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バフェットの遺言。億万長者を生む「インデックス投資」の秘密とは?=東条雅彦

ウォーレン・バフェット氏が、自分の死後に備えて、妻に「資金の90%をS&P500に投資せよ」という言葉を残していることをご存じですか?バフェットは、プロではない人々に「インデックス投資」を薦めています。これは誰でも安全に億万長者になれる、最も合理的な投資手法と言えるでしょう。(『ウォーレン・バフェットに学ぶ!1分でわかる株式投資~雪ダルマ式に資産が増える52の教え~』東条雅彦)

バフェット推薦!安全に億万長者になれる投資法のポイントを解説

『バフェットからの手紙』の1ページ目に書かれていること

ウォーレン・バフェットが毎年、自身が会長兼CEOを務める世界最大の持株会社、バークシャー・ハサウェイの株主宛てに送っている書簡(通称『バフェットからの手紙』)を読んだことはありますか?バークシャーのWebサイトでは、1977年から現在までの『バフェットからの手紙』が公開されています。

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そして、2000年からの『バフェットからの手紙』では、必ず最初の1ページ目で、バークシャーとS&P500(配当込み)の投資成果を競い合わせています。これは、1965年から2015年までの両者の成績を比較したものです。

  1. バークシャー(BRK)の1株当たり純資産が年間何%変動したのか?
  2. バークシャー(BRK)の株価が年間何%変動したのか?
  3. S&P500(配当込み)の株価が年間何%変動したのか?
  4. 1965年から2015年までの51年間の平均年利
  5. 今までの合計リターン

バークシャー vs. S&P500 投資成果の比較(配当込み)
出典:Berkshire’s Performance vs. the S&P 500 (2015) [PDF]
※注記赤字は筆者による


※『バフェットからの手紙』に記載されているリターンは名目リターンです。そのため本稿でも名目リターンを元に話を進めます。インフレ率を考慮した実質リターンについては次回以降のメルマガにて解説します。

投資資金が約15,983倍に!

バークシャーの1株当たり純資産と株価が、S&P500(配当込み)に対してどのような動きをしているのかを、わかりやすく提示していますね。

バフェットの生涯運用成績は年利20.8%です。これを51年続けると、1,598,284%の資産上昇をもたらします。1965年にバークシャー株に投資していた株主は、投資資金を51年間で約15,983倍に増やしているわけです。

100万円を投資していたら、約160億円に増えている計算です。いかにバフェットの年利20.8%という成績が凄いのかを物語っています。

バークシャーの純資産も年利19.2%のペースで増えていて、過去51年間で798,981%のリターンを得ています。

(2)の株価だけではなく(1)の純資産(株主資本)を記載している理由は、これが株価の裏付けとなっているからです。この純資産の伸び率を記すことで、バフェットは、株価は企業の利益や資産からその価値を求めることができると、暗に伝えようとしているのでしょう。

さて、いっぽうで50年前にS&P500(配当込み)に投資していた場合でも、年利9.7%のペースで資産が増加します。過去51年間では11,355%のリターンを得られます。

1965年にS&P500に投資していた場合、2015年の終わりには資産が約114倍に増えます。100万円を投資していた場合、約1億1400万円に増えている計算です。バークシャーの成績と比べると、かなり見劣りはしますが、それでもかなり高い成績です。
※前回のメルマガでも触れたように、近年ではバークシャーの成績が大幅に落ちており、S&P500と良い勝負を繰り広げています。2001~2015年の期間ではバークシャー:年利7%/S&P500:年利5%です。

なぜバフェットはS&P500と競争しているのか?

ここで、S&P500指数インデックスファンド誕生の経緯を簡単に説明します。

S&P500とは、米国投資情報会社「スタンダード・アンド・プアーズ社(S&P)」が算出している米国の代表的な株価指数です。ニューヨーク証券取引所、アメリカン証券取引所、NASDAQに上場している銘柄のうち、代表的な500銘柄の株価をもとに算出されます。

バンガード・グループの創設者であるジョン・C・ボーグル氏は1975年に、このS&P500と同じ成績を出す世界初のファンドを立ち上げました。「バンガード500インデックス・ファンド」というファンドで、今でも継続しています。

それまでのファンドは投資家から資金を集めて、ファンドマネージャーが選定した銘柄に投資していくスタイルでした。

いっぽう、「バンガード500インデックス・ファンド」は、S&P500を構成する500銘柄と同じ構成比で投資を行ない、ベンチマークである同指数に連動した投資成果を目指すものです。

やがて、このような市場平均に追従するファンドは「パッシブファンド」、そして市場平均以上のパフォーマンスを目指すファンドは「アクティブファンド」と呼ばれるようになりました。

それまでの常識では、「S&P500に追従するだけで良いリターンを出せるはずがない」という考えが大勢を占めていました。しかし統計を取ると、実際には次のような結果になっていたのです。

<米国でインデックスファンドを下回ったアクティブファンドの比率(~2005年)>

1年間:48%
3年間:68%
5年間:68%
10年間:79%
20年間:82%

なんと、年数が経過すればするほど、アクティブファンドはインデックスファンドに負けてしまうという現実が明らかになったのです。

ボーグル氏の『インデックス・ファンドの時代』(2000年出版)は、これでもかというぐらいに過去の統計データを使用して、インデックスファンドの優位性を説いた本です。

『北斗の拳』の「お前はもう死んでいる」ならぬ、「お前(アクティブファンド)はもう負けている」状態を、広範なデータを使って証明しています。

手数料の多いアクティブファンドは、まず「負けている」ところからスタートするので、もともと不利な立場にあります。ボーグル氏によると、これは「信託報酬」「売買の際に生じる手数料と税金」の2つが主因だとしています。

この説明に感銘を受けたバフェットは、「よし、それならば、バークシャーとS&P500の成績を比較して提示することで、客観的にバークシャーのことを株主に評価してもらおう」と考えたのです。

Next: バフェットが妻に託した遺言「資金の90%をS&P500に投資せよ」の真意とは



バフェットが妻に託した遺言

2013年度の『バフェットからの手紙』で、バフェットは、S&P500に連動するインデックスファンドへの投資を薦めています。

以下に発言部分を引用します。

米国のビジネスは時代を超えて素晴らしい成果を上げてきたし、今後もそうでしょう。プロでない人々が目指すべきなのは、勝者を当てることではありません。自分だけではなく、助力者にもできません。代わりに幅広い領域にわたる企業を買えば、必ずうまくいきます。S&P500種株価指数に連動する低コストのインデックスファンド(指数連動型投信)を使えば目標を達成できます。

プロでない人はS&P500に投資するように呼びかけています。さらにバフェットは、自分の妻への相続のための信託で次のように述べています。

現金の10%を政府短期債で、残り90%はS&P500のインデックスファンドで運用するよう指示しました(超低コスト投信で知られるバンガード社の投信を勧めます)。こうした方針をとることにより、高額な手数料をとる運用者を抱えている他の投資家よりも、長期では優れた結果を残せると確信します。

まさに、インデックス投資を強力プッシュしていますね。

バフェットはインデックス投資について過去にも前向きな発言をしていましたが、ここまで明確に話したことはありませんでした。その意味でも、2013年度の「バフェットからの手紙」は異例で、示唆に富む内容だったと言えます。

株式投資にあと一歩を踏み出せない人の思考パターンと「利き手」の関係

バフェットは、プロではない普通の人に対して、資産の90%を株式に投入せよと薦めています。

<バフェット推奨の資産配分率>

政府短期債:10%
S&P500(株式):90%

このアドバイスを聞いて、「はい、わかりました。明日から銀行預金を辞めて、すぐさま資産の90%をS&P500に当てます」と実際に行動する人は、果たしてどのぐらいいるのでしょうか?

おそらく、100人中1人いれば良いほうではないでしょうか?

1965年から2015年までの51年間の計測では、S&P500(配当込み)への投資は平均年利9.7%のリターンをもたらします。

100万円を投資すれば、約1億1400万円、1000万円を投資すれば、約11億4000万円という大きな資産を築けます。

しかし、統計上のデータでは明らかでも、私たちは論理ではなく感情で行動します。

子どもの時、毎年もらうお年玉は勝手に銀行に預けられていた人が多いと思います(または私のようにいつの前にか「抹消されてしまった」人も多い!?)。また、親や学校の先生からは、お金は大切なものだから銀行に預金するのが正しい行動だ、と刷り込まれます。そうすると、思考に「くせ」ができてしまいます。

例えば、右利きの人が明日から「右手ではなく左手を中心に使ってください」と言われたとしましょう。

朝、起きて、洗面所の前に立って、左手で歯ブラシを持って歯を磨こうとするも、なかなかうまく磨けません。着替えをする時も、無意識のうちに右手の力に頼って、服を脱いだり着たりします。朝ごはんを食べる時も、左手で箸を持って茶碗にあるご飯を口まで運ぶのは、相当難しい作業になることが容易に想像できます。

元々、左利きの人は、左右を逆にして想像してみてくださいね。こんなことを実際にやっていたら、学校や会社に遅刻するし、スムーズに日常生活を送ることが困難になるはずです。

世間の多くの人は次のようなイメージになっています。

<株式投資に疑心暗鬼な人の資産配分>

右手(利き手):銀行預金(90%)
左手(非利き手):株式投資(10%)

人に利き手があるように、人の思考にもある種の「利き手」があります。急に利き手を変えるのは、難しいかもしれません。

2013年度の『バフェットの手紙』における普通の人へのアドバイスが、「資産の90%をS&P500に投入せよ!」という内容だったのは、実に衝撃をもって受け取られました。

<バフェットが推奨している資産配分>

右手(利き手)・・・・株式投資(90%)
左手(非利き手)・・・銀行預金(10%)

このバフェットの教えが正しいのなら(もちろん、正しいのですが)、自分の利き手を左右反対にする覚悟で、ゆっくりでもいいから、銀行預金から株式投資にシフトしていく必要があります。

Next: インデックス投資は「社会の発展」を信じる超高勝率の投資法だ



インデックス投資は「社会の発展」を信じる超高勝率の投資法だ

インデックス投資とは、「社会の発展」「人類の発展」を信じる投資法です。

私たちは、株式会社の作った製品やサービスを利用して生活しています。また、会社に行って働いて、給料を得て生活しています。

インデックス投資では、「資金を株式に投入して、その会社が倒産してゼロ円になったらどうするの?」といった不安を感じる必要はありません。なぜなら、S&P500を構成する500社がすべて同時に倒産するような状況では、そもそも私たちはまともに社会生活を送れないからです。

今、この文章を読むのに使っているパソコン、スマホ、タブレットPCは、株式会社が作った製品ですね。また、インターネットを利用するための回線を施設したのも株式会社ですし、各種サービスを提供しているのも株式会社です。

今、着ている服も、座っている椅子も、洗面用具も浴槽で使う洗面器も、寝るベッドも…すべて株式会社から提供されているものです。

それでも「株式投資は怖くて危険だ」と見なすのなら、いったい私たちの普段の生活は、「恐怖」に囲まれているのでしょうか?いやいや、そんなことはないはずです。

冒頭で取り上げた『バフェットからの手紙』に記されている、1965年から2015年までの51年間には、S&P500が暴落する年も確かにありました。

しかしながら、1年間で値上がりする確率と値下がりする確率は、明らかに非対称の関係にあります。

値上がりした年を「」、値下がりした年を「×」として、1965年から2015年までの51年間を左端から記号にして並べると、次のようになります。

<S&P500:値上がり=◯ 値下がり=×>

1965年~1974年:◯×◯◯×◯◯◯××
1975年~1984年:◯◯×◯◯◯×◯◯◯
1985年~1994年:◯◯◯◯◯×◯◯◯◯
1995年~2004年:◯◯◯◯◯×××◯◯
2005年~2015年:◯◯◯×◯◯◯◯◯◯◯
結果:51試合中40勝11敗

このように視覚的に見ると、S&P500の勝率がいかに高いのかが、はっきりとわかると思います。51試合中40勝11敗、勝率に直すと78.4%となり、概ね8割の確率で勝つ勝負なのです。

インデックス投資家が「無一文」になることはあり得ない

さらに、それでも「株価が大幅に下がって大損してしまったら、どうしよう」という不安を抱えている人のために、下落してしまった年(11年間分)だけをピックアップしてみます。

下落率が20%以上の年には、目印として先頭に「」印、連敗した年には後ろに「※連敗」印をつけています。

<S&P500:下落した年>

・1966年:-11.7%
・1969年:-8.4%
・1973年:-14.8% ※連敗
◎1974年:-26.4% ※連敗
・1977年:-7.4%
・1981年:-5%
・1990年:-3.1%
・2000年:-9.1% ※連敗
・2001年:-11.9% ※連敗
◎2002年:-22.1% ※連敗
◎2008年:-37.0%

人によっては「株式投資をすると、最悪は無一文になる」と思っている人もいるかもしれませんが、S&P500へのインデックス投資の場合、そういうことは絶対にあり得ません

過去51年間の中で、20%以上の値下がりが発生した年はわずかに3回です。それ以外の8回の下落は、大きく下げても15%以内の値下がりに収まっています。

仮に100万円を投資していた場合、年によっては70万円ぐらいに下がる可能性もありますが、ずっと落ち続けるわけではありません。

しかも、連敗する可能性もとても低いことがわかります。連敗したのは、過去51年間の中でわずか2回(1973~1974年、2000~2002年)だけでした。

Next: 誰でも安全に億万長者になれる、最も合理的な手法がインデックス投資



誰でも安全に億万長者になれる、最も合理的な投資手法

反対に勝った年を見ていきましょう。上昇率が20%以上の年には目印として先頭に「」印をつけています。

上昇率が20%以上の年(◎印)が、なんと17回もあります。前ページの「下落した年」と見比べてみると、視覚的にも「S&P500は上昇する確率がとても高い」ことは一目瞭然です。

<S&P500:上昇した年>

・1965年:+10.0%
◎1967年:+30.9%
・1968年:+11.0%
・1969年:+3.9%
・1971年:+14.6%
・1972年:+18.9%
◎1975年:+37.2%
◎1976年:+23.6%
・1978年:+6.4%
・1979年:+18.2%
◎1980年:+32.3%
◎1982年:+21.4%
◎1983年:+22.4%
・1984年:+6.1%
◎1985年:+31.6%
・1986年:+18.6%
・1987年:+5.1%
・1988年:+16.6%
◎1989年:+31.7%
◎1991年:+30.5%
・1992年:+7.6%
・1993年:+10.1%
・1994年:+1.3%
◎1995年:+37.6%
◎1996年:+23.0%
◎1997年:+33.4%
◎1998年:+28.6%
◎1999年:+21.0%
◎2003年:+28.7%
・2004年:+10.9%
・2005年:+4.9%
・2006年:+15.8%
・2007年:+5.5%
◎2009年:+26.5%
・2010年:+15.1%
・2011年:+2.1%
・2012年:+16.0%
◎2013年:+32.4%
・2014年:+13.7%
・2015年:+1.4%

ウォーレン・バフェットが妻に「資金の90%をS&P500に投資せよ!」という言葉を残している理由がよくわかります。

この約8割という圧倒的な高勝率が、社会の発展に賭けるインデックス投資の根本となります。インデックス投資は、誰でも安全に億万長者になれる、最も合理的な投資手法だと言えるのです。

次回のメルマガでは、S&P500の成績をさらに詳しく考察しながら、名目リターン実質リターンについて解説していきます。

本連載はあと2~3週を予定しています。もし好評でしたら延長もしますので、わかりにくいところや、もっと深く掘り下げてもらいたいところがありましたら、ご遠慮なくお便りをいただければと思います。

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ウォーレン・バフェットに学ぶ!1分でわかる株式投資~雪ダルマ式に資産が増える52の教え~』(2017年1月29日号)より抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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