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偏向報道ありきの米大統領選、トランプはもう正攻法では勝てない=吉田繁治

混迷の極致にある大統領選挙の予想をお伝えします。米国メディアの多くには支持政党があり、偏向報道が普通です。世論調査もかなりブレます。現状ではバイデン有利との見方が優勢ですが、トランプに逆転の道はあるのでしょうか?(『ビジネス知識源プレミアム』吉田繁治)

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※本記事は有料メルマガ『ビジネス知識源プレミアム』2020年10月21日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

支持政党を持つ米国メディア

CNNのニュースそしてMCや専門家によるコメントを見ると、異例な3つの特徴に気がつきます。

日本の放送メディアは、隠れた党派性はあっても、表面では薄めています。党派性のあるメディアは「赤旗」や「公明新聞」でしょう。

これらと同じように事実上、民主党支援メディアになっているのが、大手メディアであるCNNです。衛星放送でよく見ますが、トランプが言う「メディアはフェイク・ニュースを流す」にも、三分の理があると感じます。大手メディアはこぞって、トランプ非難のメディアだからです。週刊誌の『NEWS WEEK』も、CNNより激しくはなくても、民主党寄りです。

(1)CNNで、大統領選挙以外のテーマがニュースになることは、ほとんどない(ごくわずかにスポーツ・演芸)
(2)トランプの発言に対し、CNNのキャスターと外部専門家は、ほぼいつも、反対の意見を述べるか、非難している
(3)バイデンの発言に、反対意見を述べて非難することは少ない(当方の記憶にはありません)

日本では「激しい偏向」とされるでしょうが、独立性の強い民間資本の米国メディアには、党派性があります。

支持率に地域格差も

ニューヨーク州とカリフォルニア州では、選挙民にも、民主党支持者が圧倒して多いのです。共和党支持が多いのは、海のない内陸の農村部、工場地帯の州(白人の現場労働者が多い州)です。

日本には、支持率の地域格差はあっても、米国よりは薄いでしょう。米国は国土が広く、州間の距離は離れています。内陸の大陸に行くと、NYやカリフォルニアとは「別の米国の風景」があります。こちらが本当の米国とも言えるNYやLAは、「アメリカではない国際都市」と米国人は言います。

米国はともかく巨大です。大陸をバスで移動すると、限りなく続く、家のない平原の荒地。中国と日本が、陸続きと思い込んでいる人も多い。中国人・韓国人・日本人の顔は同じに見えるようです。町中が芝生で覆われ、白い戸建て住宅。ショッピングセンターの2階などが、公共的な集会所です。町名には、スプリング・フィールドなどの、全米で同じものが多い。こうした地域に、トランプ支持が多いようです。

Next: 世論調査にも偏りアリ。大統領選は佳境、現在の情勢は?



世論調査にも偏りアリ

CNNとは違い、共和党が地盤の保守系メディアは「FOX」や「ABC」、世論調査では「トラファルガー・グループ」です。世論調査でも、日本の読売・産経新聞(自民党寄り)と朝日・毎日・東京新聞(反自民党)よりはるかに強い偏向があります。

電話調査では最大の多数派になる、無党派層の「どちらでもない」と答えた人に対し「そこをあえていえば、どの政党の支持ですか」と押して訊ねると、そのときの与党側への支持が、3~5ポイントくらい増えることが多い。自民党の支持率が、いつも一番高い読売新聞は、この方法をつかっているでしょう(未確認ですが)。メディアも政治的です。

日本で取り上げられる米国報道は、最大手メディアのCNN、革新系のNew York Timesやワシントン・ポスト、中立性が見える金融・経済のWall Street Journal(当方は購読)をもとにすることが多いと思われます。

米国全体の支持率の差である8~10ポイント(バイデンの優勢)から、変わらず「バイデン有利、トランプ不利」を伝えています。

2016年の、クリントン対トランプでも、米国と日本の多くのメディアは民主党系のメディアに頼って、「クリントン(夫人)有利」を伝えて間違えたのです。

「クリントン有利」と報道された2016年の事例

2016年には、全米の世論調査では、5ポイントから7ポイントくらいの「クリントン有利」でした。

州単位での、選挙人の獲得の結果は、トランプが306名(2名がトランプ投票を拒否)、クリントン232名(5人がクリントン投票を拒否)であり、トランプの圧勝でした。

このとき国民の投票数では、クリントンが200万票(1.7%)上回っていました。事前の世論調査の5ポイント差は、選挙結果に対して過大だったのです。

<アンケート回答者に偏りが出る>

実際に投票する人(内陸部の共和党支持の投票率が若干高い)と、調査に答える人には、サンプルの差異があります。調査は無作為抽出で行われるので、無党派と民主党支持が多い都市部人口のアンケートが増えます。

サンプリングする世論調査では、都市部人口の対象が、多くなります。共和党支持が少なく、民主党有利が出やすい。世論調査では3~5ポイント分、民主党支持が多いと出やすいでしょう(当方の推計)。世論調査には答えても、投票には行かない無党派層がいるからでもあります。

<投票率の低さ:44%は棄権>

2016年の投票率は、56%でしかなかった。日本の衆院選挙の投票率も53%でした(2017年9月:前回)。米国の国政への投票率は日本とほぼ同じです。両国とも、投票に行かない無党派が増えています(約40%~45%)。

(筆者注:ギリシアでは、国政選挙は国民の義務とされ、棄権すると罰金が課される。他にも義務投票の国は、オーストラリア、シンガポール、スイス、タイ、ベルギー、ルクセンブルグ、アルゼンチン、エジプト、トルコ、ブラジル…など多数です。イタリア、メキシコ、フィリピンでは罰金がなくても、義務制です。無党派が40から45%といわれる日本でも、投票を義務制にすればいいと思っていますが、自民党は好まないでしょう。)

Next: 投票義務制にすれば政治が動く。トランプ再選はかなり困難?



投票義務制にすれば政治が動く

義務制にすると、政治の民主性は強化されます。無党派の支持を大きく減らす政府官僚の公文書偽造などは、しにくくなるでしょう。

与党の自民党と、組織票を持つ政党は、投票率が100%に上がると、組織票の重みが半分以下に下がる義務制には、反対するでしょう。

米国でも、無党派の投票率が高くなったときは、民主党が有利になります。無党派中の共和党支持は、民主党よりは高くないからです。

2020年 米国大統領選の行方は?

今回にあてはめると、世論調査でバイデン支持が52ポイント、トランプが48%、両者に約4ポイントの差があるとき、実際の投票は、ほぼ50:50になるでしょう(当方の判断)。

このときは、州単位の選挙人の獲得では、対クリントンの4年前のように、トランプが上回って再選される可能性が高いと言えます。

しかし、直近の最新の世論調査からは、違った結果が見えてきます。バイデン支持が51.3%、コロナ回復後のトランプが42.4%であり、8.9ポイントの差です(比較的中立のReal Politics:調査機関平均を示す)。
参考:RealClearPolitics – Election 2020 – General Election: Trump vs. Biden

(筆者注:この調査のあと、バイデンの「ウクライナ・ゲート」の証拠となるメールの暴露により、選挙人を決める、問題の激戦区〈特にフロリダ〉でのトランプとバイデンの支持率が逆転しつつあります)

<全米の世論調査の結果と、選挙人の獲得の関係>

クリントンが相手ときは、世論調査では5ポイントくらいの差でした。これが、投票をした人の票数では1.7%の差に縮まりました。

州単位で勝てば丸取りになる制度の選挙人の獲得では、以下の結果でした。

・人口密度が低く、海のない内陸部の州に強い共和党のトランプが306名
・東西の海岸部の、人口の多い都市部に強い民主党のクリントン232名

現在の8.9ポイントという差が投票日まで続くと、投票数の差ではバイデンが数百万票(3%~4%:400万人から500万人)、上回る結果でしょう。

こうなると、選挙人の獲得数でも「トランプが上回ることは難しい」でしょう。

Next: 株価の反応は「トランプ危うし」を示している



株価の反応は「トランプ危うし」を示している

9月10日までは上がってきたNYダウは、それ以降の1週間は下落の傾向を示しています。「トランプ危うし」という投資家の判断でしょうか。週間の傾向ですから、すぐに逆にもブレます。短期の株価指数の動きには、その日の短期売買額が絡むだけであり、経済や政治指標からきたものではないからです。

(1)同じ傾向が3週から4週続くとき、経済・金融が絡んでいる
(2)それに、ほぼ3か月サイクルの、先物、オプションの取引が絡む

20年4月以来の6か月間(半年)、世界の株価を押し上げている世界の中央銀行の同時マネー増発は「政治的」なものです。政府に動かされる中央銀行が国債、米国では住宅証券のMBS、社債等の債券を会い上げて、マネーを供給し、そのマネーが銀行を経由して、株の買いに流れているということです。

つまり、実体経済の企業純益とは離れた上空にある「コロナ金融バブルの株価(価格の約30%)」でしょう。

NYダウ 日足(SBI証券提供)

世論調査での支持率の差異

バイデンとトランプの8.9ポイントの差(全国世論調査の最新の結果)は、逆転には、現状では大きすぎるように見えます。

トランプ側は、獲得選挙人数での逆転があり得る、5ポイント以下の差にするためには、3ポイント以上、無党派世論の支持を増やす選挙戦略が必要です。

ところがReal Politicsの調査での、バイデン支持とトランプ支持は、5%に縮まる傾向はまだ見えません。逆に、差の拡大傾向が見えます。

「トランプ再選」は、現在の情勢では、難しいように見えます。

トランプは、11月中旬の「オクトーバー・サプライズ」を作る必要があります。バイデンに不利な決定的情報を出すことです。

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1. バイデンのウクライナ・ゲート(チャイナ・ゲートもあります)
2. ハンター・バイデンのメールという「証拠」が出てきた
3. 問題は、メデイアの対応だが…
4. バイデン・オクトーバー・サプライズの影響が出てくる
5. 【補論】フェイスブックの、システム開発資金の淵源
6. 現在の支持率と、今後の展開の予想
7. トランプ、バイデンのどちらが勝っても、起こること
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  • 世界の政治・経済を決める大統領選挙の直近予想(10/14)
  • トランプのコロナ感染という珍事(10/7)

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  • 金融商品の価格を先導するデリバティブ:(9/9)
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※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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