毎回身近な「科学」を独自の目線で楽しくやさしく紹介してくださる生物物理学者・安井真人さんのメルマガ『科学日誌 寄付版』。今回は日本人の多くが信じ込んでいる、インフルエンザに対する「うがい」と「マスク」の効果についてなのですが…、常識を覆すお話に開いた口がふさがりません。
うがいの効果はたいしてない
よくうがいを奨励しているメディアを見かける。しかし、ウイルスが口に入った時点で、すべて取り除くことは不可能に近いことは容易に想像できる。あと、たまにうがいは喉を潤すと主張するが、水を飲めばいいだけの話である。はたしてうがいは効果があるのだろうか? うがいの効果を検証した研究が2005年に行われた。
● Satomura K et al., Am J Prev Med. 2005
この研究では、水うがい、ヨードうがい、うがいなしの3グループにわけて風邪の引きやすさについて検証した。以下がその結果である。
水うがい(122人) ヨードうがい(132人) うがいなし(130人)
※各観察日数左から
観察日数 0日目: 0% 0% 0%
観察日数10日目: 3% 10% 10%
観察日数60日目:30% 37% 40%
論文では、60日目における水うがいと、うがいなしでは10%の差があるという結果になった。P値も0.055であり、有意差はある。
この結果から、うがいには効果あると考えた人もいるだろう。しかし、私はうがいはたいした効果はないことを本統計は示していると考えている。まず、30%と40%でたいした差がない。P値も数百人と結構なサンプルをとったが0.055しかない。よって、うがいによる効果はたいしたことないと読みとくべきである。ヨードうがいに関しては有意差すらでないのでする必要はない。
うがいに毎日1分したとして、年間6時間である。結構な時間を浪費する割に効果のうすいうがいに時間をかけるべきではない。これが私の意見である。