傾きマンションだけじゃない。1棟扱いマンションが将来直面する問題

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横浜の傾き物件のように複数棟を繋ぎ1棟扱いとするなど、年々大型化するマンション。『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』の著者・廣田信子さんは、このような流れとなった背景と問題点について論じています。

大きくなり過ぎたマンションの問題

こんにちは! 廣田信子です。

傾きが問題となった「パークシティLaLa横浜」では、4棟といわれた建物がイクスパンションや通路でつながれた、建築確認上も区分所有法上も1棟であることを先日書きました。705戸の巨大な1棟マンションなのです。

この記事には、たくさんのコメントが寄せられました。多くは、巨大になり過ぎた1棟マンションを危惧するものでした。最近は、構造上は複数棟に見えるものを通路で繋いで1棟としている1,000戸近い大型マンションは決して珍しくありません。文字通り、1,000戸が巨大な縦にのびた1棟を形成しているタワーマンションもあります。

マンションの基本を定めた区分所有法は、昭和37年に制定されました。小規模の建物を想定して作られていた当時のドイツ法を参考にしたと言われ、重要なことは全員合意の元で行うことが基本フレームでした。

その後、日本では団地も含め比較的戸数が多いマンションが多いことから全員合意は現実的ではないというので、昭和58年の改正で4/5又は3/4の賛成で決議するという特別多数決議の考え方を取り入れられました。しかし、この改正時も、現在見られるような巨大な1棟マンションを想定してはいなかったと思います。

昭和58年の改正では、1つの敷地に複数棟が建つ団地についてもようやく規定ができました。区分所有法の枠組みは、団地においても、1つの建物ごとに、その建物を共有する区分所有者がその建物を管理するというのが基本です。と同時に、団地における一括管理(全部の棟も共用施設等も1つの管理組合で管理する)という選択も認めています。

そして、団地一括管理を選択した場合でも、建物が大規模滅失した場合の復旧や建替えは、棟ごとの特別多数決議が必要だとしています。

最近のマンションの傾き事件で、あらためて、建物の生命に係わるような重要事項は、構造上一体の棟ごとにその区分所有者の判断を尊重するという区分所有法のこだわりの意味を改めて確認しました。

しかし、最近の法改正の流れは、壊れたり傾いたりした棟を復旧する、建替えるという必要に迫られたケースより、経済的な効率からの建替えをどう円滑に進めるかという視点、すなわち、団地内の建物を全部壊し、全体を総合設計で、ぐんと床面積や高さを増した新たなものを建てるという建替えの場合を想定してきたように思います。ですから、棟ごとの決議要件は、どちらかというと建替えの足かせになるかのように扱われてきました。

2戸、3戸で1棟というテラスハウスが数十棟集まっているような団地では、極端なことを言うと、1人の反対で1棟の決議ができなないために前へ進めないそういった状況も生まれるからです。

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