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サーバー障害、ダウンロード待ちは皆無に。ブロックチェーンが導くWEB3.0の世界=高島康司

インターネット全般におけるブロックチェーンの適用状況を紹介したい。ストリーミングとダウンロードがさらに高速化した次世代の「WEB3.0」が垣間見える。(『ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン』高島康司)

※本記事は有料メルマガ『ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン』2018年9月18日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

インターネットは次のステージへ。人類が体感する3つの変化とは

次なる進化「WEB3.0」とは?

インターネット全般におけるブロックチェーンの適用状況を紹介したい。これは、次世代のインターネットの基盤となる「WEB3.0」へと成長する可能性が秘められている。今回はその概要を紹介する。

1992年に商用プロバイダーができてインターネットが民間に開放されてからというもの、インターネットは急速に発展してきた。1990年代から2000年代初めの1分間に1.5Mbpsを越えないモデムやISDNなどの機器を用いた電話回線による初期のインターネットから、10Mbps前後の高速ADSL回線を経て、いまでは1Gbpsから2Gbpsの転送速度を持つ光回線が主流になっている。近い将来、さらに高速化し、10Gbpsから25Gbpsの速度が当たり前になりつつある。

このような転送速度の高速化に対応するかのように、インターネットの機能やコンテンツも、文字ベースのホームページやオンディマンドの動画をダウンロードして見ることを中心とした「WEB1.0」から、フェースブックやツイッターなどのSNSや動画によるライブ中継など、インターネットにアクセスしているユーザー間のインターアクションを主体にした「WEB2.0」へと進化した。

この変化の過程でインターネットのデバイスも、デスクトップやノートなどのPCから、スマホを中心としたモバイルデバイスに移行した。

いまではインターネットは、あらゆる人々がスマホを介して主体的にインターアクションする巨大なネットワークとなった。

そして、進化の次の段階として注目されているのが、ブロックチェーンとインターネットの融合である。

この方向は、いま「WEB3.0」と呼ばれている。それは、一極集中管理のサーバーを持たない分散型ネットワークのインターネットである。もともとインターネットは、無数のコンピュータがルータを介してつながった分散型のネットワークだが、ブロックチェーンの適用で、インターネットが本来持つこの特徴が、さらに強化される方向に向かっている。

専用サーバーが不要に

インターネットとブロックチェーンの融合といっても、ちょっとイメージしにくいかもしれない。簡単に説明すると、それはこういうことである。

インターネットの本来のコンセプトは、無数のコンピュータがルータを介して結合した、中心的な管理主体を持たない分散型のネットワークである。

しかしこの分散性の概念は、インターネットというネットワーク全体に関してだけ言えることである。インターネットで得られるサービスのほとんどは、サービスに特化したネット上に存在する特定のサーバーによって提供されている。動画の配信、SNS、オンラインショッピング、インターネットバンキングなど、すべて専用サーバーのサービスだ。

ブロックチェーンとインターネットが融合すると、サービスの提供に特化した専用サーバーが不要となるシステムの構築が可能となる。具体的には、次の方面での発展がいま期待されている。

Next: ストリーミングとダウンロードがさらに高速化。次世代のWEBとは?



1. ストリーミングとダウンロードの高速化

いまだにあらゆる局面で、映像のリアルタイムのストリーミングや様々なコンテンツをダウンロードしなければならないことは多い。対戦型のオンラインゲームのストリーミングや、ソフトウェアのダウンロードなどはその典型だ。これらがサーバーの存在に依存している限り、回線速度が遅かったり、サーバーへのアクセスが混雑していたりすると、ストリーミングが中断し、コンテンツのダウンロードそのものができなくなってしまう。

これは特にイー・スポーツと呼ばれる対戦型のオンラインゲームでは大きな問題となる。イー・スポーツは世界大会も開催され、将来オリンピックの種目として採用される可能性も指摘されるほど盛んになっているが、その人気を支えているのはプレーのリアルタイムのストリーミングだ。しかしこれは、人気が出れば出るほどストリーミングのリクエストは殺到し、サーバーの許容範囲を越えてしまうことにもなりかねない。これがトーナメントなどで発生すると、悲惨なことになる。

こうした状況を回避するために、ブロックチェーンを活用して、無数のユーザの間でストリーミングを相互に可能にしたシステムが「プレー2リブ(Play2live)」だ。こうすることで、サーバーへリクエストの集中は回避されるので、これまでの問題は解決される。

さらに「プレー2リブ」では、広告収入からプレイヤーに利益をもたらす独自のエコシステムも作った。

<プレー2リブ(Play2live)>

公式サイト:https://play2live.io/ja/
紹介ビデオ:https://www.youtube.com/watch?v=pTaYx8JHeYM

また、ブロックチェーンによる分散型ダウンロードを実現したプロジェクトに「グラディウス(gladius)」がある。ここはサイバーセキュリティーのためのシステムを販売している会社だ。いま無意味なデータを大量に送信してシステムを停止させるDDoS攻撃が拡大しているが、「グラディウス」はユーザーの重要なコンテンツをブロックチェーンで分散的に管理して、攻撃をかわすシステムを開発した。コンテンツが必要なときには、ブロックチェーンから高速にダウンロードすることができる。

<グラディウス(gladius)>

公式サイト:https://gladius.io/
紹介ビデオ:https://www.youtube.com/watch?v=uSKkFeuZZog

しかし、サーバーに依存したサービスと比べると、分散型のブロックチェーンのシステムのスピードはかなり速度が遅いのが欠点になる。たとえば仮想通貨のビットコインでは、送金と受け取りに数日もかかってしまうケースも多い。もちろんこれには、ビットコイン独自の欠点が深く関係しているものの、ブロックチェーンそのものの構造に由来している要素もある。いまビットコインのイメージが強いので、ブロックチェーンのシステムは処理速度が遅いというイメージが定着している。

だが、イー・スポーツなどの対戦型ゲームがその典型だが、ゲームのストリーミングのリクエストが殺到してサーバーの許容量を突破してしまい、ストリーミングやダウンロードそのものができなくなるような状況は、ブロックチェーン上にある複数のコンピュータからストリーミングやダウンロードできるプラットフォームでは回避できる。結果的に、ブロックチェーンでも比較的に速いスピードの確保が可能になる

Next: 個人情報の管理方法が根本的に変化する? 自分で自分を守れる時代へ



2. IDと個人情報の管理

Facebookから5,000万人もの個人情報が盗難され、30カ国の選挙で特定候補を当選させる投票行動を誘導するためのデータとして使われたデータ分析会社「ケンブリッジ・アナリティカ」が引き起こした事件はショッキングだった。

SNSやオンラインシッピングがメインになっている「WEB2.0」の世界では、SNSやWEBサイトに登録した個人情報は実質的にだだ漏れの状態である。個人情報は巨大企業によってコントロールされており、情報を提供した個人の手を完全に離れてしまっている。

これは大変に恐ろしい状況だ。パスワード、クレジットカードの番号、オンラインバンキングの暗証番号なども安全ではない。ハッキングなどを通して外部に漏れている。

しかし、インターネットとブロックチェーンが融合する「WEB3.0」の世界では、個人情報の管理方法は根本的に変化する。すべての個人情報はブロックチェーン上に暗号化されて管理され、企業から情報を参照するリクエストがあったとき、それを許可するかどうかの判断はユーザー個人が行うことができる。こうしたシステムが導入されると、個人情報の安全性はかなり高まるはずだ。

このようなシステムをいち早く導入したのが「ソブリン(Sovrin)」だ。このプロジェクトは会社ではない。いくつかの有力な企業が、個人情報をブロックチェーンで保護するために設立された組織だ。個人がソブリンのシステムに登録すると、企業が個人情報の参照を求めると、スマホで通知され許可するかどうか個人が決定することができる。

<ソブリン(Sovrin)>

公式サイト:https://sovrin.org/
紹介ビデオ:https://www.youtube.com/watch?v=Hg7psADNcVU

さらに、もっと先端的なシステムも開発中だ。個人が所有する仮想通貨は、デジタルなウォレットに保管されている。ウォレットは秘密キーによって守られ、本人ではないとアクセスできないシステムだ。

このデジタルウォレットのシステムを個人情報の保護に活用することができる。あらゆる個人情報をウォレットに管理すると、勝手に企業が情報を参照するのを回避できる。いまこの方式は、「デジタル・アイデンティティー・ファウンデーション(Decentralized Identity Foundation)」という組織が取り組んでいる。この組織も営利企業ではなく、有力な企業が設立した財団である。

<デジタル・アイデンティティー・ファウンデーション>

公式サイト:http://identity.foundation
紹介ビデオ:https://www.youtube.com/watch?v=yEKSYjTLjiw

Next: サーバー障害による利用停止はもうない? 次世代のWEBサービスとは



3. 分散型アプリケーション(Dapps)

WEB3.0の大きな特徴のひとつが、分散型アプリケーション(Dapps)の拡大だ。現在は、プログラムの自動実行機能を持つイーサリアムのスマートコントラクトが、ブロックチェーンで提供されるさまざまなサービスの基礎として使われている。そしてDappsも、スマートコントラクトを前提にしたアプリケーションだ。

1990年代から2000年代初頭までのWEB1.0から、SNSを主体とした現代のWEB2.0においても、ネット上で動いているアプリケーションは、そのサービスを提供するサーバーの存在に依存していた。サーバーの集中的な管理があってこそ、アプリケーションは作動できていた。

しかしながら、こうした既存のアプリケーションでは、サーバーが障害で動かなくなると作動しなくなる危険性はいつもあった。また、アプリケーションを使うためにサーバーにアクセスすると、クッキーなどを通して情報が収集されてしまうため、サーバーが信頼できるかどうかが問題であった。信頼性の低いサーバーであれば、情報が悪用されることもあった。

サーバーの機能に依存したアプリケーションの欠点を補い、より安全性の高いアプリケーションを実現したのが、Dappsである。Dappsは分散化したネットワークのブロックチェーン上で動くため、集中管理型のサーバーの機能にはまったく依存していない。これがWEB3.0の時代におけるアプリケーションのスタンダードの形式になると思われる。

ブロックチェーンを活用したシステムの拡大により、あらゆる分野でさまざまな種類のDappsがいま開発されている。今回はそうしたDappsで、すでに稼働しており、いま注目されているものを2つだけ紹介する。

ひとつは「ストージ(Storj)」だ。いまドロップボックスやグーグルのオンラインのストレージが一般的に使われているが、これをブロックチェーン上で可能にしたのがストージだ。これは登録したユーザーのコンピュータをブロックチェーンで結び、空いているストレージを貸し出すサービスだ。貸し出されたストレージには、仮想通貨で報酬が支払われる。

次に注目されているのが、「スティームイット(steemit)」だ。これはブロックチェーンで管理されたSNSだ。

Facebookなどがその典型だが、SNSに投稿するとそれを見た他のメンバーから「いいね!」がもらえる。もちろん、投稿に対するアクセス数の増加はSNSにおける個人の評価を高めることにはなるものの、どれだけ「いいね!」を獲得しても報酬が支払われるわけではもちろんない。

「スティームイット」はブロックチェーンに投稿を書き込むSNSだ。一度書き込まれた投稿は改ざんた変更が不可能になるだけではなく、「いいね!」の評価には仮想通貨「スティーム(Steem)」が支払われ、報酬をもらうことができる。「いいね!」の評価が多ければ多いほど、一層多くの「スティーム」が受け取れる。獲得した「スティーム」は、ビットコインなどの他の仮想通貨に転換することができる。「スティームイット」は投稿で報酬が得られるSNSだ。

<スティームイット(steemit)>

公式サイト:https://steemit.com/
紹介ビデオ:https://www.youtube.com/watch?v=aKTH0o8AEtQ

これらはDappsの代表的な例だ。Dappsはブロックチェーンの活用が進むにしたがって、あらゆる分野と領域でさまざまな種類のものの開発が進んでいる。当然、これらすべてを網羅することはできない。インターネットとブロックチェーンが融合したWEB3.0の世界では、アプリケーションの標準になることは間違いない。

Next: とにかくスケールが大きい「WEBとブロックチェーンの融合」



とにかくスケールが大きい「WEBとブロックチェーンの融合」

インターネットとブロックチェーンの融合は広大な領域である。それをすべてカバーすることはひとつの記事では不可能なので、今回は以下の3点に焦点を絞って解説した。

1. ストリーミングとダウンロードの高速化
2, IDと個人情報の管理
3. 分散型アプリケーション(Dapps)

当メルマガの次号では注目されるプロジェクトを一挙に掲載するが、そのときにこれ以外の方面のプロジェクトも紹介できるはずである。

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※本記事は有料メルマガ『ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン』2018年9月18日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン』(2018年9月18日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン

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昨年から今年にかけて仮想通貨の高騰に私たちは熱狂しました。しかしいま、各国の規制の強化が背景となり、仮想通貨の相場は下落しています。仮想通貨の将来性に否定的な意見が多くなっています。しかしいま、ブロックチェーンのテクノロジーを基礎にした第四次産業革命が起こりつつあります。こうした支店から仮想通貨を見ると、これから有望なコインが見えてきます。毎月、ブロックチェーンが適用される分野を毎回紹介します。

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