さっそく、中身をチェックしてみましょう。
「1位と2位が本気で戦い始めると3位以下のメーカーなんて木端微塵に吹き飛ばされる。3位以下の企業というのは不安定で脆弱な存在にすぎず、やはり小さな市場であってもナンバー1になることが大切だ」(鈴木修)
売上高で会社の規模を測ろうとする風潮を、修は一蹴する。立派な会社と評価を受けるのは売上げ規模が大きいからではない。市場シェアがナンバー1であるとか、プライスリーダーであるとかのほうが、企業の力を測る尺度として、より大きな意味がある
1998年当時、スズキとダイハツの市場シェア差は7%と大きな開きがあった。それがまたたく間に縮み始め、そして2007年、ついにスズキは37年間守り続けた軽ナンバー1の座から引きずり降ろされるのである。奥田の敷いた戦略に沿って、10年以上の年月をかけて、スズキはついに撃沈された
結果が歴然とする前に、スパっと決断してさばさばと行動するところが、オサムイズムなのだ
元来、タイの消費者には、軽ベースのクルマが売れないという特徴があった。市場の人気は1トンピックアップや中型の乗用車であり、大衆車が売れるインドネシア、マレーシアとは対極的な、富裕層を中心とした市場であった
2020年よりさらに先を見据えれば、インド国内販売は600万台の時代が訪れるだろう。その段階でスズキが市場シェア40%を維持できるなら、250万台のインド販売台数が視野に入ってくる。モータリゼーションの発展期を迎える中近東、アフリカ向け輸出を含めれば、300万台体制は決して夢物語ではないのだ
インドにはデリー、ムンバイ、チェンナイ、コルカタという大都市を中心とする4大経済圏がある。現在、この4都市を結ぶ全長5800キロメートルもの幹線道路の整備が実施されており、都市経済圏はネットワーク化されていく。自動車は、このネットワーク化された都市経済圏を取り囲むようにして普及していくものと考えられる
小さなクルマづくりで誰にも負けないことがスズキの存在証明である。スズキの競争力とは何かといえば、それは間違いなく、スズキが持つ小さなクルマづくりへの誇りであり、省資源、省スペース、省エネルギーを追求する精神だ
難局に立ち向かうのに何が必要かといえば、「技術」と「商品力」の問題に尽きます。技術と商品力があってマーケットを開拓できれば盤石ですよね(鈴木修)
一般人から見たらスズキは文句なしの大企業ですが、巨人がうごめく自動車業界では、「弱者」と言っていい存在です。
本書は、その「弱者」スズキが、どうやって巨人であるGMやVW、トヨタと戦ってきたか、その歴史と戦略を学べる一冊です。
人気アナリスト、中西孝樹さんの文章も相変わらず冴えており、じつに楽しく読むことができました。
これはぜひ、読んでいただきたい一冊です。
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著者はAmazon.co.jp立ち上げに参画した元バイヤー。現在でも、多数のメディアで連載を抱える土井英司が、旬のビジネス書の儲かる「読みどころ」をピンポイント紹介する無料メルマガ。毎日発行。