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トランプ支持メディアに起きた不可解な弾圧。誰がフェイクニュースとみなすのか?=高島康司

最近、アメリカの代表的なネットメディアであるアレックス・ジョーンズのサイトが徹底した弾圧にあっている。その裏にある状況を解説したい。いま起こっているさまざまな出来事がつながっているのが見えてくる。(『未来を見る!ヤスの備忘録連動メルマガ』高島康司)

※本記事は、未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 2018年8月17日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

本当にただの陰謀論? 以前は主流メディアが言説を独占したが…

トランプ支持のネットメディアの排除と弾圧

8月7日、トランプ支持の中心的なネットメディアであるアレックス・ジョーンズの「インフォウォアズ・ドットコム」のYouTubeのチャンネルが突如削除された。

それのみならず、Facebookのアカウントのほか、AppleのiTunes、Googleのサービス、そして、Spotify、Pinterest、LinkedIn、Podcast add、MailChimp、YouPornなどアメリカの主要なSNSやビデオサイトが一斉にアカウントを削除した。

YouTubeやAppleは、「アレックス・ジョーンズのサイトはフェイクニュースを流して容認できないヘイトスピーチを煽っている。これを止めさせるためにアカウントの削除に踏み切った」といっている。

しかし、これだけ異なるメディアが、アレックス・ジョーンズ関連のサイトを同時に閉鎖することは通常では考えられない。やはりこれは、上からの指令によるコーディネートされた動きであったことは間違いない。

このようなメディア排除の動きはアレックス・ジョーンズにはとどまらない。「アンチウォー・ドットコム」を主催するスコット・ホートン、国務省の元職員で内部告発者のピーター・バン・ビューレン、一時は独立系の大統領候補であったロン・ポールの主催する「平和と反映のためのロン・ポール協会」のディレクター、ダン・マックアダムスなど、保守系の論客のツイッターのアカウントが一斉に削除された

アレックス・ジョーンズと同様に、これらの人々はトランプ支持の強力な論客としてよく知られている人物だ。

YouTubeやFacebookにまだアカウントを確保できている「SGTレポート」のような保守系メディアでも、視聴はPCに限定されてモバイルではアクセスできないという制限を課せられているメディアも多い。

さらに、トランプ支持を表明した多くのジャーナリストが、放送局や新聞などのメディアから一斉に解雇されている。

反トランプメディアには被害なし

他方、反トランプのリベラルから左派では、このようなアカウントの削除やサイトの閉鎖はまったく起こっていない

これは明らかにトランプ支持のメディアを標的にした弾圧である可能性は高い。

まだ誰がこのような指令を発したのかは明らかになっていないが、いまトランプ政権と激しく対立している民主党を中心とした主流派や、それにつらなるCIAではないかと予想されている。YouTube、Apple、Googleの背後にはこうした勢力がいるからだ。

要するに、「ディープステイツ」による弾圧である。今年の11月に行われる中間選挙で、トランプ陣営が勝利するのを阻止することが目的だと見られている。

アレックス・ジョーンズとは何者なのか?

このメルマガに読者であれば周知だろうが、アレックス・ジョーンズと彼が代表するメディアについて簡単に解説しておきたい。

ジョーンズはテキサス州、オースティン市のリスナー参加型ラジオ番組の司会者だった人物である。1990年代の終わりころ、地上波からネットメディアに移り、ネット放送局である「インフォウァズ・ドットコム」を立ち上げた。2001年911同時多発テロの2カ月ほど前、軍産複合体がオサマ・ビン・ラディンを利用して米国内でテロを画策していると予想して的中させたことで視聴者の信頼を確実なものにした。

現在アレックス・ジョーンズ・ショーは、全米で100を越えるFMとAMのラジオ局で放送され、またYouTubeのアレックス・ジョーンズチャンネルは優に5億アクセスを越えている。

アレックス・ジョーンズという個人からスタートしながらも、主流メディアに対抗できるほどの影響力を持つまでになった巨大なネットメディアだ。

Next: 誰がフェイクニュースとみなす? アレックス・ジョーンズの主張とは



アレックス・ジョーンズの主張

このようなアレックス・ジョーンズだが、主流メディアやリベラル派からは、陰謀論のフェイクニュースを流す「保守系極右メディア」として強く非難されている。

だが、アレックス・ジョーンズの主張は非常に一貫しており分かりやすい。簡単にまとめると次のようになる。

  1. 現代の世界は、「ニューワールドオーダー(新世界秩序)」と呼ばれる世界統一政府による支配の実現を目標にした「グローバリスト」によって支配されている。このエリート集団の中心にいるのはロスチャイルド家である。
  2. 「グローバリスト」は世界を戦争へと導き、既存の世界秩序の計画的な破壊を目標にしている。この破壊の後に、「ニューワールドオーダー」の世界を構築する。
  3. 「グローバリスト」の支配は米国内のさまざまな機関や組織に浸透しており、これらをアメリカを計画的な破壊へと導く手段として使っている。トランプを唯一の例外として、民主党であろうが共和党であろうが、アメリカの歴代の政権は「グローバリスト」に支配されている。そして、現実に起きる大きな出来事は、「ニューワールドオーダー」を実現するために、意図的に引き起こされたものだ。
  4. 「グローバリスト」の中心にいるのは、EUを実質的に支配しているロスチャイルド家である。彼らはロックフェラー家やソロス家を従えて、「ニューワールドオーダー」実現のアジェンダを実行している。
  5. NAFTA(北米自由貿易協定)やTPPなどの国際的な協定は合衆国を弱体化させるものであり、「グローバリスト」のアメリカ解体のアジェンダを実現するために作られたものだ。
  6. 米国民はこの現実に気づき、決起して「アメリカ第2革命」を引き起こさなければならない。そうして、「グローバリスト」の支配を打破して、米憲法が理想とする真の国民国家を実現しなければならない。

ジョーンズが放映しているすべての番組は、こうした観点から国内や世界情勢を分析している。そのため、あらゆる事件の背後に「グローバリスト」のアジェンダを読み取ることにポイントを置いている。

プラットフォームとしてのジョーンズとその方向性

このようなジョーンズの活動だが、相当にバイアスのかかった世界観なので、規模は大きくても孤立しているように見えるかもしれない。

ところが、実態はまったくそうではない。ジョーンズのサイトや放送は、茶会派のリバタリアン、キリスト教原理主義の福音派、そして極右で白人優越主義者のオルト・ライトなど、保守系右派の団体がイデオロギーの相違を越えて結集できるいわば共通のプラットフォームのような状態になっている。

それというのも、アレックス・ジョーンズの主張は、こうした集団が信じている共通の世界観を代表しているからだ。多かれ少なかれ、上にある6つの主張はこれらのどの集団も共有している。

そして、そうしたジョーンズのプラットフォームからは次の現実的な行動の方向性が出てくる。

1)トランプ大統領の熱狂的な支持
トランプこそ、「グローバリスト」の支配から国民を解放するための革命の闘士である。なにをおいてもトランプを支持して結集しなければならない。

2)アンチファ(反ファシズム)など民主党系左派との対決
いま反トランプ運動の中心にいるアンチファのような民主党系左派は、「グローバリスト」がアメリカを内乱で崩壊させるために作ったツールである。これとは戦わなければならない。

3)熱烈なロシア支持
世界的に「グローバリスト」の「ニューワールドオーダー」に反対し、抵抗している国がある。それはロシアだ。プーチンこそナショナリストの闘士である。我々はロシアと共闘し、「グローバリスト」のアジェンダを破壊しなければならない。

これらが、保守系右派のプラットフォームとしてのアレックス・ジョーンズの主張と行動の内容である。

Next: フェイクニュースではなく、事実の「語り口」が違うだけ?



フェイクニュースの終わり

これは主流メディアから見ると、陰謀論を基盤にしたフェイクニュース以外のなにものでもないとして批判される。

なぜならアレックス・ジョーンズのプラットフォームは、米国内や世界で起こるあらゆる事件や出来事に「グローバリスト」の隠れたアジェンダを読み取り、これを破壊するための革命的な行動を主張し、事実とは関係なくどんな状況にあっても、トランプとロシアへの熱烈な支持を訴えているからだ。

よくインターネット社会では、人は自分が見たいものだけを見て、信じたいものだけを信じるようになったと言われている。その点から見れば、ジョーンズのニュースメディアも、アレックス・ジョーンズという個人の世界観が多くの支持を集めてたまたま巨大化しただけで、そこにあるのはジョーンズの思い込みと幻想にしか過ぎず、それを裏付ける客観的事実は存在しないと思われてしまうかもしれない。

フェイクニュース以降の世界

しかし、ネットメディアが個人の幻想の拡大であると言い切れる時代は完全に終わってしまった。おそらくそれは2001年以前の状況である。

興味深いことに、ジョーンズの報道のソースは、独自の取材で得た情報や、内部関係者からの告発とともに、主流メディアでほとんど注目されなかった記事がとても多い。要するに、アレックス・ジョーンズも主流メディアも、共通した事実を根拠に報道しているのである。では、何が異なるのかというと、そうした事実を読み取る意味なのである。

たとえば、世界のどこかの地域で紛争が勃発すると、主流メディアはそれを各国の利害の衝突から起こったと報道するのに対し、ジョーンズのメディアでは、その裏に「グローバリスト」のアジェンダを読み込むということになる。

そのとき主流メディアは、現地の取材から得られたインタビューを根拠にするのに対し、ジョーンズは、紛争を背後から画策した集団に近い存在から証言を得て、「グローバリスト」のアジェンダを暴く。

このように見ると、フェイクニュースvs.真実のニュース、また幻想や思い込みvs.客観的事実という単純な対立ではまったくないことが分かる。

こうした対立を説明するために、英語ではよく「ナレティブ(narrative)」という言葉が使われる。これは日本語に訳すると「語り口」ということになるが、ちょっと意味が通りにくい。「ナレティブ」とは、イデオロギーや価値観を含んだ世界観全体のことを表現しているといったほうがよいだろう。日本語では「言説」という言葉がぴったりくる。

以前は主流メディアが「言説」を独占していたが…

時期の確定は難しいが、SNSが拡大する以前の2005年くらいまでは、世界で起こる出来事の「言説」は主流メディアの独占状態であった。そこには、保守系や革新系でちょっとした偏差はあるものの、事実や事件の読み取りでは共通の了解が存在していた。社会で容認される「言説」はいわばひとつであった。

出来事の裏には「ニューワールドオーダー」を構築する「グローバリスト」のアジェンダがあるなどという「言説」は、保守であろうが革新であろうが主流メディアからは完全に排除されてきた。

しかし、SNSが主導するインターネット2.0の世界では、状況が完全に逆転した。ネットではアレックス・ジョーンズのような巨大メディアが出現し、これまでの主流メディアによる「言説」の独占を突き崩した。これは、資本主義の競争原理がメディアの世界に導入されて、主流メディアが競争に敗れたといってもよい。

いずれにせよ、この結果、社会には複数の「言説」が併存し、競争する状況になっている。そこには、いわば常識としての共通了解は存在しない

Next: なぜアレックス・ジョーンズは弾圧されたのか?



アレックス・ジョーンズ弾圧の意味

さて、このような視点から、アレックス・ジョーンズがYouTubeやFacebook、またAppleをはじめとした大手からアカウントを削除された今回の出来事を見ると、その背後にある意味がはっきりと見えてくる。

今回、アレックス・ジョーンズのサイトが排除されたのは、主流メディアの「言説」を支配している勢力が、アレックス・ジョーンズに強い脅威を感じ、恐れたからであろう。

それだけジョーンズのプラットフォームから発信される陰謀論的な「言説」は強い説得力を持ち、主流メディアが独占してきた「言説」を本格的に破壊していると思われる。

では、主流メディアの勢力が特に脅威に感じているのは、ジョーンズの「言説」のどの部分なのだろうか。

それは、よく言われるように、11月に実施される中間選挙を前に、トランプの熱烈な支持を表明しているジョーンズのプラットフォームを排除し、トランプの勝利を阻止することに狙いがある。主流メディアは完全にクリントン支持のリベラルな勢力なので、これは事実だろう。

目的はほかにもある

しかし、おそらくそれだけではないだろう。反トランプのキャンペーンはすでに散々行われており、むしろいまの段階でアレックス・ジョーンズのプラットフォームを排除することは、逆効果になる可能性のほうが大きいからだ――

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未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ」(2018年8月17日号)より一部抜粋・再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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