【3分間書評】古代ギリシャの伝説の書に学ぶ、他人を説き伏す技術

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今回の「3分間書評」で取り上げるのは、古代ギリシャの大哲学者・アリストテレスによる不朽の書『弁論術』を、現代的に噛み砕いて、わかりやすく解説した一冊。これさえ読めば「著者・講演家として一皮むけるのは必至」と土井英司さんも太鼓判を押す、かなりの注目作のようですよ。

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『アリストテレス無敵の「弁論術」』高橋健太郎・著 朝日新聞出版

こんにちは、土井英司です。

2300年前に書かれ、いまなお威力を失わない、伝説の書があります。その書籍は、各時代のリーダーたちによって読まれ、政治やビジネスを支えてきました。

書籍の名前は、『弁論術』

古代ギリシャの哲学者アリストテレスが、説得のための技術をまとめた、不朽の名著です。

本日ご紹介するのは、このアリストテレスの不朽の名著『弁論術』をわかりやすくまとめ、実用性抜群のビジネス書ノウハウ書に仕立てあげた力作。

文章を書く人、人前で話す人にとっては、「これを読まずに始まらない」と言い切れるほど、重要な内容が含まれています。

説得パターンのテンプレート「トポス」や、怒りや友愛、恐れ、恥などの感情を利用する話し方、人柄の演出方法まで、相手を説得するあらゆるノウハウが書かれています。

・相手の納得済みの事柄(常識)を出発点にする
・根拠が「個別・具体的」な方が、説得力は増す
・徳を感じさせるには「美しいもの」を論じる

挙げていけばキリがありませんが、なかでも重要なのは、あの有名な「説得の三大要素」でしょう。

◆説得の三大要素
その1.「話す人の人柄」
その2.「聞く人の気分」
その3.「話の内容の正しさ」

本書では、この3要素を挙げるにとどまらず、どうやってこの3要素を高めるか、具体的な方法論が書かれています。

そして、実際の文章術や話術に役立つのは、説得パターンのテンプレートとも言える「トポス」

いくつか、この「トポス」をチェックしてみましょう。

◆定義のトポス
主張したいことの前に、「AとはBである」という定義をあえてさし込み、「だから~」と展開し、説得力を増すもの

 

例)「そもそも人生はつらいことの連続だよ。(だから)うまくいかなくてもあきらめずにがんばろう」

◆相関のトポス
「相関関係にある二つのことのうち、一方に当てはまることは、もう一方にも当てはまるべきだ」という前提に立つ

 

例)「偽ブランド品を売ることが悪いことなら、それを買うのも悪いことだ。だから買うべきではない」

◆比較のトポス
「AがBよりある事柄を持つ可能性が高い場合、その事柄を、Aが持っていないなら、Bはなおさら持てない」というもの

 

例)「プロ野球の選手が打てないんだから、草野球の選手が打つのはとても無理だ。だから、佐藤が打つのは無理だろう」

◆分割のトポス
あるものを分割・整理し、一つ一つについて論じるもの

 

例)「私が犯人であるためには、三つの要素が必要です。一つ、アリバイがないこと。二つ、動機があること。三つ、実行能力があること。しかし、まず私は犯行時間に現場から遠くはなれた温泉宿に泊まっていた。次に、被害者は私のビジネスパートナーで、いなくなったら困るのは私です。最後に、女性の私に男性を正面から絞め殺すのはとても無理でしょう。どれ一つとして当てはまらないのです。だから私は無実だ」

これ一冊を読んで、テンプレートを使いこなせれば、著者・講演家として一皮むけるのは必至。もともとの『弁論術』のノウハウが良いのが理由とはいえ、ここまで噛み砕いて実践的に説明できるとは。

これは、ひさびさに読み応えのある一冊でした。

『毎日3分読書革命!土井英司のビジネスブックマラソン』
著者はAmazon.co.jp立ち上げに参画した元バイヤー。現在でも、多数のメディアで連載を抱える土井英司が、旬のビジネス書の儲かる「読みどころ」をピンポイント紹介する無料メルマガ。毎日発行。
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