を救済することが目的の保険で、対人事故の場合のみ、被害者に一定の範囲内の保険金が支払われるのみです。

この自賠責保険を補うために、任意の自動車保険に加入することは必須です。

なお、電動キックボードは、原動機付自転車等(原付バイク)に該当しますので、自賠責保険への加入が必要です。

1-2.自転車損害賠償責任保険等

自転車に乗って事故を起こして、相手を死傷させた時の補償として自転車損害賠償責任保険等に加入すべきです。

この補償は、個人賠償責任保険や自動車の任意保険、火災保険、傷害保険などの特約として付帯されていることもあります。

そこで、加入中の保険に付帯されているか、またいくら補償されるか確認してください。

歳をとって、車に乗るのを止めて、自動車の任意保険も解約したあとも、自転車には乗るときは、あらためて現在加入している保険に自転車損害賠償責任保険等の補償が付帯されているかを確認して、対応することが大切です。

なお、この保険は都道府県や政令指定都市で、加入を義務づける条例が制定されています。

1-3.火災保険など損失補填してくれる保険

万が一、自宅が火事となった場合の補償として、火災保険への加入は住居を確保するためにも必要です。

火災保険には、家財や台風などの被害で傷んだ家屋を修繕する特約などもあり、必要に応じて特約に加入しておいてもいいでしょう。

また、火災保険だけでは補償されない地震保険も加入しておいた方がいいです。なお、地震保険は単独では加入できず、火災保険といっしょに加入します。

賃貸住宅に住んでいる方は、万が一、火災を起こした時などのために、入居時に不動産仲介業者などから借家人賠償責任保険への加入が勧められます。

補償の内容を確認して、加入しておくことも必要です。

損害保険は、上述のほかにも個々の生活で必要とする補償を補ってくれる保険です。

たとえば、海外旅行に行くときの海外旅行傷害保険などです。

つまり、損害保険には、年齢には関係なく必要な時の必要な補償額分は、加入しておくべきということです。

Next: 加入しておいてもいい“死亡保険”や“医療保険”



2.加入しておいてもいい保険

すでに、上述の損害保険の内容でも、特約の部分については、加入しておいても加入しなくてもいい保険に該当する方もいるでしょう。

反対にこれからお話する保険商品が、加入しておく保険に当たる方もいると思います。

この章では、主に死亡保険について、お話をいたします。

2-1.死亡保険

老後の生活で、死亡保険に加入する目的は、主に2つです。

1つ目は、亡くなったことで必要になる葬式や法事といった費用や、また、人によっては、今まで営んできた事業を止める費用です。

これらの費用のことを整理資金といいます。

2つ目は、相続の資金のためです。

1つ目の「整理資金」は、亡くなることで必要になる費用が、貯蓄などで賄うことできない金額分を死亡保険の保険金で賄います。

また、2つ目の「相続の資金のため」とは、生命保険の保険金を相続の対策の費用として、利用するためです。

たとえば、生命保険などの死亡保険金を相続人(配偶者や子ども)が受取るとき、その生命保険の保険料の全部または一部を被相続人(亡くなった本人)が支払っていれば、相続税の課税対象になります。

しかし、この死亡保険金の500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額となります。そして超える部分が、相続税の課税対象額になります。

つまり、相続税納付の節税対策として生命保険に加入するのです。

相続税の節税対策のほかにも、複数の子どもがいる家庭で、子どもに相続する資産が持家のみ、その親の持家(実家)は長男が相続して長男家族が住むなら、他の子どもには死亡保険金で、子どもたちに均等な相続をする対策の手段となります。

2-2.医療保険などそのほかの保険

医療保険については、私たち日本の国民は、生涯、健康保険に、40歳以上は介護保険にも加入して保険料を毎月納付しています。

この保険を補うために加入するのは民間の「医療保険」です。

この健康保険は、所得や年齢などに応じてかかった医療費の3割、2割、1割を支払えばいい制度です。

また、「高額療養費」という制度もあります。

この制度は、収入や所得によって、1カ月間の医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額(自己負担限度額)までを支払えばいい制度です。

詳しくは、厚生労働省のPFF「高額療養費制度を利用される皆さまへ」をご覧ください。

繰り返しになりますが、民間の医療保険には、健康保険を補う必要のある方は補う部分に加入すればいいのです。

介護保険対象の保険商品でも同じことが言えます。

Next: 保険に加入する目的は万が一の損害や生活保障のため



3.保険に加入する目的

このように、保険に加入する目的は、自身の収入や貯蓄、資産では賄いきれない、万が一の時の損害を補償するためや、生活を保障するためです。

また、保険商品に加入するには保険料の支払いが必要になります。必要以上の補償、保障の保険に加入すれば、その分、保険料の負担も増えます。

したがって、保険に加入するのであれば、自分に適した分の保険商品だけに加入すればいいのです。

老後の生活で加入しておく保険商品は限られているようです。

今週のポイント

保険商品に支払う保険料は、老後の生活費に負担がかかる場合があります。

今まで長い期間加入していても、不要なものは解約すべきです。

「安心」を得るために保険に加入する方もいます。高額な支払いに納得するのではなく、適正な価格と内容の保険に加入することを納得すべきでしょう!

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image by:milatas / Shutterstock.com

【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ』(2022年11月2日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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