マネーボイス メニュー

トランプの関与が疑われる資金洗浄の手口とは? 進化する世界のマネロン対策=房広治

日本が世界に遅れを取っているマネーロンダリング(資金洗浄)対策の最新事情を解説。トランプ大統領が手伝ったとされるロシア疑惑での手口を見ていただきたい。(『房広治の「Nothing to lose! 失う物は何も無い。」』房広治)

※本記事は有料メルマガ『房広治の「Nothing to lose! 失う物は何も無い。」』2018年9月7日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:房広治(ふさこうじ)
アメリカ、イギリス、香港など主要金融センターで著名な日本人投資家。留学中に外資系銀行に就職し、わずか10年で日本のインベストメントバンキングのトップに。投資家転向初年度に年率リターン90%以上の運用成績を出し、ファンドマネジャー・オブ・ザ・イヤーとなる。

トランプが手伝ったとされるロシア「マネロン疑惑」の手口とは?

最先端を行くEU・イギリス

世界の食べ物の輸入基準は整備されていて、最も厳しいのはEUである。遺伝子組み換え食品(GMO)などに対して、きちっとしたルールがあり、そのハードルはかなり厳しい。日本が鰹節をEUに輸出できない理由は、鰹節にEU内では有害とされている菌がついているからだ。トマトやボラなど、基本的にEU内で取れるものをEU内で加工して使っている。

そんな中、日本が遅れているマネーロンダリング(資金洗浄)対策でも、EUは先進国の中で最先端を行っている。

今年の7月9日に、新たなマネロン対策の法律(MLD5)の内容が発表された。その施行は2020年1月10日からである。

今のところ、EUでは「MLD4」というすでに有効な法律がある。イギリスの金融にかかわる取引をするものは、これ以外にイギリス内での以下の6つの法律・規則を守らなければならない。

  1. the Anti-Terrorism, Crime and Security Act 2001:テロリズム対策法2001
  2. the Proceeds of Crime Act 2002 (“POCA”):違法行為からの資金2002
  3. the Fraud Act 2006:詐欺2006
  4. the Counter Terrorism Act 2008:反テロリズム法2008
  5. the Money Laundering, Terrorist Financing and Transfer of Funds (Information on the Payer) Regulations 2017 (the “MLRs”):マネーロンダリング、テロ資金及び移転に関する法2017
  6. the Joint Money Laundering Steering Group (“JMLSG”) Guidance (March 2017):マネーロンダリングに関する指針会によるガイド(2017年3月)

よくあるマネーロンダリングの手口

アメリカでは、ロシアのマフィアによるマネーロンダリングについて、トランプ大統領がリーマン・ショックあたりから手伝ったと言われている。そのマネーロンダリングの手口を、ほとんどの日本の読者は理解してない可能性があるので説明しよう。

以下、私どもの弁護士(Latham & Watkins)がまとめてくれたものから抜粋し、私の過去の経験を踏まえてその意訳を付け加えて解説する。

1)Placement:the physical disposal (into a financial or non-financial institution) of cash derived from criminal activity, i.e. the introduction of criminal proceeds into the system.

最初は、違法行為から得た資金を金融機関に預ける

2)Layering:the separation of illicit proceeds from their source by layers of financial transactions intended to obfuscate.

次にレイア─リングと呼ばれる行為:元々の資金源を分からなくするために、何度か違う金融機関の間で取引する

2)Integration:supplying apparent legitimacy to illicit wealth by re-entry into the economy of what appear to be normal business funds.

インテグレーションと呼ばれる行為で完結。もともと違法性のある資金を合法的な資金に替える。これにより、合法的な資金となって、大手を振って使えるお金に変換される。

Next: 具体的に「トランプがやった」とされる資金洗浄の手口とは?



「トランプがやった」とされる手口

トランプ大統領が手を貸したマネーロンダリングと噂されている手法で、具体的に解説をしてみよう。

まず、ロシア人のA・Bの2名と、トランプ氏の弁護士がグループをつくる。

Aが、ロシアでも国際法上も違法とされる賄賂を受け取った。その賄賂を使って、トランプ氏が作った米国内のゴルフコース会員権やアパートを1,000億円で購入する。

Bは、アメリカに銀行口座を既に所有している。Aはアメリカに銀行口座が無いため、トランプ氏の弁護士に銀行口座付き会社を設立してもらう。この会社をA’とする。

Aは、トランプ氏にロシアの銀行から(市場価格900億円の物件に対して)1,000億円分を送金。A’の名義でゴルフ会員権と不動産を取得。

Bに800億円でゴルフ会員権とアパートを売却。この時、A’のアメリカ口座には800億円分の現金が残る。

Bは、これらの物件をバラバラにして、900億円の価格で売れば、100億円の現金が残る。

これら一連の取引が終われば、違法なお金1,000億円が、合法的に見えるお金「800億円」に替わっていることになる。これは、なかなか金融機関が見抜くのは難しい。

スイス銀行に伝わるマネロン「見破り」手法

これらは、今に始まったことではなく、私がスイス系金融機関の日本の信託銀行の社長をやっていた1998年頃にはすでに、どのようにマネーロンダリングを見破るかを教えてもらえた。

私が当時所属していたスイス系の会社は、当時、世界で最大の資産運用をしていたため、またスイスという特殊な土地柄、マネーロンダリングをしようとする輩が多かったためか、いろいろな例があった。

その1つは、同じような取引が2度以上起こるということである。

上記のように、1,000億円の取引は、何度かに渡って行われる。例えば、毎月とか3カ月に1回という頻度で起これば、ほぼ間違いなくマネーロンダリングである。

Next: 「テロ資金」とも戦う金融機関。効果的な防衛策とは?



テロ資金は「寄付」がほとんど

マネーロンダリング対策より後になって、別の角度から、テロ資金に対しての対策を金融機関は行わなければいけないということになった。

これは「マネーロンダリングを伴わない」テロ資金が集まっていることに、世界が気づいたためである。

一般的にはテロ資金というと、麻薬や賭博などから来ていると想像しがちであるが、実際のテロ資金は、テロ集団への寄付がほとんどなのである。イギリスでは、テロリズム・ファイナンスは、以下のように、定義されている。

Terrorist financing is activity that provides financial support to
terrorist attacks, designated terrorist groups, and/or their operating
expenses, such as training, travel, recruitment, food, etc.

The funds may originate from personal donations, charitable organisations, legitimate business proceeds, drug trade, smuggling operations, fraud, kidnapping, extortion, etc.

Unlike money laundering, the source of funds is not as important with terrorism financing, but rather what the funds are to be used for.

要は、合法的な慈善団体が、例えば、オウム真理教のようなテロ集団に、お布施という形で資金提供をしたりすることを、テロリズム・ファイナンスと呼び、そのような資金の流れを助けることを禁止しているのである。

効果的にあ「マネロン対策」とは

マネーロンダリングの手法は、日々高度化している。上記のレイアリングという行為が複雑になり、金融機関にとって、資金の流れが判りにくくなっている。

しかしながら、これらを簡単に見破れるシステムの開発が進んでいる。

皆さんもご存知の通り、お札にはユニークな番号が振ってある。これを日銀や金融機関はうまく使えておらず、北朝鮮が高額紙幣の偽札の技術では世界一などと言われて、偽札が時々見つかるのが現状だ。

ところが、お金をすべて電子化してしまえばどうなるであろうか?

スウェーデンがまさにやろうとしている現金ゼロの「Eクローナ計画」がある。この計画を世界レベルにして(1942年にケインズ博士が提唱したSuper National Currencyの電子版を作って)、その中にお金の流れをトレースできる仕組みを組み入れてしまうことが考えられている。

実現すれば、簡単に100%お金の流れを把握できるようになる。そのシステムがまさに完成しようとしているが、合法的なお金の使い道をする限りにおいては何ら問題がないと考えられる。

続きはご購読ください

<有料メルマガ購読ですぐ読める! 10月配信済みバックナンバー>

2018年10月配信分
  • 最高裁判事選出のドタバタ劇(10/5)

いますぐ購読!

image by:Evan El-Amin / Shutterstock.com

※本記事は有料メルマガ『房広治の「Nothing to lose! 失う物は何も無い。」』2018年9月7日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にご購読ください。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>

※定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込864円)。

2018年9月配信分
  • トニーシュワルツ・Art of Deals(9/21)
  • 初日からミリオンセラー(9/13)
  • EU・イギリスのマネロン対策(9/7)

2018年9月のバックナンバーを購入する

2018年8月配信分
  • トランプ氏弾劾訴追の可能性(8/30)
  • 投資と恋愛が似ている?(8/18)
  • ブレグジット(8/12)

2018年8月のバックナンバーを購入する

2018年7月配信分
  • プーチンとトランプ会談の結果(7/18)
  • メルマガ読者の行動力(7/16)
  • ミャンマー・ロヒンジャ問題(7/5)

2018年7月のバックナンバーを購入する

【関連】世界中が「低欲望社会化」する中、日本は美しい衰退に向かう【大前研一「2018年の世界」】

【関連】「資産は貯金だけ」がいちばん悲惨。日銀「緩和の副作用」で国民はますます貧乏に=斎藤満

【関連】男を不幸にする家計の管理。「妻が財布を握る」はなぜ失敗するのか?=俣野成敏

房広治の「Nothing to lose! 失う物は何も無い。」』(2018年9月7日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

有料メルマガ好評配信中

房広治の「Nothing to lose! 失う物は何も無い。」

[月額880円(税込)/月 不定期]
世界の金融市場・投資業界で活躍する日本人投資家、房広治による、ブログには書けないお金儲けの話や資本市場に通用するビジネスマン・社長のあるべき姿などを、余すことなく書きます。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。