拉致問題を「政治利用」してのし上がった安倍総理の罪と罰

 

国会でブチ切れて反論する安倍総理の醜態

1月12日の衆院予算委員会では民主党の緒方林太郎が、蓮池著書の一部を引用して、「あなたは拉致を使ってのし上がった男ですか」と安倍に問うた。安倍は「その本をまだ読んでいないが、家族会の中からもその本に強い批判がある。……私は父親(安倍晋太郎外相・党幹事長)の秘書の時からこの問題に取り組んできて、この被害者を取り戻すことこそが政治の責任との思いで仕事をしてきた」と反論した。

緒方が重ねて、「世間的には、当時の安倍官房副長官が強硬に反対をして5人を北朝鮮に戻さなかったということになっているが、蓮池の本では安倍は蓮池の弟たちが一旦北朝鮮に戻ろうとするのを1度たりとも止めようとはせず、彼らの戻らないという意思が覆らないのを知って、渋々方針を転換したと書いていて、どちらが真実なのか」と糺すと、安倍はブチ切れ状態になって、「当時は、5人を戻すという流れだったが私は断固として反対し、最終的に私の官房副長官の部屋に集まって帰さないという判断をした」と叫んだ。

では蓮池が嘘を言っているというのかと緒方が畳みかけると、安倍は「私は誰かをうそつきとは言いたくないが、私が申し上げていることが真実であるということは、バッジをかけて申し上げる。私の言っていることが違っていたら私はやめますよ、国会議員をやめますよ。それははっきりと申し上げておく」とまで開き直った。

拉致問題が初めて国会で大きく取り上げられたのは1988年早々で、その頃によど号犯人グループ絡みで欧州で拉致されたとされる有本恵子の存在が明るみに出て、有本の両親が自民党幹事長だった安倍晋太郎に政府としての対処を陳情したという経緯があるので、晋三が父親の秘書時代から拉致問題に取り組んだというのは本当だろう。

とはいえ、それと2002年小泉訪朝で安倍がどういう役割を果たしたかは関係のない話で、その時の日朝和解による国交正常化への道筋打開に拉致問題での北の謝罪を絡ませるという際どい組み立ては、専ら田中均外務審議官とミスターXの秘密交渉によって設営されたものである。だから、その本番交渉の場で、小泉や田中が拉致被害者の問題で曖昧な態度であるのをたしなめて、安倍だけが断固たる姿勢を表明したなどということはありえない。作られた神話である。

さらに、5人が「一時帰国」した後に、政府全体が北との約束に従って5人を一旦は北に戻さなければならないと考えていたのに対し、安倍だけが終始一貫「断固として反対」したというのも、嘘だろう。それほど信念を持っていたのであれば、「一時帰国」の約束を反故にして日本に留まった場合に北に残してきた家族が酷い目に遭わないかどうか思い惑っていた5人を、安倍が自ら乗り出して説得してしかるべきだが、蓮池が書いているとおり、弟の薫には電話1本掛かってくることはなかった。蓮池が弟を説得し、他の4人も「戻らない」方向に傾いて覆らないと分かった時に「じゃあ仕方ない、そのように政府方針を固めましょうか」という話し合いが安倍官房副長官室で行われたというのは事実だろうが、だからといって安倍が最初から「断固として(戻すのに)反対」だったかに言うのは、これまた作られた神話である。

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