「日本で働く女性の3割がセクハラ被害」に海外メディアもショック

2016.03.10
by ニュースフィア
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日本人女性へのセクハラに関する最新調査で、全体のおよそ3分の1に相当する女性が職場でセクハラ被害に遭っていることが明らかになった。同調査は、厚生労働省が現在就業中、または以前就業していた25~44歳の日本人女性を対象に実施し、約10,000名から回答を得たもので、正規・非正規関係なく実に多くの日本人女性が何らかの形でセクハラ被害に遭っているという深刻な実態が浮き彫りになった。

「3分の1」というショッキングな数値

最も多いセクハラのケースとして挙げられていたのは、「女性の外見・年齢・身体的特徴に対する不適切な発言」。他にも、全体の約17%が職場の男性から「肉体関係を結ぶよう持ち掛けられた、または強要された」と回答。さらに、約20%の女性が「妊娠を伝えた後にハラスメントを受けた」としている。

この調査結果については、ガーディアン、テレグラフ、フォーチュン、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)など多くの海外メディアが大々的に報じた。とくにフォーチュン誌は、“3分の1”という結果を「Shocking Number(ショッキングな数値)」と題してセンセーショナルに紹介した。

しかし、その内容にはあまり大きな差異はなく、どのメディアも“日本の労働環境におけるセクハラ被害の深刻さ”、“安倍首相の提言する「ウーマノミクス」と現状の乖離”、そして“妊娠中女性へのマタハラ”などを主要ポイントとして取り上げ、厳しく非難した。

「ウーマノミクス」実現には程遠い

なかでも、各主要メディアがこぞって非難していたのは、安倍政権が現在「ウーマノミクス」を推し進めているにもかかわらず、現状がその実現には程遠いということである。「ウーマノミクス」とは、“Woman(女性)+Ecomomics(経済)”を表す造語であり、男女間の就業率に大きな差がある日本において、女性の活用を増やすことで日本経済を活性化させようとする取り組みだ。少子高齢化が急速に進み労働力が不足しつつある日本の現状を改善するためにも、女性の働きやすい職場環境を整え、管理職への登用を進めることが必須とされてきた。

セクハラ問題と併せて取り上げられていたのは“日本人女性における非正規雇用の多さ”や“女性管理職の少なさ”だ。フォーチュン誌は、「現時点で、欧米よりも日本のほうが“働く女性”の割合は多いのだが、その多くは平社員であったり非正規雇用に就いている傾向にある。欧米に比べて、日本では管理職に就く女性の比率がかなり低い」と説明。また、ガーディアン紙も「従業員数100名以上の規模の会社における女性管理職の割合は、グローバル平均が約22%であるのに対し日本ではたったの約8%」と具体的なデータを挙げて指摘。職場での地位が低いことがセクハラの多さに繋がっていることを暗に示唆した。

セクハラ被害に遭っても声を上げない女性が多い

また、職場でセクハラ被害に遭っても、被害者の多くが反論せず“suffered in silence”、つまり「黙って耐えている」ことをガーディアンとテレグラフの両メディアが指摘している。同調査によれば、セクハラに対し勇気を出して声を上げた10%の女性は、結果的に「降格された、または不本意な言葉を浴びせられた」という。

「黙って耐えるのが美徳」とされる日本の文化的背景は、海外メディアには理解しがたい部分もあるのかもしれない。たとえ明らかに理不尽な目に遭っても、声を上げ意見を主張すると「事を荒立てるな」とかえって被害者が非難されてしまうということは、男女問わず多くの日本人が経験していることである。

全体的に、どの海外メディアも「日本は男女平等が遅れている」「女性差別が酷い」といった論調だ。ところで、“市井の日本人女性のリアルで冷静な意見”として国内外のネットユーザーの間で話題になった「Japanese Woman on Gender Gap in Japan」という動画がある。その動画には、女性差別の実体験と併せて、「日本人女性がある面では差別される一方で、別の面では優遇されている」、「職場における日本人男性への負担が大きすぎるので、家事育児への参加が難しくなっている」といった冷静な意見も紹介されており、海外からも多くの反響があったようだ。

文化的背景が異なる国々について、同じ基準で「男女平等」を測ろうとするのは、とても難しいことなのかもしれない。

(北川恭子)

 

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記事提供:ニュースフィア

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