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【展望】日米金融会合と英国国民投票を睨んだ「様子見相場」のポイント=馬渕治好

今週も週明けの国内株価は、先週末の欧米の株価下落を消化して、下落を余儀なくされると懸念します。ただ、為替市場の落ち着きに示されているように、世界市場が波乱に見舞われ続ける可能性は薄いでしょう。

週初に波乱が一巡したのちは、FOMCと日銀金融政策決定会合を待って、様子見地合いが支配的になるでしょう。両会合とも金融政策の変更はなく、市場参加者の多くもそう予想していると推察します。このため、両会合の結果が出ても、世界市場は大きくは動きにくいと見込みます。また、週末が近づくにつれて、来週の英国の国民投票が気になってくるものと考えられます。(『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』2016年6月12日号)

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今週(6/13~6/17)の世界経済・市場動向の注目ポイント

週初は安く始まるも、落ち着きを取り戻す展開か

週初は、特に日本株については、先週末に欧米の株価が下落したことを受けて、安く始まらざるを得ないでしょう。ただ、為替市場(特に米ドルなど、欧州通貨ではないもの)には動揺が少なく、シカゴの日経平均先物も売られ過ぎです。また、実体経済などについて、特に悪化は見られません。この点からは、徐々に世界の株式市場は落ち着きを取り戻すでしょう。

そののちは、世界的に様子見気分が広がるものと思われます。これは、今週、米国ではFOMC、日本では日銀金融政策決定会合が開催され、その結果待ちの空気が生じると見込まれるためです。

米FOMCの見通し

FOMCは、6/14(火)~6/15(水)に開催されます。ここでは、金融政策の変更はないでしょう。というのは、次のような理由によります。

(1)6/3(金)に発表された5月分の雇用統計は、先週の当メールマガジンで解説したように、決して内容が悪いわけではないが、表面上の雇用者数の数値が弱かった。その直後に利上げとなると、市場に対し、雇用者数の数値が弱いが利上げする必要があるという点をうまく説得できなければ、市場に波乱が引き起こされる恐れが強い。

(2)6/23(木)の英国の国民投票の結果によっては、米国を含めた世界市場が大きく荒れる恐れがあるため、その直前に利上げを行なうのは、波乱に波乱を重ねるリスクが高い。

市場も、ほとんどの参加者が、今月は利上げはない、と予想していると推察されます。その点では、結果を様子見する必要はない(結果はわかりきっている)はずですが、FOMC後の記者会見で、イエレン議長がどういった発言を行なうのか、それを聞いて先行きの金融政策のヒントを得てから売買行動を考えればよい、として、FOMC前にポジションをあえて傾けようという投資家は少ないでしょう。

日銀金融政策決定会合の見通し

日銀の金融政策決定会合は、6/15(水)~6/16(木)に開催されます。ここでも、金融政策の変更はないものと予想します。その理由は、下記の通りです。

(1)日本についても、英国の国民投票前に、あえて波乱要因を作り出すことは避けると見込まれる。あるいは、英国でEU離脱派が勝利した場合、理不尽な「リスク回避のための円高」により、対英ポンドだけではなく対米ドルでも円高が生じる恐れがあるため、それに対する対応策は、後にとっておこう、という考えがありうる。

(2)前回4月(4/27(水)~4/28(木))の決定会合で、何も追加緩和策を打ち出さなかった。当時と比べ、特に国内景気が著しく悪くなったわけではなく、国内株価や円相場の居所もあまり変わらない。そうした環境変化の乏しさに反して、緩和を急ぐような状況にはない。

(3)安倍首相が6/1(水)に消費増税の再延期を表明し、自民党が参院選の公約で秋口の経済対策を打ち出している。そうした財政政策・成長戦略の動きがあるため、とりあえずは金融政策は出番待ち、と考えられる。

以上を踏まえると、今週の内外市場の動向については、FOMCや日銀会合の前は、それを口実に様子見し、そうしたイベントが終われば、予想通りだったから買い材料でも売り材料でもないとして、特に動かない、という投資家の動きが大勢だと見込まれます。

また、来週の英国での国民投票を前に、あえて売りや買いを積み上げよう、という投資家も少ないものと予想され、今週の世界市場は、動意が乏しい展開が続くと懸念されます。

Next: 近づく英国国民投票に市場はどう反応するか?



近づく英国国民投票に市場はどう反応するか?

英国における、EU離脱の可否を問う国民投票は、6/23(木)に実施されます。

これまでは、世論調査によって、EU残留派と離脱派のどちらが優勢かが異なっており、結果は微妙な情勢です。ただ、6/10(金)に公表されたインディペンデント紙の世論調査では、離脱派が優勢でした。

結果を受けて、市場がどう反応するか、という点ですが、もちろんEU残留という結論になった場合は、市場は好感するでしょう。

逆に、EU離脱という結果になった場合は、もちろん英ポンドやユーロ等の欧州通貨、欧州株価などについては、相当の波乱が生じるでしょう。それが米ドル相場や日米等主要国の株価にもぶれを引き起こすと懸念されます。

ただし、短期的な振れは別として、世界市場が長期的で大きな混乱に巻き込まれるとは見込んでいません。その理由をいくつか挙げると、次のようになります。

(1)今年2月頃の、離脱論の台頭時に、市場は離脱の可能性を相当に織り込んでしまっている。たとえば英ポンド相場は、2月下旬に、対米ドルでは1ポンド1.39米ドルを割れたところで、底値を付けた様相だ。国民投票で離脱が決定し、再度1.40米ドル水準を割り込んだとしても、大きく下回り続ける可能性は薄いと見込む。

(2)国民投票で離脱が決定しても、すぐに離脱するわけではない。おそらく2年程度と言われる準備期間を経て、他欧州諸国との様々な取り決めを定め、その後離脱となる。

(3)英国の離脱論の背景は、移民に対する拒否感情と、英国は金融業が基幹産業であるため、欧州大陸諸国の比較的厳しい金融業規制と歩を合わせたくない、という2点が主なものだ。したがって、英国としては、欧州大陸諸国との経済・金融面での結び付きは極力維持し、経済的なデメリットが出ないよう、準備期間における条件交渉を行なっていくだろう。

もちろん、そうした離脱後の欧州大陸諸国との交渉が、英国の好き放題にできるか、という点や、スコットランドはEU残留を希望しているため、スコットランドの英国からの離脱論が再燃する、という不安要因はあります。

しかし、英国のEU離脱が経済的な悲劇ではない、という点が知れ渡るにつれて、市場の不安も沈静化していくものと予想します。

Next: FOMC後のイエレン議長記者会見に関する“迷信”



FOMC後のイエレン議長記者会見に関する“迷信”

FOMC後に連銀議長が記者会見を行うことがありますが、いつもそうだというわけではありません。2012~2016年(2016年は予定も含む)は、3月、6月、9月、12月の会合では記者会見があり、その他の会合では記者会見はありません。

そこで、直近については、今週の6月の会合(6/14(火)~6/15(水))では、2日目の6/15(水)にイエレン議長が記者会見を行ないますが、7月の会合(7/26(火)~7/27(水))では、記者会見は予定されていません。

それは別によいのですが、専門家の中で、「7月は記者会見がないから、利上げは行なわれない、6月でなければ、次は9月だ(8月は、FOMC自体が予定されていません)」と、知ったようなふりをして語る向きが多いです。

記者会見がないと金融政策を変更してはいけない、という決まりは、全くありません

もともと、FOMCの年間スケジュールは、早めに1年を通じて決めてしまいます(現時点ですと、2017年1/31(火)~2/1(水)までが決まっています)。その時点で、いつ利上げをしていつしないかが、連銀にすべて見通せているはずはありません。

7月に利上げをして、もし議長による説明が必要だと判断されれば、その時点で急きょ記者会見を設定すればよいだけです。

緊急事態の場合は、臨時のFOMC(電話会議のこともありました)で金融政策の変更が行なわれたことも過去にあります(あくまでも緊急の場合であって、現局面には当てはまりませんが)。


本記事は『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』(2016年6月12日号)の一部抜粋です。メルマガではこの他にも、先週の振り返り、主要国の株価指数騰落率、外貨相場(対円)の騰落率などを詳しく分析しています。記事全文は手続き後にすぐ読めますので、興味のある方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』(2016年6月12日号)より
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