しかし、金利をゼロまで下げ刺激したが企業も消費者もほとんど動かなかった。賃金が20年も上がっていなかったし、普通の生活に必要なものはほぼ揃い夢の商品がなかったからだろう。それと何より将来の生活や雇用に不安があり、むしろ金利が安くても将来に備えて貯蓄する方が安心だと考える人が多かったのだ。
しかも今回のマイナス金利の決定にあたって日銀の政策委員の票決は5対4というきわどいもので国民からすると日銀への信頼も揺らいでき始めていたのではないか。それと金融政策だけでデフレ脱却を目指すのは所詮ムリであって、安倍政権が打ち出している「3本の矢」「新3本の矢」といった財政や技術、イノベーションなどとの有機的連携がみえないと国民の気持ちも躍動しないだろう。
今の日本に必要なのは、アメリカを元気にしたITやバイオのイノベーション、EUを結成しヒト、カネ、モノを自由にした欧州合衆国の設計や中国が掲げる一帯一路、アジアインフラ投資銀行といった雄大な構想力とその実現ではないか。チマチマとした金融政策だけでは脱出できまい。
(電気新聞 2016年2月17日)
image by: Wikimedia Commons
『ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」』
ジャーナリスト嶌信彦が政治、経済などの時流の話題や取材日記をコラムとして発信。会長を務めるNPO法人日本ウズベキスタン協会やウズベキスタンの話題もお届けします。
<<登録はこちら>>
ページ: 1 2