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平均月給4万円。親日国家「モンゴル」への投資はどこまで有望?=荒川雄一

私は先日、モンゴル国に行ってきました。国名は知っていても、詳しい人はあまり多くない親日国です。国の概要から経済、街の様子までお伝えしましょう。(『海外ファンドで資産を作ろう!』荒川雄一)

プロフィール:荒川雄一(あらかわ ゆういち)
国際フィナンシャルコンサルタント、海外ファンドアドバイザー。金融機関に影響を受けない独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA)として、投資顧問会社IFA JAPANほか、リンクスグループ3社の代表を務める。投資教育にも力を入れており、国立高知大学講師、大前研一氏監修BBT大学院大学講師などを歴任、講演回数800回以上。その他、日本経済新聞社、各マネー誌、フジTVなど執筆、出演も多数。

横綱白鵬だけじゃない、親日国家モンゴルをもっと知ってみよう

モンゴルに行ってきました

先週、上空を弾道ミサイルが飛ぶ可能性がある中、韓国経由で「モンゴル国」に行ってきました。直行便もあるようですが、繋ぎが悪く、乗り換えに7時間待ちだったのにはまいりました…。ということで、今回はモンゴルにフォーカスしてみたいと思います。

モンゴルという国は知っていても、モンゴルについて詳しい人はそう多くないかと思います。なので、まずは国の概要などからお伝えします。

(1)国の概要~日本の約4倍の広さに人口312万人

モンゴルの面積は156万4,100平方キロメートルで、日本の約4倍の広さがあります。そして、この広大な土地の中に、311万9,935人(2016年現在)の人たちが生活しています。

首都はウランバートル(人口139万6,288人)で、人口の約95%がモンゴル人。その他カザフ人をはじめとする少数民族が暮らしています。

宗教はチベット仏教がメインで、それ以外にシャーマニズムがいまだに信仰されています。

モンゴルと聞いて日本人が1番初めに思い出すのは、「チンギス・カン」の名前ではないでしょうか。「白鵬」と言う人もいるかもしれませんが(苦笑)、チンギス・カンが1206年に創設したモンゴル帝国は、歴史の教科書で読まれた方も多いのではないかと思います。ただ、その後のモンゴルの政治体制については、あまり詳しい方は少ないと思います(私自身、よく理解していませんでした)。

モンゴル帝国崩壊後、モンゴルは、長らく中国の支配下にありました。その後、ロシアの援助などを受けて、1924年にモンゴル人民共和国として社会主義国家が成立します。

その後、ロシアの影響を長い間受けてきましたが、1989年末に、ソ連や東欧の情勢変化によってモンゴルでも民主化運動が起きました。翌1990年、当時の首相の決断によって一党独裁の社会主義を放棄。1992年には、モンゴル人民共和国からモンゴル国へ改称し、民主国家を樹立しました。

ただ、民主化を進めるプロセスの中で急速に市場経済化を進めたため、「貧富の差」が拡大する結果となってしまいました。

また、民主主義国家になってまだ27年しか経っておらず、生まれた世代(年代)によって“ジェネレーションギャップ”が大きいのも、モンゴルの特徴の1つと言えそうです。

(2)経済面~平均的なサラリーは月4万円程度

モンゴルの主要産業は、鉱業牧畜業軽工業といったものです。2016年の名目GDPは、11,160百万米ドル(約1兆2276億円)人口1人当たりのGDPは、3,856.8米ドル(約42万円)といったところです。

確かに案内してくれたガイドによれば、首都のウランバートルでの平均的なビジネスマンのサラリーは4万円程度と言っていました。

民主化以降、日本を始めとする各国や国際機関の支援により、1994年には経済成長率が初めてプラスに転じました。しかし、2008年のサブプライム問題などを発端とする世界的な金融・経済危機の影響を受けて、2009年には-1.3%の成長にまで落ち込みました。

ただ、2010年に入ってからは鉱物資源の国際相場の回復などもあり、2010年は6.4%、2011年17.3%、2012年12.4%、2013年11.7%と高い経済成長を続けてきました。

近年はモンゴルへの外国からの投資が激減し、さらに中国の景気減速や世界的な資源安の影響もあって、2015年の経済成長率は2.3%、そして2016年は1%にまで落ち込んでいます。

そんな中、モンゴル政府は今年に入って、国際通貨基金(IMF)との間で「拡大信用供与措置(EFF)の受け入れに合意しました。現在はEFFに基づき、経済・財政の立て直しに取り組んでいるのが現状です。

Next: モンゴル国民の7割が「日本に親しみ」でも投資対象としては厳しい?



(3)対日関係~国民の7割「日本に親しみを感じる」

日本との外交関係は、1972年に樹立されました。

当初はノモンハン事件などにより反日感情もありましたが、現在は日本におけるモンゴル人力士の活躍などもあり、国民感情としても日本とは友好的関係が維持されているようです。

2004年11月に、在モンゴル国日本国大使館が実施した世論調査によれば、「日本に親しみを感じる」と答えた回答が7割を超えたほか、「最も親しくすべき国」として第1位になるなど、現在のモンゴル国とは極めて良好な関係です。

確かに、街中で走っている車の半分以上が、トヨタのプリウスでした。以前は韓国車が多かったようですが、故障が少なく、ガソリンを節約できる日本車に人気が集まっているようです。

対日貿易をみると、2016年の貿易額は約323.61億円で、モンゴルからの輸入は約19.01億円に対し、日本からモンゴルへの輸出は約304.60億円となっています。

主要品目は、輸入では鉱物資源(石炭、蛍石)や繊維製品など、輸出では自動車、一般機械、建設・鉱山用機械などとなっています。

また、日本からの直接投資は累計206.93百万ドル(2013年9月現在)、円借款は1,259.44億円、無償資金協力1,163.70億円、技術協力497.28億円(いずれも2015年度まで)などとなっています。

日本企業の支店開設数は“0”(平成28年時点)ですが、駐在出張所が37社となっています。また、外務省の統計によれば、現地法人化した企業等数は326社で、在留邦人は539名とのことです。

(4)モンゴル投資~対象にするのは難しい

私たちが日ごろリサーチしているファンドの中にも、モンゴル国単体に投資しているファンドはほとんどありません

日本国内でも販売されているハーベストの「アジアフロンティア株式ファンド」の運用方針には、「主として、バングラデシュ・モンゴル・カザフスタン・スリランカ・ベトナム等の企業及び当該各国で主な事業展開をする企業の上場株式等に投資するアクティブファンドです」と書かれていますが、直近の運用報告書をみると、国別投資先としてモンゴルへの配分は記載されていません

また、モンゴル投資では、2012年にモンゴルでの重機リース事業への投資を巡る詐欺事件が起こっています。投資会社「グローバルアイズ」が9つのファンドで計約97億円の資金を集め、計6人が逮捕されています。

また、こういった新興国では必ず出てくるのが、不動産投資です。「首都ウランバートルにおける大規模再開発へ投資する」といったもののようです。

ただ、新興国の不動産投資はかなりリスクが高い投資ですので、一般的なアセットアロケーションを考えた投資においては、あまりおすすめとは言えません

モンゴルの市場規模や経済成長率などを考えると、投資先として単体国を対象にするのは難しいといったところが本音です。

Next: 日本人にとって居心地の悪くない国、ただインフラ面では課題も



(5)雑感~野菜と肉が大変豊富でおいしい

さて、上述したように民主化してまだ日が浅いモンゴルではありますが、同じモンゴリアンということもあってか、訪蒙した日本人としては「居心地は悪くない場所」といったところが最初のイメージです。

ロシアと中国に挟まれ、そのバランスを取りながら生き抜いてきた歴史があるため、観光客も1位がロシア、2位が中国、3位が韓国、そして4位が日本とのことでした。

ただ、中国には長年支配されてきた歴史もあるため、一部には反中感情も残っているようです。その影響もあってか、かつてはウランバートルにはたくさんの漢字やハングル文字の看板があったようですが、今はほとんどがロシアで使われている“キリル文字”になっています。風景は違いますが、街の看板だけ見ていると、昔訪れたウラジオストックを思い出しました。

また、標高が高いため、日本では真夏の8月ですが、最低気温3度、最高気温17度と肌寒い天候です。観光シーズンは、6月から8月の3カ月がメインとのこと。このシーズンに、日本の猛暑から逃れてモンゴルに行くのはよいかもしれません。

インフラ事情が悪いため、ホテルで断水になることもありましたが、湿度が低いため、現地の人は週1~2回しかお風呂(シャワー)を浴びないようです。

また、食事についてはあまり期待していませんでしたが、野菜と肉が大変豊富で美味しいのには驚きました。海に面していないため魚はほとんど食べることはできませんが、その分、自然の牧草、薬草を食べている、そして馬の肉は本当に美味しかったです。

放牧されて運動をしているので脂が少なく、霜降りの牛肉が好きな方は日本で食したほうがよいかもしれませんが、羊と馬の肉がこんなに美味しいとは思いませんでした。

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ステーキやしゃぶしゃぶなど様々な食べ方がありますが、まったく臭みがなく、言われなければ羊や馬の肉とはわからないほどです。やはり、動物はエサとして食べているものによって、味がまったく変わるようです。

ちなみに、モンゴルにはジンギスカン鍋はないそうです。「モンゴルの騎馬兵が兜の上で肉を焼いたのが由来」といった話を昔に聞いたことがありましたが、モンゴルでは盾を鍋代わりに使うことはあっても、兜を使うことはないとのこと。ジンギスカン鍋は、どうやら日本の創作料理のようです(笑)。

ご興味がある方は、ぜひ“直行便”で行かれてはどうかと思います。

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海外ファンドで資産を作ろう!』(2017年9月1日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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