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米雇用統計通過も103円台からは上値重い 利上げ見通し依然不透明=ゆきママ

今週はレンジを想定しています。7月米雇用統計については、賃金インフレの迫力には欠けているという些細な注文はついたが、問題があるかといえば決してそうではなく、ポジティブに考えても良い結果であることは間違いないでしょう。

しかしながら、相変わらずドル円の動きは重く、その理由はまだまだ年内の利上げを確信させるには至らないということが大きいでしょう。今週も確信させるほどの材料が出てきそうにないため、ドルの上値は重そうです。(『お値段以上!?ゆきママの「週刊為替予測レポート」(有料板)』)

※本記事は有料メルマガ『お値段以上!?ゆきママの「週刊為替予測レポート」(有料板)』2016年8月7日号の抜粋です。毎週いち早くゆきママさんの解説をご覧いただくには、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

テクニカル的に1ドル105円前半を上回ることはほぼ想定できず

1.先週のドル円相場総まとめ(1ドル=100.67~102.83円)

先週(8月1~5日)のドル円相場は、1ドル=100.67~102.83円(予測1ドル=99.50~104.50円)でした。雇用統計もあったのでもう少し動くと考えていましたが、経済対策の材料出尽くしや日銀の追加緩和後退観測もあり、上値の重さが顕著でした。

ちなみに、イングランド銀行(BOE)金融政策委員会では、大規模な追加緩和が決定されました。予想されていた利下げに加え、資産購入枠の大幅拡大や社債購入も行うとのことで、前回のメルマガで書いたようにポンド安がドル円では円高に作用する結果となっています。

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(1日)
東京市場は、1ドル=102.10~102.60円台で序盤から堅調な値動きとなった。前週末に発表されたアメリカのGDPは衝撃的な弱さだったものの、企業在庫の減少が主因で個人消費は非常に底堅かったことから見直しが入ったことや、日経平均の上昇が後押しとなって高値を付ける場面もあった。

海外市場は、1ドル=102.10~102.50円台でやや弱めの推移。欧州市場では、欧州株安に加え原油が3か月ぶりの水準に低下したこともあって、上値の重い展開が続いた。

NY市場では、翌日の豪準備銀行による金融政策発表を控えて豪ドルが売られてドルが買われた流れでドル円も高値をつけたが、注目された7月米ISM製造業景況指数が予想を下回ったこともあって上値が重くなり、反落する場面もあった。

(2日)
東京市場は、1ドル=102.00~102.80円台で急騰する場面もあった。序盤に麻生大臣から相場を注視するといった円高けん制気味な発言によって急上昇して高値をつけたが、その後は日本国債が売られ長期金利が上昇し、日銀の異次元緩和に疑義が生じているといった報道が相次いだこともあって急落。日経平均の弱い動きも影響した。

海外市場は、1ドル=100.60~102.40円台で2円近い下落幅を記録した。欧州市場では、一旦買い戻されて高値をつけたが、麻生大臣が50年債を否定したことで結局は反落。本邦政府が28兆円規模の経済対策を正式に閣議決定したことによる材料出尽くし感もあった模様。

NY市場では、原油安からの株安、ドル安とトリプル安商状となっており、サポートのない真空地帯でドルは一段と下を目指す流れだった。7月米PCEコアデフレータなどが弱く、アメリカにおけるインフレ圧力の弱さも意識された。

(3日)
東京市場は、1ドル=100.70~101.30円台のレンジ内で忙しい上下。序盤は自律反発的な動きで高値をつけたが、その後は日経平均株価の軟調さもあって急落して安値。ただ、一定の底堅さもあってやや買い戻されて取引を終えた。

海外市場は、1ドル=100.90~101.50円台で概ね101.00円近辺でのモミ合い。欧州市場では、翌日に予定されている英中銀からの発表を控えて、ポンドを中心にポジション調整の動きが続いたが、ドル円は同意に乏しかった。

NY市場では、7月米ADP雇用報告の好結果や7月米ISM非製造業指数の好結果、さらには米週間原油在庫の減少を受けての原油高もあってドル高に振れる場面もあったが、一瞬に終わって101.00円付近での値動きに終始した。

(4日)
東京市場は、1ドル=100.80~101.60円台で序盤の急落後は堅調な値動きとなった。午前に岩田日銀副総裁が緩和政策の検証に際して、特定の方向を考えていないといった発言をしたことで、緩和後退といった見方が強まり円が買われた。しかし、午後に入ると一転して、金融の引き締めは考えられないと緩和に前向きな姿勢を示したことで円が売られた。10年債の入札が堅調だったことも円売り材料となった。

海外市場は、1ドル=101.00~101.50円台で軟調気味に推移した。欧州市場では、英中銀が予想を上回る包括的な緩和策を決定したことで、ポンド安からドル円ではドル安(円高)の動きが強まった。

NY市場では、翌日の7月米雇用統計を控えて様子見モードのモミ合いが続いた。

(5日)
東京市場は、1ドル=101.00~101.30円台での小動きが続いた。日経平均などにも反応薄で、基本的には雇用統計待ち。ほとんど値動きのない時間帯が長く続いた。

海外市場は、1ドル=100.80~102.00円台で上値を伸ばした。欧州市場では、ジワリと下落したが、基本的には様子見ムードが強かった。

NY市場では、注目の7月米雇用統計が発表された。結果は雇用者数、賃金上昇率ともに事前予想値を上回ったが、上値は重く伸び切れず、102円にタッチしたがその後やや反落して取引を終えた。利上げスケジュールの変更までには至らなかったことや、2か月連続で20万人を超える雇用者増がかえって労働市場のスラック(緩み)を意識させたことも影響した模様。

Next: 2.今週のドル円相場の展望(1ドル=100.00~103.00円)



2.今週のドル円相場の展望(1ドル=100.00~103.00円)

7月米雇用統計については、賃金インフレの迫力には欠けているという些細な注文はついたが、問題があるかといえば決してそうではなく、ポジティブに考えても良い結果であることは間違いないでしょう。

しかしながら、相変わらずドル円の動きは重く、その理由はまだまだ年内の利上げを確信させるには至らないということが大きいでしょう。今週も確信させるほどの材料が出てきそうにないため、ドルの上値は重そうです。

一方、円に関しては日銀の追加緩和期待の後退が強まっていることが気がかりです。ヘリマネ、永久国債が否定されていることや、日銀が金融緩和策の検証を行うといった発表から、緩和の限界説が取り沙汰されており、今週も関連報道によって円高になる場面もありそうですので、警戒しておきましょう。

(ファンダメンタルズ)
雇用統計週を抜けて、基本的には材料の少ない1週間となります。強いて挙げれば週末の7月米小売売上高がありますので、予定されているものとしてはこれを注目したいところでしょう。

小売売上高は小売業、飲食店の売上が中心となっている指標ですが、勘のいい方はこの時点でお気づきでしょう。そう、日本でもコンビニや飲食店の売上が大幅に伸びたといったデータがありますが、ポケモンGOの影響を大いに受けている可能性が指摘されています。

小売売上高は雇用統計ほどではないにせよ、比較的事前予想の難しい部類に入りますから、好結果になることある程度は想定しつつ見ておきたいところでしょう。

(テクニカル)
テクニカル的には抵抗線が怖いぐらいに重なっており、見ているのが嫌になりそうですね。

110.11円(ボリンジャーバンド3σ上限)
108.10円(ボリンジャーバンド2σ上限)
105.34円(日足の一目均衡表・雲上限)
104.73円(日足の一目均衡表・転換線)
104.08円(21日移動平均線)
103.95円(日足の一目均衡表・雲下限)
103.73円(日足の一目均衡表・基準線)
100.68円(先週の最安値)
100.07円(ボリンジャーバンド2σ下限)
100.00円(心理的節目)
98.79円(年初来安値・6月24日)

まず、上値抵抗(レジスタンス)については、104円ラインの攻略がかなり厳しそうです。仮にここを抜けたとしても、再三雲の下に押し込められていますから、どんなことがあっても105円前半を上回ることをほぼ想定できない状況です。

目先では、とりあえず日足ベースで101円台後半から102円前半に抵抗が存在しますから、あっさり回復して8月高値となる102.83円を抜け、一段上の103円ラインに到達できるかどうかが今週の値動きを決めそうです。

米ドル/円 日足(SBI証券提供)

一方、下値支持(サポート)は、日足ベースの100円台の中ばの抵抗が守られていることから、まずはここが防衛ラインとなりそうです。ここを抜ければいよいよ100円割れを試すことになりそうですが、100円割れ水準では実需筋からもそれなりに買いが入りそうなので、積極的に突っ込んでいくことは避けたほうが無難かもしれません。

とりあえず、テクニカル的には強気になれる要素はありませんので、基本的には下値に警戒しながらということになるでしょうが、年初来安値を割り込むなど極端な値動きにならない限りは追いかけすぎずにいきたいところでしょう。

Next: 3.原油相場の展望(今週以降のポイントとして)



3.原油相場の展望(今週以降のポイントとして)

今週は目立ったイベントがないため、ホットイベント解説はお休みして原油相場の展望について考えていきたいと思います。

実は、日本経済新聞でも「夏バテ40ドル原油のカラクリ」というタイトルの記事が人気となっていました。先週1バレル=40ドルの節目を割り込みましたから、注目度は非常に高いのでしょう。
夏バテ40ドル原油のカラクリ – 日本経済新聞

この記事ではアメリカのシェールオイルの生産コストの低下を指摘しています。確かにその通りではあるものの、それはまさに一昨年2014年末からの流れなので、特筆すべきではないと思うのですが…。

まぁ技術というのは価格競争によって急速に洗練されていきますからね。例えるなら、高い原油価格にあぐらをかいて贅肉だらけだった体が、どんどん無駄が削ぎ落とされてマッチョに変わっていくといったところでしょうか。

ちなみに、原油安になると何が問題かというと、経済の停滞が意識されやすくリスクオフ的な動きが出やすくなるということです。つまり、円高になりやすいということで、今週以降も原油の値動きについては注目しておく必要がありそうです。

そして、現在の値動きを受けて国内の多くのエコノミストは今後の原油安を支持しているように見受けられますが、海外では原油がさらに下方向へ動くことは、あまり想定されていないということを覚えておきたいところでしょう。

この理由としては、兎にも角にも原油相場というのは景気の良し悪しではなく、単純な需給バランスでとしていることから、今後アメリカのシェールオイルの生産は長期にわたって停滞することを想定すれば、需給が改善すると見ているようです。

では、なぜシェールオイルの生産が停滞すると考えているのでしょうか?そこには、リグカウントが急低下し過ぎているということを挙げています。リグカウントとは、いわゆるドリルの数のような指標で採掘機による掘削数を表しています。産油能力の先行指標として活用されてきました。

リグカウントは、2009年ごろから急増して2014年10月には1600を超えました。わずか5年足らずで10倍近くに急増したものの、原油安によってそこから急激に転げ落ち、今ではこのピーク時の6分の1以下まで低下しています。

要は2年足らずで、ほぼ2009~2010年レベルにまで減っているのだから生産量が低く抑えられ、ある程度のタイムラグが伴うとはいえ、需給バランスは必ず良くなるとの見方。しかも、大幅な原油高が見込めない中ではリグカウントが一気に増える可能性が低いということも、原油を底堅いとする根拠になっているようです。

う~ん、一時はあまりにも原油の生産が過剰すぎて、貯蔵施設の不足から中古列車を買いあさって貯蔵庫にしているなんて話もあったほどですが、原油在庫統計も徐々に落ち着いているようですので、少なくともガリガリ掘り下げていくような相場は想定しなくても良いのかもしれません。

もちろん、以前のように大幅に上がっていくことも考えにくいですけどね。上限は1バレル=70ドルといった近辺といった見方が海外では一般的のようです。

4.ゆきママのトレード観

今週はレンジを想定しています。なので、短期(数分~数日)的なトレードであれば買いでも売りでもといったところでしょうか。中期(数カ月)だとやはり決め打ちが難しくなっている状況です。長期(年)であれば下がったら買いといった意識で見ています。

また、日々の相場観や具体的なトレードアイディアについては、ツイッター上で公開していますので、ぜひよろしくお願いします。

※ゆきママのツイッターアカウント


※本記事は有料メルマガ『お値段以上!?ゆきママの「週刊為替予測レポート」(有料板)』2016年8月7日号の抜粋です。毎週いち早くゆきママさんの解説をご覧いただくには、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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お値段以上!?ゆきママの「週刊為替予測レポート」』(2016年8月7日号)より抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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