甘利氏「涙のサプライズ辞任」を美談にしたがる異常事態

 

この疑惑の特殊性は、ほぼすべての情報が、もっぱら一色武の証拠資料と証言にもとづくものであり、甘利側がそれにほとんど反論できず、自ら辞任の道を選んだことである。それをもって、文春の記事が事実と大きくは変わらないであろうと推定できる。だからこそ、安倍政権を守りたい人たちや、ライバルのスクープ価値を落としたいメディアは、情報提供者の「怪しさに照準をあてるしかないのだ。

たしかに一色武がいかなる人物かは気になるところである。「怪しすぎる」という見立ての新潮の記事では当然、ネガティブな側面が強調される。

一色は、千葉県白井市の建設会社「薩摩興業株式会社」の総務担当という肩書の名刺を持って活動している。しかし、単なる社員ではない。薩摩興業が隣接する土地で道路建設をはじめたUR(独立行政法人都市再生機構)とトラブルを起こし、URから損害賠償や立ち退き料を名目にカネを取ろうと画策したところに目を付けて、社内に入り込んだというのが実態だろう。カネの匂いを嗅ぎまわっている連中はゴロゴロいる。

薩摩興業は八王子の右翼団体Aと神奈川の右翼団体Bに計3,000万円を出して協力を依頼した。右翼団体Bの会長は大臣経験のある元国会議員と親しい。ところがこれらの団体の交渉が上手くいかず、激怒した薩摩興業の社長は2団体に1,000万円を返すよう求めた。むろん右翼団体はカネを支払う気などない。薩摩興業に右翼団体の構成員だった一色が入り込むのはこの頃らしい。

新潮の記事の一部を引用する。

「薩摩の社長には、私の部下と一色が交渉を続け、きちんと経過報告もすることで納得してもらった。そして、部下と一色はこれを機に薩摩興業の名刺を持つようになったのです」(右翼団体B元幹部)

 

…元国会議員を使ってもうまくいかなかったURとの交渉。そこで、一色氏が目をつけたのが、現役閣僚の甘利氏だった。

一色が甘利事務所に清島秘書を訪ねたのは2013年5月9日のこと。その数か月前、知人の紹介で知り合い、URへの口利きを依頼する目的で、あらためて会う約束を取りつけたのだ。一色の話を聞いた清島は、「私が間に入ってシャンシャンしましよう」と請け合った。

その後、URに内容証明を送り、甘利事務所の別の秘書がUR本社に赴くなどして、交渉を進めた結果、同年8月、薩摩興業はまんまとURから約2億2,000万円の補償金をせしめたのである。これだけのカネが手に入ると、政治家の口利きがいかにボロい利益につながるかを実感できる。一色や薩摩の社長はそういう気分だっただろう。

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