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消費増税対策のポイント還元「効果ナシ」が6割超えの衝撃。中小店舗の手間が増えただけ=今市太郎

消費増税による消費減退をリカバーするために導入したポイント還元事業。実態を調査したところ、売上増に「効果なし」と回答した店舗が61.3%に達しました。(『今市太郎の戦略的FX投資』今市太郎)

※本記事は有料メルマガ『今市太郎の戦略的FX投資』2020年1月13日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバッグナンバー含め初月分無料のお試し購読をどうぞ。

これでも景気は緩やかに回復?ポイント還元制度は空振りだった…

消費減退を防げたのか?

消費増税と同時にスタートした「キャッシュレス・ポイント還元事業」は、クレジットカードなどを利用した場合に利用額の最大5%を還元するという制度です。

これは、消費増税による消費の落ち込みをリカバーするために導入されました。

当初は今年3月までに1,800億円の還元原資が用意されていましたが、この制度の利用者が想定よりも多く、すでに原資が乏しくなってきたことから、政府は補正予算で1,000億超の追加原資を計上する方向で調整に入ったという報道が昨年11月に流れました。

さぞや増税後の景気対策はこの制度のおかげで上手くいったものと期待したわけです。

しかし、年明け1月10日、この制度を管轄する経済産業省が消費税増税に伴うキャッシュレス決済のポイント還元事業を巡る調査結果を公表し、その内容に落胆が広がっています。

「効果なし」は実に全体の61.3%に

この調査は、キャッシュレス推進協議会がインターネットを通じてアンケートを実施したもの。

それによると、売り上げへの効果について「なかった」と回答した店舗は23.0%、さらに「あまりなかった」は38.3%で、計61.3%に達している状況です。

逆に「非常にあった」「あった」は計38.7%にとどまっており、この制度に参加した企業の実に6割は売上増加に結びつけられていないことが明白になっています。

また、新規の顧客獲得という視点でみた場合、新たな顧客獲得の効果が「なかった」「あまりなかった」が計63.3%を占めており、せっかくキャッシュレス支払いを開始した事業者でも6割が販促効果もなければ新規顧客開拓効果もない、単なる手間がかかっただけの状況になっていることがわかりました。

Next: 効果ナシは当然? 消費者はポイント還元で生活防衛しているだけ…



想定以上に利用されているのに、なぜ売上増加に繋がらない?

昨年末に同省が発表した最新の利用状況によれば、10月1日~11月25日までの決済金額は約1.9兆円、ポイント還元額は約780億円となっています。

1日の平均額は約14億円であり、開始当初の約8億円から大きく増えていることが確認されています。

内訳としては、5%還元対象の中小店舗でのポイント還元額は約650億円(約80%)、2%還元対象のフランチャイズチェーン(コンビニ含む)のポイント還元額は約130億円(約20%)で、当初企画の狙いどおり、中小店舗での決済が圧倒的に多く発生していることが確認されています。

それにも関わらず、売上増加には繋がらないということは、一体どういう状況なのでしょうか。

結局のところ利用者は増税分をポイント還元利用で生活防衛しているだけ

こうしてみますとポイント還元ができる店舗は続々と増加中で利用者も増えているのでしょうが、そもそも利用顧客はなんとかして増税分を取り返す生活防衛的な意味合いから、この制度を活用しているにすぎません。

この制度を利用することで、消費意欲が増大したりということはまったく成果として表れていないことがよくわかります。

また、ポイント還元制度に参加した中小企業も、仕組みの導入と還付金を手にするのに手間がかかるだけで、6割以上がなんの実利もないという、かなりダメダメモードな状況に陥っていることが見えてきます。

経産省としては、消費増税のタイミングに景気対策と称してキャッシュレス化を強力に進めるために、こうした還元策を打ち出したのでしょう。

ですから、景気対策などというのは大義名分に過ぎず、キャッシュレスで国民にカネを使わせることで、所得や保有資金を正確に把握することを推し進める狙いがありそうです。

しかし、足もとで実質賃金が下落して可処分所得の減少にあえぐ国民にとっては、まったく何の意味もないことが改めて顕在化していると言えそうです。

Next: これでも「景気は緩やかに回復している」? ポイント還元制度は空振りに



ポイント還元制度は景気対策にならず

政権の要人、日銀総裁は口を開けば景気は穏やかに回復していると寝言のような嘘を平気で口にしますが、こんな状況で増税後消費が停滞している中で景気が上向くはずもありません。

金融市場では、米国の隠れQEがピークに達していることから、米株はじり高を継続中で、日本株もそれにつられて3万円方向を目指すといった超楽観論がはびこり始めています。

たとえそうした吊り上げ相場が実現したとしても、不景気の株高に過ぎず、どこかで猛烈な調整局面がやってくることだけは間違いなさそうです。

オリンピックまでは景気は問題ないという声もよく耳にしますが、本当にそんな楽観的なことを口走っていていいのでしょうか。状況は我々がイメージしている以上に深刻なところにさしかかっているように見えます。

とにもかくにも、政権が打ち出しているポイント還元による景気対策は、完全に空振りの状態です。

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今市太郎の戦略的FX投資』(2020年1月13日号)より抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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