Appleの決算におけるトレンドは、スマホ業界のトレンドそのもの。頭に入れておいて損はないでしょう。今回は注目すべき「6つのポイント」をご紹介します。(『決算が読めるようになるノート』シバタナオキ)
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SearchMan共同創業者。東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻 博士課程修了(工学博士)。元・楽天株式会社執行役員(当時最年少)、元・東京大学工学系研究科助教、元・スタンフォード大学客員研究員。
Appleのトレンドはスマホ業界のトレンド。注目すべき6つの動き
新しい機能の多くはAppleから
今回は2017年7月~9月期の決算を詳しく見ていきたいと思います。
Appleの決算におけるトレンドは、スマホ業界のトレンドそのものです。
マーケットシェアこそAndroidに大きく差をつけられていますが、未だに新しい機能の多くはAppleから最初に提供される場合が多くなっています。既存のスマホ/タブレット/PCといったデバイス以外にも、新しいデバイスの販売状況などがどのようになっているのかを詳しく頭に入れておくことは、不可欠と言っても過言ではないでしょう。
Business Insiderの詳細なデータを踏まえながら、詳しく見ていきたいと思います。
本稿では、読者の皆さんが覚えやすくなるように6つのポイントに絞ってみました。
ポイント#1:売上は2桁成長
まずは売上を見ていきたいと思います。
四半期当たりの売上は$52B(約5兆2,000億円)を超え、YoY+12%と2桁成長に戻りました。
営業利益は$13B(約1兆3,000億円)を超え、こちらもYoY+20%近い2桁成長になっています。
地域別の売上とその成長率を見てみると、北米ではYoY+14%、ヨーロッパでは+20%、中国では+12%と、3つの大きなビジョンで2桁成長になっています。
中国に関しては、決算発表の中で以下のようなコメントがありました。
機種変更やAndroidからスイッチするユーザーは、中国において前年同期比プラスで成長しているとのことです。
中国の次に大きな成長エンジンになりうる可能性があるのはインドですが、インドに関しては以下のようなコメントがありました。
まだまだ時間がかかる市場ではあるものの、ストアを増やしたり、販売チャンネルを増やしたり、アプリ開発者との関係を深めたりといった具合に、色々なことが前向きに進んでいるとのコメントです。
Next: 売上2桁成長の背景をプロダクト別にチェックする
ポイント#2:iPhone + iPad + Macが安定して成長
では売上の2桁成長の背景を、プロダクト別に見ていきましょう。
Appleのハードウェアは主に3つのセグメントで計算が開示されていますが、iPhoneがYoY+2%、iPad が+14%、Macが+25%と、これらすべてにおいて前年同期比プラスで成長しました。
決算のコメントの中で、iPhoneユーザーのロイヤリティレートが95%と非常に高いという点が強調されていました。やはりiPhoneユーザーは、iPhoneユーザーであることを誇りに思い、iPhoneというデバイスを愛している人が多いのだと、改めて感じさせられる数値です。
ポイント#3:Apple MusicがYoY +75%で成長
上の表の中で、サービスセグメントがYoY+34%の$8.5B(約8,500億円)という、非常に大きな数字になってきています。
Facebookの四半期の売上は約$10B(約1兆円)ですので、AppleのサービスセグメントだけでFacebook全体に匹敵するほどの売上規模があることになります。
なかでも決算の中では、Apple Musicの月額課金会員数がYoY+75%と、大きな伸びを見せたことに言及されていました。
ポイント#4:ウェアラブルデバイスもYoY +75%で成長
上の表の中ではその他のプロダクトというセグメントに含まれていますが、Appleのウェアラブルデバイスも、非常に大きな成長率を見せています。
Apple Watch、Beats、AirPodsなどのウェアラブルビジネスは、YoY+75%で成長しており、規模としてはFortune400企業並の規模になってきている、と言及されました。
今回の決算には含まれていませんが、新しく発表されたApple Watchでは、Apple Watch自体にLTEでの通信機能が付いており、これはゲームチェンジャーだとティム・クックCEOが述べています。
ポイント#5:AR対応アプリは1,000を超える
AppleのARに対するアプローチは、新しいハードウェアを発売するのではなく、既存のハードウェアの中でソフトウェアでARに対応していくというものです。
ティム・クックCEOによれば、ARに対応したアプリはすでに1,000を超えている、という発表がありました。
ポイント#6:R&Dへ積極投資
このような技術革新を可能にするのは、Appleが研究開発に大きな金額を投じているからに他なりません。
四半期当たり約$3B(約3,000億円)もの金額を研究開発に投じており、これはAppleの売上の約6%に該当する金額です。日本の電機メーカーと比べると、この6%という数字は相当大きな数字で、AppleがいかにR&Dに対する投資を積極的に行っているのかがよくご理解いただけると思います。
Next: 今後の注目:iPhone Xの次回決算へのインパクトに期待
今後の注目:iPhone Xの次回決算へのインパクトに期待
さて、今回の決算は、iPhone Xがまだ発売されていない期間の決算になりましたが、iPhone Xは今後の決算に対してどのようなインパクトを与えるのかを、簡単に考察したいと思います。
このグラフはiPhone、iPad、Macというアップルの3つの主要なプロダクトの、平均販売価格を時系列で表したものです。
グラフの赤い線がMacの平均販売価格で、時系列で見る限り$1,200~$1,300(約12~13万円)あたりを推移していることが分かります。
グラフの緑の線がiPadの平均販売価格で、発売当初は$600(約6万円)を超えていた平均販売価格が、直近では$467(約4.67万円)まで落ちてきていることが分かります。
グラフの青い線がiPhoneの平均販売価格になりますが、こちらは若干落ちてきていたものの、$600(約6万円)を超える水準で推移してきました。
iPhone Xは一番安いモデルでも$999(約9.99万円)と、これまでのiPhoneに比べて約50%値上げをしたモデルになっています。
iPhone Xの販売台数は公開されていませんが、市場調査などを見る限り、決して無視できない規模で注文が殺到しており、仮にiPhone全体の販売台数が同じだったとしても、この50%高い端末が多く売れることで、iPhoneの平均販売価格が上昇し、iPhoneセグメントの売上が大きく伸びることはほぼ間違いないと見ていいでしょう。
そういった意味で、AppleはiPhone Xという大きく値上げをした端末を販売することにしたわけです。マーケットでの好反応を見る限り、次の決算に向けて非常に明るい話題が多くなってきている気がします。
今後もApple、そしてiPhone Xの決算に与えるインパクトを、追いかけていきたいと思います。
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『決算が読めるようになるノート』 2017年11月21日号『「iPhone X」以前でも驚異的なAppleの決算で覚えておくべき6つのトレンド』より抜粋
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