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「森友学園」騒動から早3年、忖度で人が死ぬ国の政治は変わったか?=原彰宏

「森友学園」問題が世間を賑わせてから、すでに3年の月日が経過しています。新型コロナに対する政府対応にも不信感が募っている今、あらためてこの問題を考えます。(『らぽーる・マガジン』原彰宏)

※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2020年3月23日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

文春砲炸裂、「森友学園」問題をあらためて考える

「森友学園」問題を当メルマガで取り上げたのは、2017年2月27日第245号です。

TBSラジオ「荻上チキsession22」に、マスコミに初めて籠池泰典理事長(当時)が生出演しましたが、そのインタビュー内容に非常に怒りを覚えて、そこから情報を取るようになりました。

あまりの身勝手と、自己都合の語り口調に苛立ちを覚えました。背後に大きな力があるから、こんな強きに出られるのだろうという雰囲気満載でした。

その背後にある大きな力が、今にして思えば、安倍総理大臣だったのですね。

30分にわたる生インタビューは、一方的な籠池泰典理事長(当時)の演説の場となっていました。

森友学園が世のなかに登場しだしたときの社会の反応は、「異様とも思える極端な思想を背景にした小学校ができるぞ…」というものでした。

この籠池泰典理事長(当時)は、すでに塚本幼稚園を経営していて、その幼稚園では教育勅語を児童に語らせ、運動会では安倍総理賛美の言葉を言わせるという、どう見ても異様な教育がなされている幼稚園だということがクローズアップされ、その学園が小学校を造るということが注目されました。

塚本幼稚園では、民族差別的発言もあり、そのことで保護者との対立もあったと報じられ、この時点では「籠池泰典理事長夫妻 vs 保護者」という構図となっていて、その教育方針の極端な右翼色が注目されていました。

森友学園の不正土地取引に焦点が移る

そもそも「森友学園」問題の本質である不正土地取引が発覚したのは、豊中市議の木村真氏が、森友学園の国有地購入価格に不審を抱いて調査したことを、朝日新聞が取り上げたことで、その存在が全国に知れわたることになりました。

伊丹空港近くの広大な土地を、豊中市は、公園整備のために国から買取りました。

予算の関係で、半分の土地しか買えなかったので、公園を造るうえで、残り半分の土地がどうなるかを調べていました。

公園隣接にふさわしくない施設ができたらどうしようという思いで調べたら、私立小学校ができるということで、市や議会を含め、豊中市としてもほっとしたのでした。

ところが、その私立小学校が、あの塚本幼稚園を経営している森友学園であることがわかり、その建物の色などの奇抜さもあって、大変驚いたようです。

なにせ塚本幼稚園では、前述の通り園児に教育勅語や軍歌を覚えさせる学校ですし、籠池理事長は日本会議大坂代表を名乗っていただけに、そんな学校が公園の隣にできることを憂慮する空気が漂い始めました。

小学校のホームページには、日本会議の関係者が複数人講演した記述がありました。一方で、塚本幼稚園が日本会議の関係者の勉強会の会場になっていたこともわかりました。

そして「安倍昭恵総理夫人」の名前が、名誉校長として出てきたのです。

日本会議は安倍総理ととても密接な関係にある団体でもあり、木村真市議はあくまでも直感だとのことですが、森友学園による土地取得に関して、なにかがあるのではないかと思い、本格的に調べてみよと思ったようです。

まあ、総理夫人と日本会議が揃えば、誰もが「怪しい」とは思いますよね。

豊中市による公園整備や瑞穂の国小学校建設の土地は、国が1970年代から、住民の立ち退きをすすめ、順次購入していたところです。

豊中市は、最初から、公園整備のための土地貸与を申し出ていて、担当者レベルでは無償貸与の話もあったとありますが、なぜか突如、国の態度が一転し、貸与ではなく、豊中市による買取りを求めてきたのです。

当然、お隣さんも同じ条件で国から言われているのかと思い、木村市議は、土地の登記簿を調べたそうです。

土地の所有者は運輸省(現国土交通省)になっていました。でもすでに、小学校建設は始まっていました。

人の土地に勝手に建物を建てている?そんな馬鹿な……。

木村議員が近畿財務局に問い合わせたところ、池田靖統括管理官から「定期借地権付きで貸与した」との回答を得ました。

豊中市には「貸与はダメ、買い取れ」と言った同じ敷地での話です。

賃料などの具体的な金額を尋ねても答えてくれませんでした。

仕方がないので、後日、財務局に直接出向いて情報開示請求を行ったところ、ここでも池田靖統括管理官が出てきて「金額までは出せない」と言われたそうです。

もう怪しさ満載です。誰の目にも「怪しさ」があるのは明らかですね。

この池田靖統括管理官は、今回の、自殺した赤木俊夫近畿財務局職員の遺書とともに週刊文春で明らかにされた7枚もの「手記」に書かれていた、実名者のうちの一人なのです。

案の定、提出された文章は、金額が黒塗りされたもので、その後に請求した「売買契約書」も、金額部分が黒塗りになっていたそうです。

Next: とにかく、森友学園がこの土地を取得するプロセスが無茶苦茶で、大阪府に――



森友学園には破格の優遇が相次いで……

とにかく、森友学園がこの土地を取得するプロセスが無茶苦茶で、大阪府による私立学校設立認可のプロセスも、疑わしいところがあったのです。

近畿財務局が過去3年間に、森友学園と同じように随意契約で売却した国有地は30件以上ありましたが、この中で金額が公表されていないのは森友学園のケースだけでした。

学園の小学校設立を認めるかどうかは大阪府私立学校審議会が議論したのですが、2014年12月の会合で計画に対する懸念材料が出て、いったんは保留になったのが、2015年1月に開かれた臨時会では条件付きで「認可適当」になっていました。

まさに異例の扱いと言えます。

あきらかに裏で大きな力が動いたに違いない……。

木村真議員は、この問題を風化させないために、ビラ配りを行い、裁判を行うことで、世間の注目を保つことを行いました。

情報公開請求に対して売却価格を非開示とした近畿財務局の対応は違法だ……。

2017年2月、木村市議は大阪地裁に提訴しました。この問題が全国区になったのは、おそらくこの後からだと思います。

私がこのメルマガで取り上げたのも、2017年2月ですからね。

木村市議によれば、非開示だった売却価格を推測する手がかりが、登記簿に書かれていたとのことです。

「1億3,400万円」。

あらかじめ取り決めた条件を学園側が守らなければ、国は土地を買い戻すことができるという「買い戻し特約付き」という付帯条件があり、その際の金額が「1億3,400万円」と記載されていたそうです。

買い戻し金額は、そもそもの売却価格と同じくらいになるのが一般的なので、森友学園が国から購入した金額は「1億3,400万円」でまちがいないでしょう。

豊中市が国から買ったのは約9,000平方メートルで約14億円でした。

お隣同士なのに、この金額の開きはなんなのでしょう。

黒塗りなしの資料が国会議員に提供されたそうですが、そこには「1億3,400万円」と金額が記載されていたそうです。

なぜ森友学園にはこんな破格の金額で取引されたのでしょう……。
国有地売却ではありえない「定期借地権対契約」が森友学園にだけ、適用されたのでしょう……。
即金一括払いが原則の告諭地売却手続で、なぜ森友学園伊だけ分割が認められたのでしょう……。

そして、

なぜ私立学校親切許可が、短期間で「保留」から「認可適当」になったのでしょう……。

この問題点は「アンフェア」であることはもちろんですが、一連のことに政治家が絡んでいる疑い、その際に金銭が動いている疑いがありました。

国有地が正当な評価額から大きく値引きされているということは、国民の財産を不当に失わせていることになります。

ありもしないゴミを除去する費用や、ありもしないゴミで評価額を8億円も下げてまで、森友学園が土地を手にしやすいように配慮したというのが、一連の土地不正取引なのです。

財務局は財務省の管轄で、国の財産を管理するところで、つまりは私たち国民の財産を管理するところなのです。

土地取引に関しては国が、私立学校建設認可に関しては大阪府に責任が問われます。つまり、安倍総理、麻生財務大臣、そして当時の松井一郎大阪府知事が当事者となります。

そこに安倍昭恵総理夫人までが登場しているのです。

Next: ここまでは、いままでの政治がらみの案件であり、よくある政治家の口利き――



「森友学園」の本質は土地不正取引と公文書改ざん

ここまでは、いままでの政治がらみの案件であり、よくある政治家の口利きであったり、金銭授受の汚職問題なのですが、森友学園問題は、土地不正取引が前半戦であれば、そこから今度は官僚の公文書改ざん問題へと発展していくのです。

つまり、森友問題は

・土地不正取引
・公文書改ざん

のふたつの側面があるのです。

私立学校建設許認可に政治家の口利きがあったかというのは、付随した問題で、それは大阪府の問題です。

また、籠池元理事長の助成金不正受給は、この問題の本質ではありません。

これらは国会で答弁するものではなく、大阪府とやり取りする話で、籠池夫妻は、本質とは関係ない助成金詐欺で告訴されたのです。

かつて耐震偽装問題が発覚したとき、マンション販売会社ヒューザーの小嶋社長が「宅建法違反」で起訴されたのと同じように思えます。あの問題のときでも、伊藤公介国土庁長官の名前も出ていましたが、ことの本質にまでは、たどり着けませんでした。

この後半部分の「公文書改ざん」問題で、大切な命が失われているのです。

それが今回の週刊文春で遺書が取り上げられた、赤木俊夫近畿財務局職員の自殺という痛ましい出来事です。

なぜ赤木氏は自殺しなければならなかったのか……。
そもそもなぜ、土地取引に関する公文書が改ざんされたのか……。
誰の命令で改ざんが行われたのか……。

遺書から明らかになったことは、自殺ではなく、組織ぐるみの殺人であると言っても過言ではありません。

「全て佐川局長の指示です……」。

佐川宣寿理財局長(当時)が名指しされています。

赤木氏の手記に登場してくる実名者は、全員が出世しています。佐川理財局長が国税庁長官になったことは、マスコミでも取り上げられていましたね。

赤木氏夫人は、佐川氏と国を相手取って裁判を起こしました。

賠償金額1億1,000万円、安い金額だと「認諾」と言って、こちらの主張を丸呑みしてお金で解決しようとする動きを封じ込めるための金額だそうです。

お金が欲しいわけではない、真実を明らかにしたいだけです。

なぜ赤木俊夫氏は自殺しなければならなかったのか……。

未亡人となった赤木夫人は、佐川氏の自宅を訪ねました。一度見て見たいということで、初めて佐川氏の自宅に行ったそうです。面会を求めたわけではありません。

そのときの赤木夫人の言葉です。

「この町は幸せそうな町ですね。だけど、佐川さんも佐川さんのご家族もきっともう幸せではないのですね。佐川さんもかわいそう……」

佐川氏は何故、赤木氏にあんなにきつく、改ざんを強要しなければならなかったのだろう。佐川氏も、何らかの指示、しがらみの中でやらされたのだろうか、そのことも含めて、真実を明らかにしたいと述べています。

佐川氏の自宅を訪ねたのは、佐川氏と国を訴える前日のことだったそうです。

「佐川さんもかわいそう……」

翌日に訴える人に投げかける言葉なのでしょうか。

公文書を改ざんするために官僚になったわけではないでしょう。改ざん指示は、官僚のど真ん中のプライドを、官僚としての自負をまさに踏みにじる行為で、命を落とすまでのことなのだということを、まざまざと知らされました。

忖度という言葉がなんども出ていましたが、忖度で人を殺せるとは思いもよりませんでした。

これを単なる佐川氏というパワハラ官僚の個人的な行為で終らせてはいけません。自殺した赤木氏の気の弱さにすり替えてはいけません。

巨悪を眠らせてよいのでしょうか。

「ターニングポイントは首相答弁……」

3月23日、この日の国会で、安倍昭恵夫人の国有地取引などへの関与を追及された安倍首相が

「私や妻が関係しているということになれば、まちがいなく総理大臣も国会議員も辞めるということは、はっきり申し上げておきたい。全く関係ない……」

この後から公文書から安倍昭恵夫人の名前が全て消去され、この2日後から、公文書改ざんが始まりました。

手記には、改ざんは全て本省からの指示だとあります。

ここまで明確に書かれているのに、財務省は再調査をしないとそうそうに表明、安倍総理も麻生財務大臣も、まったく受け付けないでいます。

それでも安倍政権支持率は上昇しています。それがこの国の民意なのでしょうか、それがこの国の国民、の政治リテラシーなのでしょうか……。

Next: この一連のながれを踏まえて、週刊文春の記事を読んでください。3月23日――



改めて週刊文春を確認すると…

この一連のながれを踏まえて、週刊文春の記事を読んでください。3月23日の答弁を聞いて、籠池夫妻も裏切られた気持ちでいっぱいでしょう。
※参考:「すべて佐川局長の指示です」――森友問題で自殺した財務省職員が遺した改ざんの経緯【森友スクープ全文公開#1】 – 文春オンライン(2020年3月25日配信)

佐川氏国会答弁、麻生財務大臣答弁、全てが虚偽答弁だと、赤木夫人は断じています。

国を相手取った裁判は長引きます。国側は証拠となる資料を出し渋ります。時間をかけてきます。かなりタフな戦いになるでしょう。

そもそも「忖度」というものは立証できません。まさに「悪魔の証明」です。

ネトウヨたちはきっとバッシングしてくるでしょうし、安倍シンパのコメンテーターも、声が大きくなるでしょう。

政権よりのテレビ局は、佐川氏個人の資質問題として片付けようとしてくるでしょう。

野党に追求能力はあるのでしょうか。

このままうやむやにさせないためには、世論が動く以外にはありません。世論が赤木夫人を後押しするしか、国を相手に戦うことはできません。

この国の国民が民主主義を守れるかどうかが、試されるときかと思います…。

編集後記〜週刊文春は完売だった

週刊文春は発行部完売だったそうです。久しぶりの社会ネタで、その遺書や手記のインパクトの大きさは、想像以上だったのでしょう。

怒りがふたたび湧き起こりました。

「公文書改ざん」。森友学園に始まり、次々と政権に忖度するように、公文書は改ざん破棄されていきます。とてもまともな国ではありませんね。

文春はその日に買いました。その中身を紹介するのではなく、文春記事が読みやすくなるような内容を書きました。記事の行間部分も書いたつもりです。

この問題は、単なる「おかしな老夫婦」の物語ではありません。政権権力はすさまじいものなので、きっとこの話も、きっと吹き飛ばされることでしょう。

でも、未亡人にさせられた赤木夫人が立ち上がった戦いを、何とか応援したいという思いはあるのですがね。

テレビドラマ「相棒」のようには、ことは運ばないですかね……。

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らぽーる・マガジン』(2020年3月23日号)より一部抜粋
※タイトル、本文見出しはMONEY VOICE編集部による

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