ぶっちゃけフルマラソンは、テキトーな準備でも完走できる。だが、しかし……

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無料メルマガ『ランニング&健康・ウォーク「BEST RUN!」』にて好評連載中の「いまさら聞けないランニングの基本」。今回取りあげるテーマは、フルマラソンでの完走について。著者であるプロのランニングコーチ・鈴木彰さんによると、“完走すること”と“タイムを伸ばすこと”とは、かなり意味合いが違ってくるようで……。

マラソンは誰でも完走できる?

走ってはいけない人、走らない方がよい人がいることは前回、お伝えした通り。それでは、走ってもよい人、走れる人なら、誰でもフルマラソンを完走出来るのか、その可能性があるのか……というお話しです。

多くのランナーが、最初は数キロ程度のジョギングから少しずつ距離・時間を伸ばし、いつしかハーフマラソンを完走し、それから更にステップを上げていって、フルマラソンを完走出来るようになったという経験を持つものです。

一方で、たまたま抽選に当たった東京マラソンや、レジャー感覚のホノルルマラソンで、ほとんど準備らしい準備もしないまま、フルを完走(……とりあえずフィニッシュラインにたどり着く)してしまう人も大勢います。

マラソンは誰でも完走可能、たいした準備も要らない……そう言ってしまうと身も蓋もないのですが、現実にそれに近いことはないでもありません。

端的に言ってしまうと、人間という動物は、生来、42Km程度の距離を移動し続ける能力を持ち合わせてます。決して終始走り続けられるとは限りませんが、歩きを入れたり、途中で少し(けっこう)休憩を入れたりしながら、長い時間をかけて移動するということは、本来、多くの人にとって十分可能なのです。

東京マラソンやホノルルマラソンの完走率は95%を超えますが、そのうちのけっこうな割合の人は、はっきり言って、まともな準備はしていません!! それでもフィニッシュにはたどり着けるのです。

これが人間本来の能力であり、誰でも、ピクニックや軽登山などで数時間も歩き回ることが出来るというのと、根は同じです。普段、そんなことしてなくても、お休みの日にそういうところに行けば普通に出来るでしょう。そんなの当たり前だと思うかもしれませんが、それが人間のひとつの特性なのです。この延長で、行き当たりばったりでもマラソンは完走出来ちゃうのです。

ただし! 完走は出来ても、安全かどうかは保障の限りではありません。脚や腰を思いっきり痛めてしまい、長く患わなければならなくなっちゃう人や、疲労困憊して日常生活にも支障が出てくるような人も出てくるでしょう。そこんところは要注意で、初心者の思いも及ばぬ点でもあります。

そもそも論でいうと、マラソン完走に必要というか、完走能力を構成する要素というのは、

(1) 先天的な資質(長距離走に対する適性)
(2) 生育過程における運動経験・現在の基礎体力水準
(3) 準備=トレーニング
(4) 当日の頑張りと、取り組み(ペース配分や補給等)

こういうことの組み合わせになります。

(1)は、極端に低くなければ、完走だけなならあまり問題になりません。で、けっこう(2)だけで完走なら出来ちゃう!という面はあります。

あるいは(2)+(4)ですね。まあ、マラソン完走チャレンジということ自体が、ほとんど(4)だけの、アドベンチャーみたいになっている人も決して少なくありません。

誤解を恐れずにいえば、(3)は、非常に重要な要素ではあるものの、完走するだけなら、絶対不可欠というわけではありません。だから完走率は異常に高かったりするわけなんですけど。

また、けっこうテキトウなトレーニングをしてても支障はないというか、たいしたプラスにもなっていないけど、マイナスにもならないので、現実問題として、ほとんど(2)+(4)だけで完走出来ちゃってるってこともありますね。

ただここで問題が生じやすくなります。そのテキトウなトレーニングを過信してしまい(このトレーニングのおかげで、マラソンを完走出来たぁ!という思い込み)、その後の本格的なトレーニングへシフトし切れず、タイム的には伸び悩むってことが起こるのです。

完走するのと、タイムを伸ばすのとでは、やはりかなり違うわけです。

ちなみに(1)~(4)は、いずれもかなりの個人差があります。

それだけを考えても、このメニューを消化すれば、誰でもこれだけのタイムで走れる!!……みたいなことは起こり得ないわけなのです。既にスタートラインが違うんですから。

文/鈴木彰(NPO法人あっとランナー代表理事 e-Athletesヘッドコーチ)

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