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株か債券かGoldか?米大統領選後を見据えるシーゲル博士とガンドラック氏=江守哲

米大統領選は混とんとしており、どちらが勝っても米国は沈む方向である。この情勢で、私たち個人投資家はどう資産配分を行えばいいのか?シーゲル博士と債券王ガンドラック氏がそれぞれ興味深い見解を述べている。(『江守哲の「投資の哲人」〜ヘッジファンド投資戦略のすべて』江守哲)

本記事は『江守哲の「投資の哲人」〜ヘッジファンド投資戦略のすべて』2020年10月19日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方はぜひこの機会に、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:江守哲(えもり てつ)
エモリキャピタルマネジメント株式会社代表取締役。慶應義塾大学商学部卒業。住友商事、英国住友商事(ロンドン駐在)、外資系企業、三井物産子会社、投資顧問などを経て会社設立。「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」。商社・外資系企業時代は30カ国を訪問し、ビジネスを展開。投資顧問でヘッジファンド運用を行ったあと、会社設立。現在は株式・為替・コモディティにて資金運用を行う一方、メルマガを通じた投資情報・運用戦略の発信、セミナー講師、テレビ出演、各種寄稿などを行っている。

米大統領選は混とん。どちらが勝っても米国沈没へ

市場の最大の関心事になっている米大統領選だが、共和党候補トランプ大統領と民主党候補バイデン前副大統領は15日夜、テレビ局が中継して個別に開かれた有権者との対話集会にそれぞれ参加した。トランプ氏は、新型コロナウイルス対応をめぐり司会者と激しいやりとりを展開し、22日に予定されるバイデン氏との最後の討論会に向けて攻めの姿勢を印象付けた。15日は当初、第2回討論会が予定されていたが、トランプ氏のコロナ感染で中止になった。

代わりにフロリダ州で開かれたNBCテレビの集会に参加したトランプ氏は、20万人以上の死者を出したコロナとの闘いに関し、「負けてもおかしくなかった。私たちは200万人の命を救った」と強弁した。集会では、司会者のサバンナ・ガスリー氏から9月の第1回討論会の際にコロナ検査を受けたかどうか再三追及されたが、「したかもしれないし、しなかったかもしれない」とはぐらかした。

トランプ陣営は集会後の声明で「バイデン代理人のガスリー氏の攻撃を巧みに処理し、打ち負かした」とアピールした。相変わらずの、いい加減さである。

トランプ氏のコロナ対応の誤りを一切認めようとしない姿勢には「入院前と何ら変わらない」という評価が目立つ。トランプ陣営は最近、ホームページに「大統領はコロナを粉砕した」という見出しと共にボクサー姿のトランプ氏のイラストを載せ、献金を呼び掛けている。

一方、バイデン氏はペンシルベニア州でABCテレビの集会に参加。トランプ氏のコロナ対応に関し「パニックを起こしたくなかったと言うが、パニックを起こしたのは彼だ」と厳しく指摘した。「大統領の言葉は重要だ。彼がマスクをばかにすれば、人々は着用の必要ないと思ってしまう」と非難した。

トランプ氏のきわめて無責任な発言が、これまで以上にエスカレートしている。聞くに堪えない内容だが、バイデン氏も明確な方針が見えてこない。

いずれにしても、どちらが大統領になっても、米国の行く末は決まっている。米国沈没に向けて、着々と進んでいくだろう。そのためには、やはりトランプ氏の再選が必要である。最終的にそのような結末になるものと考えている。

ちなみに、今回のそれぞれのタウンホール形式の集会は、テレビ視聴率でバイデン氏に軍配が上がったようである。芸能業界誌バラエティの暫定集計によると、視聴者数はバイデン氏が1,200万人を超えたのに対し、トランプ氏は約1,040万人だったという。

NBCテレビは、ABCテレビがバイデン氏の集会の放映を決めた後に、同じ時間にトランプ氏の集会を放映すると決定。有権者はどちらの中継放送を視聴するか選択を迫られたが、トランプ氏の発言をいまさら聞いても意味がないと考えた有権者は少なくなかったようである。

株式と債券、最適な配分は?シーゲル教授の見解

ジェレミー・シーゲル教授が、米国の政治・経済の先行きを予想し、株式と債券の配分について解説している。シーゲル教授は「トランプは後戻りできない。何か選挙を動かすことをやらざるをえない。両者が努力しており、合意が成立しつつあると考えている」としている。私と同じ考えである。

シーゲル教授は、1カ月後に迫った大統領選で劣勢が伝えられるトランプ大統領にとって、追加対策の見送りは考えにくいとの読みである。そのうえで、「これはプラスだが、市場に多くの流動性を供給することになる。小切手がさらに送られ、お金がさらに配られ、財政刺激策が拡大する」としている。

シーゲル教授によると、追加財政支出は経済と株式市場にとって良いことだが、債券市場にとって悪いこととしている。

シーゲル教授は、こうした展開をコロナ危機の初期から予想していた。特に債券市場について強い警告を発してきた。40年近く続いた米国債市場の強気相場が今年終焉すると言い続け、その考えは今も変わっていない。もちろん、株式に強気の見方も変わっていない。

Next: シーゲル教授「30〜40年間で投資する場合、株式を100%にするべき」



「若い人たちは100%株式に配分し、よく分散すればよい」

シーゲル教授は「私は30〜40年間で投資する場合、株式を100%にすべきと言ってきたが、たくさんの人が短期のボラティリティを心配している。投資ポートフォリオについては、投資のホライズン次第である。さらに年齢も重要である」としている。そのうえで、シーゲル教授は、年齢層ごとの資産配分について説明している。若い世代は、基本的に100%株式にすべきとしている。

シーゲル教授は「現水準では債券は誰のためにもならず、若い人たちには何の機能も与えない。若い人たちは短期のボラティリティなど気にせず、100%株式に配分し、よく分散すればよい」としている。

一方、高齢者は「債券はいくらかヘッジになる」とし、「短期的にはマイナスのベータによるクッション、短期的にはボラティリティの回避になる。株式60:債券40をやめて、75:25にすべきだ」としている。シーゲル教授は株式に強気だが、大きな下落が起こる可能性もゼロではないと見ている。高齢者にとって、そのとき下げが限定される債券には意味があるという考えである。株式の場合、理論的には株価ゼロまで失いうるからである。

債券は悲惨な結果になる?

ただし、シーゲル教授は「超長期の投資であれば、一度下がった株価がきっと戻ってくる」と考えているようである。

実際、米国株式市場全体で見れば、経験的にこの種の予想は100%的中してきた。一方、債券は、超長期サイクルが金利上昇に転じるのであれば、特に長期債で長い間、劣悪なパフォーマンスが続くことになる。

そのため、シーゲル教授は「投資ホライズンが長期なら、債券は悲惨な結果になるだろう。この先、経済とインフレが回復すれば債券に脅威となる。今後、極度に劣る資産クラスとなり、下位に転落するだろう」としている。

私もまったく同じ考えであることは、これまで解説してきたとおりである。シーゲル教授の発言を肝に銘じておこう。

Next: 米株は18か月以内に破裂?「債券王」ジェフリー・ガンドラック氏の見解



ガンドラック氏の見解

「債券王」のダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック氏は、米国株が大幅な下落を迎えるとし、その後の深刻な不振を予想している。

ガンドラック氏は「株式市場は18か月のうちに激しく破裂する。もうしばらく回避したいのだろう。次のメルトダウンが起これば、米国はパフォーマンスが最悪の市場になるだろう。その大きな要因はドル安である」としている。

ガンドラック氏は近年、ドル安と米国株市場の深刻な不振を予想してきた。コロナ危機では株式の空売りで収益を上げたとされているが、その後も戻り局面での空売りを公言していたが、弱気な見方を続けており、ポジションも維持しているようであれば、大きく損失を出している可能性がある。

そのガンドラック氏は、10月に入ると、資産を4つに配分することを奨めている。高格付債券、株式、金、現金に4分の1ずつというものである。どこかで聞いた話である。まさに、私が勧めてきた配分に近い。ガンドラック氏は、「今では資産の25%を金で持つことが、バカげた考えでなくなった。また、25%を現金で持つのもバカげたことでない」としている。長期投資の先としての米国株を信じる人たちには、長い間、株式と債券の割合を60:40で保有するポートフォリオが奨められてきた。これは、シーゲル教授も指摘している点である。

しかし、これと比べてガンドラック氏の推奨は大幅に株式が少なくなっている。また、金が25%も入っている。ちなみに、私は3割を金で保有することを勧めており、ガンドラック氏のほうが配分比率は低い。ガンドラック氏は、市場環境の変化がこうした配分を正当化するとしている。ガンドラック氏は、「それほど結末に潜在的なテール・リスクが存在し、かけ離れた結末があり得る。したがって、このバーベル型の資産配分の考えが必要なのである」としている。

ガンドラック氏は、リスク資産がさらに上がる可能性を否定しているわけではない。したがって、株式ポートフォリオをゼロにしたり、ショートしたりまですることは奨めていない。一方で、株価が大きく下げたり、インフレが昂進する可能性も否定していない。そのため、株式の比率を抑え、金を入れることにしたのであろう。株式が少ないのだから、ガンドラック氏の市場見通しはやはりベアということになる。

ガンドラック氏は、自身が進める資産配分の趣旨について、「このトレードは次の買い場でのトレードを待つためのものである。いま、私はとても低いリスクしかとっていない」としている。この発言は、投資家が強気一辺倒ではないことを窺わせるものであろう。ただし、注意したいのは、市場にベアな見方をする場合も、リスク資産へのエクスポージャーをゼロにはしていない点である。

市場の先行きが心配として、株式のエクスポージャーをゼロにしてしまうのは、悲観的な見方をする投資家の悪い癖である。特に日本の投資家にそのような傾向があるように感じられる。肝に銘じておきたい。

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本記事は『江守哲の「投資の哲人」〜ヘッジファンド投資戦略のすべて』2020年10月19日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方は、バックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。本記事で割愛した米国市場日本市場為替、原油各市場の詳細な分析もすぐ読めます。

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image by:Evan El-Amin | Ron Adar / Shutterstock.com

江守哲の「投資の哲人」〜ヘッジファンド投資戦略のすべて』(2020年10月19日号)より一部抜粋
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