世界のどこよりも早くコロナ終息宣言を出した中国では、大型連休の過ごし方に大きな変化が見られました。いまの中国の消費者の行動が、日本をはじめ世界のスタンダードになるかもしれません。(『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』牧野武文)
※本記事は有料メルマガ『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』2020年10月12日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
ITジャーナリスト、フリーライター。著書に『Googleの正体』『論語なう』『任天堂ノスタルジー横井軍平とその時代』など。中国のIT事情を解説するブログ「中華IT最新事情」の発行人を務める。
連休の過ごし方に大きな変化
ご存知の方も多いかと思いますが、10月1日は中国の国慶節でした。これは建国記念日で、毎年1週間の大型連休=ゴールデンウィークとなります。
国慶節は旅行の季節です。以前は、日本にもたくさんの中国人が観光にやってきました。季節もよく、紅葉など景観もよくなるため、この大型連休に多くの人が旅行を楽しみます。
しかし、今年はコロナ禍がありました。中国では5月頭には感染拡大がいち早く終息をしているため、コロナ後の経済回復にはいろいろ参考にできることがあります。このメルマガでも、小売業が新小売テクノロジーやライブコマースを活用して、復興をしようとしていることをご紹介してきました。
国慶節は、コロナが終息して半年経っています。旅行業関係者は、大いに期待をしていました。しかし、結論から言うと、7割回復でまずまずの回復ぶりであるものの、完全復調とまでは言えません。意外に皆、旅行に対しては慎重だったのです。
そればかりでなく、旅先での行動にも変化が起きています。また、旅行に行かず、都市内で連休を過ごす人たちにも行動に変化が起きています。
中国で起きている変化が、そのまま日本でも起こるとは限りませんが、これからの参考にしていただければ幸いです。今回は、今、中国で起きている休日消費の変化についてご紹介します。
コロナ終息でも旅行には慎重
中国の新型コロナの感染拡大は、3月の頭には終息が見え、4月の頭にはほとんど新規感染者が出ない状況になりました。それ以来、小さなクラスターは起きていますが、第2波と呼べるほどの大きな感染拡大は起きていません。
世界で最初に新型コロナが感染拡大をした震源地でありながら、世界に先駆けて終息を迎えています。
それから半年、大きな打撃を受けた旅行業が復活をしています。10月1日の国慶節(建国記念日)と中秋節が重なり、8日までの8連休。金曜日の9日を休んでしまえば、11日間が休みとなるゴールデンウィークです。コロナ禍の影響もかなりなくなり、この大型連休は多くの人が旅行をすると見られていました。
しかし、文化旅行部の発表によると、旅行に出かけた人は5.5億人でした。これは大きな数字に見えますが、昨年の国慶節での旅行人数が7.82億人ということを考えると、意外に控えた人も多かったようです。
日本の報道では、すっかりコロナのことなんか忘れて、3蜜三昧の観光旅行を楽しむ中国人という文脈での報道がされていますが、実際は意外に慎重なようです。
例えば、上海市を始めとする大都市の小中高校では、生徒学生に向けて、国慶節期間に省外などの長距離旅行に行かないように勧告をしています。もし、必要があって遠方に行った場合は、一定期間、帰宅後の自宅隔離を求めています。学校の教師や公務員の一部の職種でも、省外への旅行を制限しています。
文化旅行部は慎重な施策を打ち出していて、旅行者にはマスクの着用を求めています。また、各地の観光地には、最大収容人数の75%までしか観光客を受け入れず、WEBでの事前予約制を実行することを求めています。さらに、観光地に入る時には体温測定を行い、発熱をしている人を入れないようにも求めています。
私個人も、この慎重さは少し意外でした。国内のコロナ感染は終息をしているとはいうものの、空港検疫ではまだ毎日10人程度の陽性患者が確認されていること。また、中国政府は現在「無症状感染者」の捜索に力を入れていて、数十人単位で見つかることもあることから、再燃させないことに神経を尖らせているのかもしれません。
Next: 中国で起きた変化は日本でも起こりうる。休日消費はどう変わった?
家族旅行が増加、キャンピングカーや民宿が人気
前述の通り、中国人は旅行に対して、あるいは新型コロナの感染拡大に対して、私たちが想像するより慎重なようです。中国では、旅行の季節というのは1月下旬の春節休み、5月頭の労働節の連休、そしてなんと言っても大きいのが国慶節の黄金週間です。毎年1週間の休みがあり、しかも旅行にとっては暑くもなく寒くもなく最もいい季節。紅葉など景観も最も美しい時期です。
今年の春節は、武漢では都市封鎖が行われ、他の都市でも外出制限が行われたため、旅行らしい旅行をする人は皆無といってもいい状況になりました。そして、4月の頭には終息を迎え、5月の連休で旅行が回復するかと思えば、意外に慎重で、都市内の観光地、都市郊外の観光地に日帰りを中心とした短期旅行をする人が多く、しかも、移動手段はマイカー、レンタカーが主流となりました。そのため、高速道路は各地で大渋滞をしましたが、旅行業としては回復とは言えない状況でした。
そして、誰もが期待をしていた国慶節の大型連休で、確かに飛行機や高鉄に乗っての遠距離の旅行が復活をしましたが、先も触れたように慎重な人も多く、力強い回復とはとても言えない状況です。
この国慶節の大型連休で目立ったのは「家族旅行」でした。学生は旅行の制限を受けていることも多く、民間企業でも社員旅行、グループ旅行はしづらい空気があります。そのため、団体旅行が大きく減り、旅行の中心は家族になりました。特に目立つのが小さな子どもを連れた若い夫婦です。
新しい傾向として定着をしたのが、民宿とキャンピングカーです。民宿というのは、観光地にある民家が内装を改造して宿泊できるようにしたものです。多くは歴史のある古民家で、部屋が4つから大きくても10個程度です。中には築何百年の歴史をもつ古民家もあります。普通であれば見学をするような伝統のある民家に泊まることができ、そこで土地の料理をいただくというものです。
子どもを連れて行くのであれば、そういう中国の伝統に触れさせたいと想いもあるでしょうし、もうひとつは、大きなホテルでは人が多く感染リスクが不安、人が多いホテルを避け、静かな民宿でゆったりとしたいなどの理由があるのだと思われます。
旅行予約サイト「飛猪」(フェイジュー)では、民宿の予約数が昨年の国慶節と比べて68%増となりました。また、観光地の入場チケットで親子割引の利用数も昨年から30%増えています。
さらに、キャンピングカーのレンタル数も昨年から77%増えています。これも、親子が多く、人に触れることなく移動して、宿泊したいということなのだと思われます。
民宿やキャンピングカーは、数年前から静かなブームになっていましたが、この国慶節で一気に定着をした印象です。今後も、家族旅行の選択肢のひとつとして定着することになると見られています。
荷物は軽量化、必要なものは現地調達が主流に
もうひとつの大きな変化が、旅行の荷物を減らすという傾向です。
マイカーで旅行する場合はともかく、飛行機や高鉄(中国版新幹線)では、荷物を減らすという傾向が進んでいます。以前は、大型スーツケースに大きなビニールバッグ+リュックというのが定番スタイルでしたが、今では中型スーツケースにリュックになり、若い人たちは、女性は機内持ち込み可能な小型スーツケース+リュック、男性はリュックのみというスタイルもかなり増えてきました。
中国の空港や駅は、ものすごい混雑で、普段の週末から超3密状態になっています。何をするにしても、行列をさせられ、歩かされ、疲れる場所です。そこに大きな荷物を持っていると、動くに動けない状態になります。
なぜ荷物を減らす傾向になっているかというと、多くの人が身軽になる便利さを考えているのだとは思いますが、空港や駅での3密から逃れたいという心理も働いているのではないかと思います。
空港、駅は日本人の感覚からすると巨大な施設で、メインの待合室や改札付近は過密状態になりますが、端のほうにいくと、人がガラガラのカフェや飲食店、誰も座っていない休憩スペースが見つかります。大きな荷物をやめて、身軽になり、3密状態があったら、避けて、人の少ないところに行く。そんな心理が働いているのではないかと思います。
荷物を減らすのはいいことですが、どうしても必要なものはどうするのでしょうか。
その答えは、現地で手に入るものは現地で手に入れることです。例えば、下着や衛生用品、洗顔用品、ベビー用品などです。観光地であっても、今やコンビニはありますし、スーパーがあることもあります。また、ECの即時配送の対応エリアになっていることもあります。
必要なものは現地調達をするというのが基本になっています。これに対して、ウーラマなどの即時配送サービスは、自宅ではなく、宿泊しているホテルに配送するサービスを始めています。観光をしている最中に必要なものに気がついたら、すぐにその場でスマホから注文。ホテルに帰った時にはすでに配達されています。ウーラマのデータによると、観光地での衛生用品とベビー用品の配達数が特に多くなっているということです。
帰りの荷物も増やさないという人が増えているようです。旅行に行けば、特産品などのお土産を買うことになりますが、今の土産物屋は多くが、淘宝網(タオバオ)などのECにも出品をしています。気に入ったお土産を見つけると、その場で買うのではなく、その場でスマホからタオバオにアクセスして、EC注文してしまいます。そうすれば、自分で持って帰る必要はなく、自宅まで配送してくれるからです。
土産物屋のほうでも、積極的にタオバオの店舗を紹介し、そちらに誘導しようとします。その場で買ってもらうと、手に持って帰れる分しか買いませんが、タオバオに誘導すると大量に買ってくれたり、ついでに他のものも買ってくれるお客がいるからです。
タオバオと天猫(Tmall)のデータによると、国慶節期間、ウイグルの焼きビーフンが72%、湖南のアヒルの味噌漬けが52%、四川のウサギの頭が34%も昨年と比べて売上が増加しました。多くが自宅からではなく、現地からの注文だったそうです。
Next: 観光地の行列は消滅。スマホでのチケット購入・入場予約が常識に
観光地での行列は消滅した
中国の観光地の多くが入場券を必要としています。故宮博物館や庭園のような観光地ばかりでなく、日本でも有名な「烏鎮」(ウーチン)のような水郷なども村全体が公園化されていて、入場券が必要になります。
今年は、文化旅行部の指導もあり、このような観光地の多くが、入場者数の制限を行い、事前予約制を採用しています。そのため、以前はどこの観光地でも当たり前だった、チケット売り場での長い行列というものがなくなりました。スマホでチケットが購入できるようになったからです。入場制限数に達した場合は売り切れとなります。
この事前予約制は観光客からの評判もいいようです。なぜなら、朝、ホテルで、あるいは観光をしていて、ある観光地に行きたくなったら、スマホを開いて、チケットが購入できるかどうかを確かめます。チケットを購入しておけば、到着してからすぐに入れるのです。そして、中に入っても、以前のような過密の混雑はありません。
以前は、スマホでチケットが買える観光地は多くはなかったので、現地に行ってみるしかありません。チケット売り場では長い行列ができ、故宮博物館のような有名な観光地になると、国慶節期間であれば、チケットを買うだけで1時間、2時間は普通のことでした。
そして、中に入れば、芋の子を洗うような混雑で、観光どころではありません。この状態が、奇しくも感染防止の制限により大きく改善されました。多くの観光客が、新型コロナの不安がなくなっても、事前予約制を続けてほしいと考えていることから、今後は、観光地に行くのには事前にスマホでチケットを買うというのが当たり前になる可能性があります。
映画チケットの予約枚数が増加
旅行に行かない人々は、国慶節をどう過ごしたのでしょうか。
ここでも行動単位は家族のようです。家族で映画を観に行くというのが今年の国慶節の典型的な過ごし方だったようです。映画チケットの予約サービスなどを行っている「アリババ大文娯」のデータによると、3人以上の家族チケットの売れ行きが昨年の国慶節から68%も増えました。
特に注目されたのがアニメーション映画『姜子牙』のヒットです。姜子牙とは太公望のことであり、中国神話アニメーションシリーズの第2作にあたります。アクションシーンも多く、親子で楽しめる映画です。
この『姜子牙』は、本来は春節休みに公開される予定でしたが、コロナ禍により公開延期となり、この国慶節でようやく公開されることになりました。多くの人にとって、久々に映画館で見る映画であり、子どもたちにとっては長い間楽しみにしていた映画でした。昨年の国慶節の映画館のチケット販売数から、なんと13.54倍に激増するという回復ぶりを見せました。
映画界は今、選択の時期を迎えています。春節休みは日本のお正月と同じように、多くの映画が公開される時期で、多数の映画が制作されていました。しかし、新型コロナの感染拡大で劇場公開ができなくなり、バイトダンスが映画の上映権を買い取り、中国版Tik Tokなどでのオンライン公開に踏み切ったのです。『ロスト・イン・ロシア』や『クレージー・エイリアン』など、公開された映画は12本にも及びます。すべて無料で見ることができ、Tik Tokを始めとする動画配信アプリの利用者数を大きく伸ばすことになりました。
しかし、この事態に映画業界は危機感を抱きました。もし、新作映画までスマホやタブレット、スマートテレビで見る習慣が定着してしまったら、映画館は死んでしまうからです。『姜子牙』はこのような流れに乗らず、辛抱強く、劇場公開できる時期を待ちました。それがこの大ヒットに結びつきました。
Next: 飲食は“半調理品”の時代へ。ショッピングの変化に日本も追従するか?
飲食は“半調理品”の時代へ
映画館は席が近く、密集状態になりますが、マスクをしたまま鑑賞するため、感染リスクはさほど高くありません。一方で、飲食店は、食事をする時にマスクを外し、食後におしゃべりをするため、感染リスクが低いとは言えず、なかなか客足が戻りません。
そのため、飲食店、スーパー、生鮮ECは、半調理品の販売に力を入れています。半調理品は、火鍋であれば、具材とスープがセットになったもので、冷凍だったり、ビニールパックだったり、形態はさまざまですが、鍋に開けて、火を入れるだけで食べられるというものです。この他、有名レストランの料理なども、火にかけるだけ、温めるだけ、具材をひとつ追加するだけという半調理品を発売し、これが歓迎されています。
つまり、飲食店に行って食べるのではなく、自宅で簡単に調理して、本格レストランの味を楽しみたいと考える人が増えているのです。
この半調理品は、生鮮ECや新小売スーパーの戦略商品になってきています。生鮮ECとは、野菜や肉、魚といった生鮮食料品をスマホで注文すると、30分から1時間で配達してくれるというサービスです。なぜ短時間で配送できるかというと、前置倉という仕組みを採用しているからです。前置倉というのは、小さな冷蔵施設を備えた倉庫のことで、これを配達エリアの中に多数点在させ、そこから配達を行うので、短時間で配送ができるのです。大体、ひとつの前置倉庫が半径2〜3kmのエリアを担当するのが一般的です。
この前置倉は、配送時間の短縮には大きな効果をもたらしますが、ひとつ大きな欠点があります。それは商品点数を増やすことができないということです。前置倉は大きくはなく、担当する顧客数も数百人から数千人規模です。この規模だと、よく売れる食材しか倉庫に置くことができません。珍しい食材を置くと、注文が入らなければ、廃棄ロスが出てしまうからです。
そのため、生鮮ECで注文できる食材というのは誰もが買うものばかりになってしまいます。日本で言えば、キャベツと大根と豚肉だけ。ミツバは置いてあるけど、パクチーは置いていない。キムチと浅漬けは買えるけど、味噌漬けは買えないというようなことが起こります。
平日の夕食をささっと作って食べるというような場合は、生鮮ECは非常に便利です。しかし、休日に少し変わった料理を作りたいとなると、生鮮ECだけでは食材がそろわずに、結局大型スーパーに買いにいかなければならなくなるのです。
この問題が半調理品で解決されました。休日でも半調理品を買えば、あとはサラダなどのサイドディッシュを添えればいいだけになるので、生鮮ECだけで買い物が済み、なおかつ、平日とは違った少し豪華な食事ができるようになります。半調理品なので、調理の手間もほとんどありません。
既存スーパー、生鮮EC、新小売スーパー、さらには飲食店もこの半調理品には力を入れていて、なおかつよく売れています。飲食は、飲食店に行って食べるものではなく、自宅で食べるものになっていくかもしれません。
手ぶらショッピング&フードデリバリー
都市で休暇を過ごす定番がショッピングです。ショッピングモールや百貨店に行き、いろいろな商品を見て、買い物を楽しむ。休日の定番です。
ここにも変化が起きています。それは、手ぶらショッピングです。今、百貨店やモールで注目されているのが「到家サービス」です。当メルマガでも以前に紹介しました。スマホで注文すると、1時間ほどで自宅に配達をしてくれるサービスです。
国慶節の間、モールや百貨店には賑わいが戻ってきましたが、買い物をしても自分で持って帰らず、この到家サービスを利用して、自宅に配送してもらう人が目立ちました。今年の国慶節のモールや百貨店では、両手にたくさんのショッピングバッグを持った買い物客がめっきり少なくなったそうです。
また、カフェではなく、公園などの屋外スペースでお茶をするということも当たり前になってきました。ウーラマによると、軽食や飲料を自宅や職場以外の場所を指定してフードデリバリーを注文した数が、国慶節期間は全国で5月の連休の2倍になり、特に北京では5倍近くに増えました。
カフェも室内であるために、なんとなく避けたい気持ちがあるばかりでなく、何人かでそれぞれ好きなものを注文できることがいいのだそうです。カフェに行けば、そのカフェのメニューから選ぶしかありませんが、公園のテーブルなどであれば、それぞれが好きなものをそれぞれにフードデリバリーして楽しむことができます。そうして、何時間もおしゃべりをしてのんびりするという光景がよく見られたそうです。
Next: コロナ禍で起きたサービスの逆転現象。中国の現状は、日本の未来か
コロナ禍で起きたサービスの逆転現象
このような休日消費の変化からどのような傾向が見出せるでしょうか。
いろいろな解釈があるかと思いますが、私が感じるのは人と商品、サービスの逆転現象です。人が何かの商品を手に入れたい、サービスを受けたいという場合は、まず、人の方がその商品を販売している場所、サービスを提供している場所まで移動しなければなりませんでした。
しかし、テクノロジーが広がり、もはや観光地でもデリバリーを利用することで、都市と変わらないサービスが受けられるようになっています。人は移動する必要はなく、商品やサービスの方からやってくる移動コスト0の世界になろうとしているのです。
この違いは、商品やサービスを提供する側の意識改革が必要になります。以前は、百貨店はたくさんの商品を揃えて、立地のいいランドマークとなるような目立つ場所で待っていればお客さんがやって来てくれました。ショッピングモールは、家賃は高いものの、何もしなくてもお客さんがやって来てくれました。しかし、数年前からこのような「待ちのビジネス」の不振が目立つようになり、それはコロナ禍で決定的になりました。
今、生き延びているのは、商品やサービスの方からお客さんのところに移動する「攻めのビジネス」です。新小売や到家サービス、ECなどがそれにあたります。人は移動をまったくせず、自宅にいて、街中と同じサービスを受けられるようになっています。移動をするのは、新しい体験、心地よい体験を求めるときだけです。
ここに何かヒントが隠されているのではないでしょうか。
先ほど触れたお土産物屋の例がわかりやすいと思います。観光客は別にお土産物屋に行くために移動をしてきたのではありません。観光スポットでなければ得られない体験をしに移動してきて、そのついでに土産物屋に寄っただけです。なので、珍しい特産品を食べてみたいという体験には興味を惹かれますが、荷物を持って帰るという煩わしいことはしたくありません。
これは日本人も同じです。観光地に行くと、果物や蟹やエビなどの特産物を買いたいとは思うけど、電車できているので持って帰るのは嫌だ。あるいは帰るのは数日後なので、日持ちがしないものを買いたくない。ところが、お店側が「全国発送承ります」と宅配に対応をしてくれていれば、購入して、帰宅日に合わせて発送してもらうという人は多いのではないでしょうか。
少し極端に言うと、人はもう商品やサービスを得るためには移動してくれません。体験を求める時だけ移動をします。それぐらいに考えたほうがいいのではないかと思います。
ということは、商品やサービスしか提供しない路面店というのは、もうお客さんは来ないと考えたほうがいいかと思います。何らかの体験を提供しなければならない。では、どんな体験なら人は移動して来てくれるのか。今、その体験の開発競争が始まろうとしているのだと思います。
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- vol.041:休日消費に起きている変化。キーワードは即時配送、到家サービス、家族(10/12)
- vol.040:進化が止まらないライブコマース。自動車、マンション、ザリガニまでも(10/5)
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※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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