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日銀は、これ以上の長期債の利回り低下を望まない姿勢/今週の動きと来週の予想=久保田博幸

日銀が20日に国債買入を減額したことを受け、債券先物は下落し10年債利回りは0.210%に上昇。その後は三連休も控えて調整売りも入り、引けは154円73銭となった。(『牛熊ウイークリー』久保田博幸)

※本記事は有料メルマガ『牛熊ウイークリー』2019年9月20日号を一部抜粋したものです。興味を持たれた方は、ぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

今後の債券相場は、波乱含みの様相となるか

今週の動き

米10年債利回りは13日に一時1.9%台をつけた。しかし、サウジの石油施設が無人機の攻撃を受けて買い戻されて1.84%に。17日の債券先物は12銭安の153円86銭で寄り付いたが、その後は買い戻され154円12銭まで上昇した。引けは3銭安の153円95銭。

17日の米債はショートカバーなどから買われ、18日の債券先物も買いが先行し11銭高の154円06銭で寄り付いた。引けにかけて債券先物主導で買い戻され、債券先物の引けは36銭高の154円31銭となった。

18日のFOMCでは予想された通り、政策金利を0.25%引き下げた。米債は短期金利上昇への対策期待などから買いが先行したが上値も重く、米10年債利回りは1.79%。19日の日銀の金融政策決定会合では賛成多数で金融政策の現状維持を決定。今後の日銀の追加緩和への思惑も出たのか、後場に入り債券先物主導で大きく切り返し、引けは46銭高の154円77銭となった。

現物債も中長期ゾーン主体に買われた。

日銀は20日の国債買入において残存5年超10年以下、残存期間10年超25年以下、残存期間25年超を減額した。これを受けて債券先物は154円42銭まで下落し、10年債利回りは0.210%に上昇した。しかし、後場に入り先物主導で再び買い戻され154円82銭まで上昇した。その後は三連休も控えてポジション調整売りも入り、先物の引けは4銭安の154円73銭となった。

来週の予想

ECBは理事会で包括緩和を決定し、FRBはFOMCで0.25%の利下げを決定した。

日銀は19日の金融政策決定会合では現状維持としたものの、次回の会合では経済・物価動向を改めて点検していく考えを示した。

黒田総裁は会見でイールドカーブはもう少し立った方が好ましいとも言及していた。これを受けてか、20日に日銀は国債買入で、3本共に減額するという予想外の動きに出た。日銀はこれ以上の長い期間の国債利回りの低下は望まない姿勢を鮮明にさせてきたといえる。

しかし、債券先物は買い戻しが入るなど、日銀による国債買入減額での長期金利コントロールの難しさも露見か。ただし、多くの市場参加者もこれ以上のイールドカーブのフラットニングは望んでおらず、一部の仕掛け的な動きに今後どう対応していくかも課題となろう。

ECB理事会、FOMC、決定会合も終了し、市場の視線は再び米中の通商交渉の行方、さらにイランの問題、英国のEU離脱の行方に向かうものとみられる。

日米欧の長期金利は波乱含みの様相となってきている。金利が低下し過ぎた反動という面もあったが、買い方の仕掛け的な動きも継続している。きっかけ次第では大きな調整売りが入る可能性もあるため、今後の債券の動きは要注意か。

24日と26日に黒田日銀総裁の講演が予定されている。25日の40年債入札も注意したい。

長期金利の予想レンジ -0.250~-0.100%

Next: ECBドラギ総裁の金融緩和はどんな効果をもたらすのか?



中央銀行のマジックは平時にはむしろ逆効果では

9月13日のECB理事会では、ドラギ総裁が「極めて強力なパッケージ」と語った金融緩和策を決定した。

政策金利の下限金利である中銀預金金利を0.1%引き下げてマイナス0.5%とした。金利階層化を導入し、マイナス金利の深掘りが銀行に及ぼす影響を軽減する。

11月から月額200億ユーロの債券買い入れを行うほか、銀行を対象とした長期資金供給オペ(TLTRO)の条件を緩和する。

できることは何でもすると豪語したドラギ総裁の有言実行ということになる。ただし、バイトマン・ドイツ連邦銀行総裁、クノット・オランダ中銀総裁、ホルツマン・オーストリア中銀総裁が直ちに量的緩和(QE)を再開する必要性に疑義を呈していた。

ドラギ総裁は会見で、QEを巡り「さまざまな見解がある」ことは認めたものの、「最終的には極めて幅広い合意があったため採決の必要もなかった」と説明したが、これはむしろQEの再開に対しての反対者が多くいたために採決をしなかった可能性がある。

この日の欧州の債券市場ではドラギ総裁の出身国であるイタリアなど周辺国の国債が買われたのに対し、QEの再開に反対したドイツなど中核国の国債は売られた。

今回のECBの決定した包括緩和に対し、市場はやや冷ややかな目を向けていた。

数少ないカードをすべて切ってしまったともいえるが、その効果については期待できない。そもそも非伝統的な金融緩和はあくまでリーマン・ショック時などの非常時対応といえる。市場での不安心理が渦巻いているときには効果はあっても、市場の動揺などがほとんどない状況では効果はない。

今回のドラギ総裁の無理矢理ともいえる追加緩和の決定は、もうすぐ任期満了となるドラギ総裁が最後の花道にしたいとの思いからなのか。しかし、マイナス金利の深掘りにより、リバーサルレートに接触する懸念もあり、そういった副作用については後任となるラガルド氏に押しつけられた格好となる。

今回のECBの追加緩和とそれに対する市場の反応をみても、以前、ドラギマジックとも呼ばれた市場を安堵させるような効果をもつ金融政策ではなくなりつつある

金融政策にはアナウンスメント効果が大きい。それはあくまで市場での不安感が強まっているなかにあって、その不安を沈める効果はあろう。しかし、そうではなく今回のような予防的というような緩和策を市場はあまり反応せず、むしろマジックどころか実態経済での副作用を強めさせかねない

平時となったのであれば、それに応じた金融政策を行うことが必要であり、無理に追加緩和を行うのではなく、非常対応から平時の対応に戻す努力が求められる。これはECBだけでなく日銀も同様である。

Next: 来週、2019年9月24日~27日の主なイベント



2019年9月24日~27日の主なイベント

9月23日 (月)
ユーロ圏9月製造業PMI

9月24日(火)
黒田日銀総裁講演(大阪)
7月景気一致指数
米7月住宅価格指数
7月ケース・シラー米住宅価格指数
9月リッチモンド連銀製造業指数
9月消費者信頼感指数(コンファレンス・ボード)

9月25日(水)
40年利付国債入札
政井日銀審議委員講演(三重)
金融政策決定会合議事要旨(7月29・30日分)
8月企業向けサービス価格指数
MBA住宅ローン申請指数
8月新築住宅販売件数

9月26日(木)
黒田日銀総裁挨拶(全国証券大会)
米4~6月期GDP
米4~6月期コアPCE確定値
カーニー・イングランド銀行総裁講演

9月27日(金)
国庫短期証券(3か月物)入札
2年利付国債入札
9月東京都区部消費者物価指数
ユーロ圏9月経済信頼感
8月個人消費支出(PCE)
8月PCEデフレーター
8月耐久財受注
9月ミシガン大学消費者態度指数確報値


※本記事は有料メルマガ『牛熊ウイークリー』2016年10月7号を一部抜粋したものです。興味を持たれた方は、ぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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image by : Who is Danny / Shutterstock.com

牛熊ウイークリー』(2019年9月20日号)より一部抜粋
※見出し、太字はMONEY VOICE編集部による

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