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今後の中東の情勢次第でリスク回避の可能性/今週の動きと先週の予想=久保田博幸

中東の原油輸送のタンカー2隻が攻撃を受け、中東の地政学的リスクがあらためてクローズアップされた今週。これを受けてイベント盛りだくさんの来週の動きは?(『牛熊ウイークリー』久保田博幸)

※本記事は有料メルマガ『牛熊ウイークリー』2016年10月7号を一部抜粋したものです。興味を持たれた方は、ぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

対米貿易戦争は、大阪でのG20サミットでの首脳会談の動向が焦点

中央銀行の金融政策が振り回される事態は避けるべき

米国と中国の貿易戦争拡大を背景とした世界的な景気減速懸念などから、金融市場ではFRBなど中央銀行の金融緩和期待を強めている

FRBのパウエル議長は4日の講演で、泥沼化する貿易戦争を懸念して、景気拡大を持続させるために我々は適切な行動をとると述べた。これを市場では利下げの可能性を排除しない姿勢を示したと受け取った。

7日の米雇用統計で非農業雇用者数が予想を大きく下回り、平均受給の前年比の伸びも鈍化したことから、市場ではFRBの利下げ観測を強めた。その結果として株式市場が上昇し、米債も買い進まれた。この日は欧州の国債も買われたが、これは米債高だけでなく、ECBによる利下げ期待も背景にあったようである。

日本の債券も5日あたりからあらためて動意を見せ始めた。これはドイツの10年債利回りがマイナス0.2%台に低下するなど、相対的な割安感が円債に出てきたことや、6月は償還月ということでプラスの利回りとなっている超長期債が買われた側面がある。その一方、日銀があらためて金融緩和策を模索してくるのではないかとの期待も出ていたようである。

福岡で6月8日、9日に開催された日本が初めて議長を務めるG20財務大臣・中央銀行総裁会議における共同声明では、下方リスクから守るために全ての政策手段を用いるとの我々のコミットメントを再確認するとあり、世界経済の下振れリスクに対して協調して対応する姿勢を示した。

日銀の黒田総裁はG20財務相・中央銀行総裁会議が開かれた福岡市内で10日、必要ならさらに大規模な緩和を行うことができると述べるとともに、追加緩和に踏み切る際は副作用を減らすために最大限配慮する意向を明らかにした。

そのような緩和策が日銀の手元にあるのかどうかはさておき、金融市場は日米欧の中央銀行に対して金融緩和を催促し、中央銀行もそれに答えようとの格好にみえる。ただし、G20後の記者会見で黒田総裁は「リスクが顕現した場合にきちんと対応しようとしたことだ」とも語っていたように、あくまで経済を脅かすようなリスクが顕在化してから手を打つべきであり、情勢が米国大統領のツイートひとつで変化してしまう世の中での、予防的措置を打つことは最新の注意も必要ではなかろうか。

それでなくても使えるカードが少ないなか、金融市場に中央銀行の金融政策が振り回されるような事態はなるべく避ける必要があると思われる。

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FOMCや日銀決定会合に注目か

■今週の動き

7日に発表された5月の米雇用統計で、非農業雇用者数は前月比7.5万人増と市場予想を大きく下回った。平均時給の前年同月比の伸び率も前月から縮小。これを受け10日の米10年債利回りは2.08%に低下した。

10日に発動予定の対メキシコ関税は無期限停止とトランプ大統領が明らかに。これも好感されて10日の東京株式市場で日経平均は200円を超す上昇に。米債高から債券先物も買われ13銭高の153円56銭となった。

米国がメキシコ製品への関税発動を見送ったことで11日の米債はリスク回避の巻き戻しから売られ、11日の債券先物も売りが先行。引けは12銭安の153円44銭となった。

12日の債券先物は寄り付き直後に出来高が逆転したことで6月限に変わって9月限が実質的な中心限月となった。現物債は超長期ゾーン主体にしっかり。高値警戒も強く積極的な買いは手控えられ、債券先物の引けは9月限が2銭高の153円44銭。

13日に30年債カレントは一時0.305%まで低下した。この日の30年国債の入札は、テールが87銭と大きく流れるなど低調な結果となった。一時153円59銭まで買われていた債券先物は戻り売りに押され、引けは変わらずの153円44銭。

14日の債券先物はしっかりとなったが、超長期債主体に現物債はやや荒れ模様となった。
債券先物の引けは12銭高の153円56銭。

来週の予想

中東の原油輸送の大動脈であるホルムズ海峡近くのオマーン湾で13日、タンカー2隻が攻撃を受けた。これを受けて中東の地政学的リスクがあらためてクローズアップされてきた。今後の中東の情勢次第では金融市場でリスク回避の動きを強める可能性がある。

米国はメキシコ製品への関税発動を見送った。しかし、中国への関税については交渉の進展はいまのところなく、大阪でのG20サミットでの首脳会談の動向が焦点となる。ただし、ここで合意される可能性は薄いとみられ、米中の貿易摩擦はさらに拡大する可能性が高い。これによる世界経済への影響も懸念される。

ここにきての米国の物価指標がやや鈍化傾向を示すなどしたこともあり、市場ではFRBの利下げ観測を強めている。18、19日にはFOMCが開催される。今回は現状維持で7月の会合で利下げとの観測となっているが、19日のパウエル議長の会見内容なども注目されよう。

19、20日には日銀の金融政策決定会合も開催される。世界的に景気減速感を強めれば、日銀も追加緩和に動かざるを得ないとの見方もある。しかし、日銀としては予防的な追加緩和とかは、手札も限られるなか極力避けたいところではなかろうか。

18日に5年国債の入札が予定。20日にはイングランド銀行のMPCも開催される。21日の全国消費者物価指数の発表にも注意したい。

長期金利の予想レンジ -0.150~-0.050%


※本記事は有料メルマガ『牛熊ウイークリー』2016年10月7号を一部抜粋したものです。興味を持たれた方は、ぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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牛熊ウイークリー』(2019年6月14日号)より一部抜粋
※見出し、太字はMONEY VOICE編集部による

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