誰が何のために…なぜかイタリアから届いた1本のオリーブオイル

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人気のイタリア食材直輸入ウェブショップ「ベリッシモ」店長の清水良二さんが配信する無料メルマガ『イタリア・スローフード食材の旅』。毎回、イタリアの美味いもの、スペシャルなグッズを知り尽くした清水さんお勧め製品を紹介してくださるのですが、今回は王道・オリーブオイルとリッチな気分になれるソープなどをレコメンド。読めば手に入れたくなること必至です。

シチリアのオリーブオイル

澄んだ空気が心地よい秋の夕暮れに、決まって思い出す風景があります。それは、シチリア島にオリーブオイルの搾油を見学しにいった時の夕焼け。古い搾油所の中、オリーブオイルが出来上がるのを最初から最後まで理解し、車に乗ろうとしたとき、建物の向こうに真っ赤な太陽が沈んで行きました。異国の地で見る夕焼けは、とても美しく心に残るものですね。

私とイタリア産オリーブオイルの接点はそれほど昔のことではありません。2001年に創業してしばらくした頃、いろいろなオリーブオイルを試しながらどんなオイルを輸入したらよいものか、と思い悩んでいた頃でした。するとある日、イタリアから私あてに国際郵便オリーブオイルが届いたのです。

それが、Frantoi Cutrera社の「PRIMO D.O.P.」というオイルでした。

PRIMO D.O.P.

PRIMO D.O.P.

美しい刻印が特徴の250mlの小さな瓶は、割れないよう梱包されていました。誰が、何のために、私なぞにわざわざ高い航空便で送ってくださったのか…? 意味もわからず、夢中でテイスティングしてみました。このときの判断が、大きなターニングポイントになるとは夢にも思いません。

送り主の方は、イタリアレストラン勤務されている日本人で、スーシェフを務めながらジャーナリスト的な活動を行われていたようでした。その記事は、たまにインターネットで拝見していた程度です。今のように様々な情報がまだ日本にあまり届いていない時代。会ったこともない私にわざわざ送ってくれたオリーブオイルのサンプル。今にして思えばあの時、ネットで情報発信を繰り返していた私のようなものに何らかの共感を抱いてくれたのかもしれません。

これまで味わったことがない、驚くべきフルーティさを感じました。フレッシュなオリーブオイル特有の、若草のような香りのすぐあとに広がる爽やかさ。口いっぱいに広がる香りはまさしく「青リンゴ」のようだったので、ホームページに商品を掲載する時に、そのフレーズを使いました。

どんなお料理にも合う素晴らしい品質に、すっかり惚れ込んでしまいました。いてもたってもいられなくなった私は、初のシチリア旅行に出かけます。前日に買付けを決めたカフェシチリアで彼らと待ち合わせ、そこから1時間半ほど離れた工場へ見学に連れて行ってくれました。

当時まだ珍しい全自動の最新マシンが1台だけ。残りは石臼でできたクラシカルな搾油機が2台、稼働していたのを覚えています。代々続くフラントイオにして、若い世代優れた製品としてコンクールを取ったことをとても誇らしげに話してくれました。自家製のドライトマトのオリーブオイル漬けが美味しかったな~。

あれから10年以上の歳月が流れ、今では最新鋭マシンが3台に増え、古い石臼の搾油機はもう姿を消してしまいました。彼らが獲得する数々のコンテストの優勝トロフィーも着実に増加。お互いビジネスの黎明期に出会った「偶然」が私たち結びつけたのです。

あの時にシチリアの赤い太陽を見に行かなかったら、「PRIMO D.O.P」は誰か他のインポーターが輸入していたかも知れない。機会をくださった彼(故人)には今も、感謝せずにはいられません。

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