【東電】調査ロボットも回収できなかったのに「計画通り」ってどういうこと?

 

この時の判断のうち

  1. ルート変更が必要だという判断をだれがしたのか
  2. 落ちていたものはそれほど大きくないので、そのまま進むことはできなかったのか
  3. 狭い部分を通っても問題ないという判断はだれがしたのか

について、会見では回答がなかった。

例えば3.については、狭い部分を行けば、現場とモックアップに少しでも違いがあれば問題が発生することが予想される。それでも狭いところに向かったのはなぜなのかが、わからない。

また東電は、走行不能になった場合はケーブルを切断してロボットを内部に残すのは、当初から「検討」されていたと説明しているが、その割には、もっとも被曝量の大きかった協力企業の作業員は1.73mSvにも達していた。計画線量は2.5mSvなので、上限の70%にもなる。

計画線量は大きな余裕をもっていて、通常の作業では、計画線量の1割程度しか被曝しない。1日の作業で1mSvを超えることなど、めったない。最近の福島第一の「1か月の平均被曝量」は、東電社員で0.3mSv前後、協力企業で1mSv前後だ(被ばく線量の分布等について)。

計画通りにロボットを内部に残したというのなら、なぜこのような大量被曝になっているのか、説明が必要ではないだろうか。被曝量が大きくなったのは、現場でなにか問題が発生し、それに対処するために予定時間をオーバーして作業を続けたことが考えられるからだ。

10日から行った1台目のロボット調査では、東電社員8人、協力企業36人が参加。現場の雰囲気線量は1~5mSv/hで、もっとも多く被ばくしたのはロボットの調査を担当した人だったという。それならなおさらトラブルの可能性が濃厚だろう。東電には、被ばく量が大きくなった原因を明らかにしてほしいところだ。

ところで東電は、この計画に携わった作業員の被曝の平均値を明らかにしていない。今までもそうだが、なぜか東電は、作業の全体像が見える平均被曝量を、出さない。過去の会見担当者は、被曝量は「説明しない」と明確に言い切ったこともあった。あまりにも不誠実すぎる回答に、あ然としたものだ。

さらにいえば、建屋内部での調査の場合、作業員が長時間留まることになるため、事前に遮蔽などの準備が必要になる。今回の調査では、数週間前から準備にかかっており、その間、かなりの人数の作業員が高線量下の作業に従事していたことになる。いつから作業していたのか、何人が携わったのか、その被曝量はどうなのかについて、東電はいまだに説明していない。

作業の全体像がわからないのに、計画通りに調査が進んだ、問題ないなどという東電の説明を鵜呑みにすることはできないし、今後の作業が予定通りに進むと期待することもできない。こうした情報を明らかにすることで、はじめて、東電は信頼を取り戻すことができると思うのだけれども、何度も情報公開で失敗しているにもかかわらず、その認識は、東電には未だにないように見える。

image by: Wikipedia

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『木野龍逸の「ニッポン・リークス」』第31号より一部抜粋

【第31号の目次】
1.東電福島第一原発事故トピック
福島第一にロボの屍累々──現場調査の困難さと不十分な東電説明
<問題点を説明しない東電>
<作業員の被ばく量が大きかったのはなぜか>
<なぜ2台目まで残置したのか>
<ロボの屍累々でも、技術進歩の有無は見えない>
<ロボットは「要素技術」の組み合わせ>
2.気になる原発事故ニュース
(1)富岡、大熊、双葉、浪江に拠点施設整備へ 国際研究産業都市構想
(2)「ふたば未来学園高」開校 福島の復興支える人材に
(3)「東電の行為は姑息だ!」福島県飯館村の住民代理人が批判──原発
事故賠償の和解手続
3.編集後記

著者/木野龍逸
自身のブログ「キノリュウが行く」で東電原発事故を中心に情報を発信中。「ハイブリッド」(文春新書)など著書多数。メルマガには福島第一原発事故の現状について、また原発以外の話題についてもブログやツイッターでは読めない話題が。
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