伝説の暗黒プロデューサー康芳夫、降臨。マフィアに殺されかけた猪木アリ戦ほか、昭和のウラ歴史を激白

 

アリ×猪木戦の裏側で繰り広げられたアメリカンマフィアとの交渉

-康さんが今までやられてきた、アリ×猪木戦、ソニー・ロリンズやトム・ジョーンズの招聘、アラビア大魔法団等々、それらこそ鬱屈した社会を軽やかに凌駕、突破する企画に思えます。

 半分ジョークなんだけど(笑)。勿論行きづまった超高度管理社会にくさびを打ちこむ目的はあった。

-ブラック・ジョークと云うには大き過ぎる企画ばかりですが(笑)、中でも特に苦労されたものは?

 やっぱりそれはモハマッド・アリだろうね。時間、お金もかかったし、マフィアとの処理の問題とか、語り尽くせないほどの色んなことがあって、さすがのオレも一時は肉体的、精神的に使い果たして。

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-康さんがそんなにまで、なられた。

 ギリギリのところまできたよね。それはやっぱり、アンダーマネーの問題。ボクシング連盟との対決。マフィアとの交渉とか。だからオレも、便宜的にモスリムに入信し、突破口を見附ようとした。

-そこからなわけですから、長い道程です。

 オレは別に信者でも何でもないから、言ってみれば疑似モスリム(笑)。でもその時にね、彼らの主張にもなかなか面白いことがあることがわかって。

-そんな過程も、大きな壁を突破するための一つの手段だった。

 いわゆる、「目的のためには手段を選ばず」というね。まあ、一種のマキャベリ的な発想で。

-そして一方では、親交の深かった勝新太郎さんとNYの賭博場で、命からがらの事態に巻き込まれたり。

 あれは本筋とは関係ないけどね。たまたま勝ちゃんを連れてNYに行って、「モハマッドのドキュメンタリー映画を撮ったんだ」。その時に地下の賭場に連れて行ったら、たまたま警察に踏み込まれて、ホールドアップ(笑)。そしたら勝ちゃんの祇園の恋人、それは今でも元気な方ですが、彼女は縮みあがっちゃって、さすがの勝ちゃんも憮然として。だって奴ら、いきなり天井に向けて銃を撃つわけだよ。そうしながら片方の手を出して、「ハウス、ハウス」って、賭場経営者から金を巻き上げる。当時の彼らの月給が3000ドルもいかない中で、一回で1万ドルくらい抜いていくんだから、いい商売だよね。

-他に、命の危険を感じたことはありますか?

 それはね、本筋でモハメッドを呼ぶ時に、順番があるわけだよ。今度はテキサス、その次はロスでやるとかスケジュールがあって、興行のために本来は事前にアンダーマネーを支払わなきゃいけなんだけど、その金もない。そこで、うまくマネージャーに食い込もうとすると、それはマフィアに邪魔されますよね。当時興行権は彼らが握ってて、今はFBIなんかが厳しくて無理だけど、言うこと聞かない、金もよこさないとなるとすぐ撃たれちゃう。それは、本当に恐かったね。ヤツらは本当に問答無用(笑)。そこはオレ百戦錬磨、うまく切り抜けたけど、要は金を払えばいいんだけどそれがなかったから、あの手この手で苦労しましたよ。

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ついでに、日本のボクシング・コミッションは当時、記者会見で「絶対にあの康芳夫にはやらせない」と。僕は、興行ライセンスを持ってないわけだけど、最初から日本のマフィア、ヤクザ、問題にしてないんだよ(笑)。当時の日本のボクシングは圧倒的にヤクザに押さえられていて、わざと挑発的に仕掛けて、そこに金平(正紀・協栄ジム設立者)君をたてて、これがまたすごいタマ(笑)。当時ヤツに800万くらい、今の金で3千万円くらいを渡してたんだけど、それをまた抜いちゃって訴えられて、オレがそれで東京地検に呼ばれて。その時の検事はちょうど大学の先輩で、結局は有耶無耶になって、金平君もオレも処分は受けなかった。ただ、僕は最初から日本のマフィアなんて問題にしてなかった。本当に恐かったのはアメリカのマフィアですよ。

>>次ページ 康芳夫が唯一オーラを感じた大物人物とは?

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