パリ多発テロ後、オバマがプーチンに歩み寄った「もう一つの思惑」

 

イラン、シリア問題で協力を深めた米ロ

「このままでは、中国に覇権を奪われる!」と焦るアメリカ。

一方、プーチンにもアメリカと和解する理由がありました。ロシア経済は、「経済制裁」「原油価格暴落」「ルーブル暴落」でボロボロになっているからです。今年は、マイナス4%程度になる見通し。

現在プーチンの支持率は、約90%に達しています。しかし、このままの経済状態がつづけば、いくら忍耐強いロシア人でも、反プーチンに転じかねない

では、どうするか? アメリカと和解し、制裁を解除させ、最大のお得意・欧州との経済関係を復活させなければならない。

米ロの利害はここに一致し、ゆっくりと着実に関係を改善させていきました。両国が最初に協力したのは、「イラン問題」です。

<イラン核交渉>最終合意 ウラン濃縮制限、経済制裁を解除

毎日新聞 7月14日(火)22時1分配信

 【ウィーン和田浩明、田中龍士、坂口裕彦】

 

イラン核問題の包括的解決を目指し、ウィーンで交渉を続けてきた6カ国(米英仏露中独)とイランは14日、「包括的共同行動計画」で最終合意した。

 

イランのウラン濃縮能力を大幅に制限し、厳しい監視下に置くことで核武装への道を閉ざす一方、対イラン制裁を解除する。

 

2002年にイランの秘密核開発計画が発覚してから13年。粘り強い国際的な外交努力によって、核拡散の可能性を減じる歴史的な合意となった。

この合意は、まさに「歴史的」。そして、「国際関係」を大きく変えました。アメリカとイランの関係はよくなり、一方で、アメリカとサウジアラビア、イスラエルの関係は最悪になりました。そして、サウジとイスラエルは、逆にロシアに歩み寄っていきます。

次に、米ロは、「シリア問題」で協力することにしました。9月28日、プーチンは国連で「イスラム国」と戦う「反テロ連合」創設をよびかけます。

そして、「クリミア併合」後はじめてオバマと会談。ウクライナ問題とシリア問題について、90分話し合いました。

9月30日、プーチンは、「シリアのイスラム国空爆開始」を宣言。欧米は、「ロシアは、イスラム国だけでなく、『反アサド派』も空爆している!」と大々的に非難しました。

しかし、事実として、「イスラム国」はロシアの空爆で壊滅的打撃を受けている。そのせいで、アメリカと有志連合が2014年8月から1年間つづけてきた「イスラム国空爆」がいかにイイカゲンだったか、全世界が知ることになりました。

そして、11月13日の、「パリ同時多発テロ」。いままでロシアを非難していたアメリカも、フランスも、もう少し真剣に「イスラム国」と戦う必要がでてきた。

「クリミア併合」「ウクライナ問題」で、「ヒトラーの再来」「世界の孤児」と呼ばれたプーチン。

1年8か月後、欧米は、「クリミア」「ウクライナ」のことをきれいに忘れた。そしてプーチンは、いつの間にか「イスラム国と戦う同志」になっていたのです。

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