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黒字企業リストラが急増中。働き方改革と年金不足に殺される日本人=原彰宏

好業績でも早期退職者を募る「黒字リストラ」企業が増えるなど、早くも2020年は「激動の年」となってきています。日本では何より労働改革とマイナンバー推進がトピックスになりそうです。(『らぽーる・マガジン』原彰宏)

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※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2020年1月20日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

労働環境の変化、マイナンバーカードの推進…2020年は激動の年?

2020年、世界地図が塗り替わる

多くの人は、早くも2020年は「激動の年」と位置づけているようです。

やはり今年が、トランプ米大統領による、ドローン攻撃での、イランのソレイマニ司令官殺害から始まったことが印象的なのでしょう。一気に中東情勢が緊迫しましたからね。

米中貿易協議も、第一段階署名合意となりましたが、中身がスカスカで、大統領選挙までは関税合戦は続く見通しとなりましたので評価の仕様がなく、ただただ不安材料だけが残ったという感じです。

前回、当メルマガでは、ユーラシア・グループによる「世界10大リスク」をご紹介しました。ポイントは「米中デカップリング」で、テクノロジー分野での分断は、今後の世界秩序に大きな影響をもたらすことになりそうです。

世界対立は、かつての「東西」から「南北」へと、地軸を変えてきました。次世代インフラ主導権争いにより、おそらくは「米国グループと中国グループ」に、大きく分けられることになるのでしょう。

その際、南半球は、オセアニアを除いて、最期のフロンティアと呼ばれるアフリカや反米色が強い南米は中国側に付くと思われます。

ヨーロッパ大陸は、本土は中国がほぼ制圧するでしょうが、EU離脱の英国はどうするのでしょうね。中東は反米・親米入り混じりで、一帯一路構想で分断されるのかもしれません。

これからの世界地図は、「米国・大英帝国 vs 中国「一帯一路」グループとアジア・南半球発発展途上国」という構図になるのでしょうかね。

この世界地図が塗り変わるはじめの年が、2020年になりそうなのです。

ここにロシアがどう割り込んでくるかで、ロシア帝国による世界制覇の夢は、プーチン大統領は、決して捨ててはいないでしょうからね。

日本はただ米国についていくだけ…

日本は米国追随ですから、この世界地図描写にはまったく加わってはきません。

そんな日本の2020年はどうなるのでしょう。

オリンピックにうかれている間に、世界から切り離された日本の、ドメスティックな状況を考えてみましょう。

目次として考えられるのが、以下でしょうか。

・一にも二にも労働環境の変化、それが社会保障にも繋がる
・マイナンバーカード普及に全力、それが社会インフラを変えるかも

それぞれ解説します。

Next: 死ぬまで働け? 2020年は「働き方」が大きく変わる…



2020年は、一にも二にも労働環境の変化

労働環境を変えることの目的は、ひとえに社会保障制度において、「給付額の削減と保険料徴収者の拡大」にあると思います。

「働けるうちは年金をもらわないで働け」
「保険料支払は働いている全世代で負担しろ」
というものです。

今通常国会では、年金給付の蛇口を閉める法案、保険料徴収窓口を増やす法案が可決されます。

よく見ておいてください。

「人生100年時代」「働き方の多様化」「ワーク・ライフ・バランス」という、きれいな言葉で覆い隠しながら、実質は、社会保障財政の見直しに出てくるはずです。

100年まで生きると言っても、健康寿命、労働寿命は限られます。60歳を過ぎると一気に体にガタが来て、65歳を過ぎると、内外からも「老人」になっていきます。人生100年なんて、とんでもない話です。

生活の心配をしなくて良い老後資金があって、初めて「人生100年」が楽しめるのです。

「100年まで生きるから」「70歳でも元気だから」と社会制度を変える、労働環境を変えるというのは、話が違います。

もっとも、貧乏老人は一生働けという事で、年金だけでは暮らせないので、否応なしに働かなければならなくなっていくのですけどね。

働き方改革と社会保障制度改善はセットになっている

副業奨励も、働き方改革の柱の1つになっています。

会社は終身雇用・年功序列を、正式に放棄することを宣言します。その代わり、副業してもよいから、自分たちの生活や老後は、会社に頼らないで自分たちでなんとかしてということになります。

ライオン株式会社は2020年春をめどに、人事部が社員に副業を紹介する制度を始めます。人材紹介会社と提携し、幅広い仕事を取りそろえるようです。

副業は社員が自ら探すのが一般的ですが、関心があっても自分で見つけるのが難しいケースが多いようで、だからと言って紹介までするのは珍しいことです。

副業しやすいように、本来の業務での残業しなくて良いように調整します。

つまり「あまり働くな」ということで、それが「ワーク・ライフ・バランス」の名のもと、時給カットでと労働者賃金を減らす方向につながります。

正社員はいいけど、非正規社員やパート社員は、もろに手取りが減ります。ボーナスもありませんからね。

非正規雇用者もパートタイマーも、社会保険料を負担します。

今にしてわかったのですが、働き方改革と社会保障制度改善は一体なのですね。

Next: 政府を信じられる? 2020年は何が何でもマイナンバーカード普及に全力…



政府は何が何でもマイナンバーカード普及に全力

とにかく、あれだけ予算をかけて作ったマイナンバーカードを、なんとしてでも普及させたいのです。

政府は2016年からマイナンバーカードの交付を始めたが、現在の普及率は15%程度にとどまっています。

生活に便利な多機能カードと定義し直し、取得者を増やす狙いです。マイナンバーカードを持つ利便性を高めるとし、様々な個人証明証とマイナンバーカードをドッキングさせようとしています。

ただ普及させるだけでなく、各個人に振られたナンバーに、全ての情報を集約させて管理することが目的であることは、いろんなところで言われています。

まずは2023年度から、マイナンバーカードと介護保険の保険証を一本化します。

健康保険証の機能も先行して組み合わせる予定で行政と医療、介護の手続きが1枚のカードで済むようになります。

不祥事だらけの政府に個人情報を預けていいのか?

行政手続きの利便性を高めることは大賛成です。

たとえば、引越しをして、役所で住民票を移せば、それだけで、運転免許証や健康保険証のカードデータも新しい住所がインプットされていて、新たな手続をする必要がなくなるというものです。

とにかく、ワンアクションで、行政手続き全てが書き換わり、新たなアクションはいらないというものです。

それには、マイナンバーを行政機関に預ける必要があります。

多くの国民は、この様な利便性を拒否することはありませんが、個人情報を預けて管理する行政機関に不信感を持っているのです。

銀行口座や納税等、資産や税金などの情報もマイナンバーで管理されることで、国にすべてを管理されるのがイヤなのですね。ようは国や行政機関そのものを信用してないのですね。

今の政権や行政機関に、自分の未来を託せますか?

今の行政機関は国民を見ることなく、政権の顔色ばかり伺うようになり、もはや国家行政の体をなしていません。

同時多発的に起こっている、中央官庁の不祥事の数々…。

・財務省の公文書改ざん
・厚労省の杜撰な統計
・防衛省のイージスアショアのデタラメ調査
・文科省の幹部収賄
・総務省の情報漏えい…etc

なんじゃこりゃ…。これがいまの日本なのでしょうか。

私たちの税金は、公私混同され、自身のために私物化され、政治家の行動を規制する政治資金規正法やら何やらが、すべて有名無実化にされています。

この様な状況を、見て見ぬ振りをしているのも日本国民です。これが、私たちが選挙で選んだ政権なのです。

自分たちのことは自分たちで守る、デタラメな年金財政で、私たちの将来が安心できるはずがありません。

制度依存体質からの脱却…真の自立は、経済的な自立です。それを真剣に考えることから、はじめていきましょう。それが21世紀の実質の始まりである2020年です。

Next: 誰もが対象になりうる? 2020年は黒字企業リストラが増加する



2020年は黒字企業リストラが増える

好業績でも早期退職者を募る「黒字リストラ」企業が増えています。

2019年に早期・希望退職を実施した上場企業35社のうち、最終損益が黒字だった企業が約6割を占めました。

上場企業が2019年に募集(または社員が応募)した早期・希望退職者は35社の計約1万1,000人だったと、東京商工リサーチ調べでわかりました。

企業数も人数も2018年(12社、4126人)の約3倍にのぼり、多くの電機大手が経営危機に陥っていた2013年(54社、1万782人)の人数を超え、6年ぶりに1万人を上回りました。

2020年以降も、早期退職を実施する予定の企業は足元で9社(計1,900人)あり、うち7社(計1500人)が2019年度に最終黒字を見込んでいます。

AIによる事業の効率化で、従業員を必要としない業務が増え、会社が抱え込む人材は、AIに対して高度な知識を持った人材であることから、給料が高いともあり、ITに精通していない高年齢者を対象に早期退職を募ることになるのでしょう。

それゆえどうしても、これらの企業の削減人員は中高年が中心で、企業は、若手社員への給与の再配分やデジタル時代に即した人材確保を迫られ、業績が堅調で雇用環境もいいうちに、人員構成を見直す動きで、人材の流動化が進むとされています。

年功序列型の賃金体系を持つ大手企業では、中高年の給与負担が重く、厚生労働省によれば、大企業では50~54歳(男性)の平均月給が51万円で最も高く、45~49歳も46万円となっています。

人手不足にも拘らず早期退職者を積極的に募るのは、中高年に手厚い賃金原資を若手に再配分することで、人手不足に対応しようしているようです。

人員削減と若手給与への再配分…人員削減で浮いた費用を若手給与に還元することで、若手人材を確保するということなのでしょうか。

高度技術を持つ人材や若手を取り込み、人材の新陳代謝…黒字企業の早期退職募集は、将来の業績不振に備える一面もあります。

AIによる業務効率化に伴う人材の見直しという側面もあり、給与が高い年齢層を中心とした早期退職者募集の背景には、優秀な若手人材の確保という側面もあるようです。

個人の能力が大事になってくる

いくら新陳代謝促進とは言いながらも、若くても、現状を変えようとする意欲がない人は淘汰されるでしょう。

つまり「個人」が大事、個人の能力が大事ということです。

ルーティーン作業はAIが代替します。生産性のない、時間だけを費やすような「怠惰な多忙」をむさぼるような人材は、年齢が若くても不要となります。

求められる能力は、業務の専門性だけでなく、全体を把握出来る能力、組織を超えたチーム作りができ、かつ、チームを運営できる能力が問われます。

昔の「指示待ち族」は言語道断、組織依存型も不要です。自立した個を備える、まさに、率先してチームを作り運営する能力が求められます。

スキル(能力)よりもウィル(意識)…人材に求める要素を表す言葉だそうです。

黒字リストラの流れは、ますます進むと思われます。時代は大きく埋め利を上げて変わっていきます。求められる人材も変わり、求められる能力も変わってきます。

大企業に就職したらそれで安泰という時代は終っています。

これが、今年確実に表れる、つまり、2020年は、目に見えて劇的に労働環境が変わる社会の始まりになると思います。

常に変わろうか得ようという意欲を持って、そのために努力する人だけが、生き残れる社会になっていくのでしょうね。

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らぽーる・マガジン』(2020年1月20日号)より一部抜粋
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