アメリカといえば、コーヒー大好きガブ飲み大国。しかし近年、コーヒーに対抗する飲み物として上陸したのが台湾生まれの「バブルティー」。日本では「タピオカミルクティー」の名で知られている飲み物です。サンフランシスコ・ベイエリアを皮切りに全米へ続々と進出し頭角を現しています。
米国コーヒー市場を成功に導いた秘策とは?
アメリカ人にとってコーヒーショップは生活の一部といってもよさそうです。
仕事の打ち合わせに始まり、趣味クラブの集まり、そしてカップルのドキドキ初デートにもこの場所はなくてはならない空間なのです。
これだけアメリカ人の日常生活に溶け込んだコーヒーショップですが、初めから彼らがコーヒーマニアだったからこれだけ広まったのかというと、どうもそうではないようです。
コーヒー市場の怪物「スターバックス」や、2番手の「ダンキンドーナツ」(名前に似合わず、実は主力はコーヒーチェーン)といった企業の大規模展開を可能にしたのは、「均質化されたサービス」。
チェーン展開には結局のところ、どこでどの店に入っても同じサービスを受けられるという一貫性のある便利さと快適さが不可欠なのです。
経済評論家のLuigi Zingales氏は著書の中でこう述べています。
「1990年台半ば以降のIT情報技術の発達により、規模拡大を効率的に行える組織力とノウハウを備えた企業が勝ちを収めてきた。”規模拡大”という言葉はシリコンバレーの代名詞かもしれないが、これはアップルのものだけではなく、シアトル発祥のスターバックスも同様である」。
この規模拡大の成功の秘訣には、“官僚制”(高度に統治化された仕組み)があるようです。
一般にネガティブに捉えられがちなこの言葉ですが、広範囲に点在する従業員たちが確実に任務遂行できるよう強力なルールに基づいた手順を確立するためには、この仕組みが欠かせません。
例えばマクドナルドの”官僚化”されたハンバーガー作りには、600ページにも渡る手順ごとに細かく整備されたオペレーションマニュアルがあることで、世界のどこに新規出店するにも、速くかつ一貫した品質を保つ展開が可能となるのです。
台湾生まれの「QQ(ぷにゅぷにゅ)感」が世界で人気
そして、このコーヒーショップ文化に変革を挑んでいるのが、「バブルティー」。
タピオカミルクティーやボバティー、パールミルクティーとも呼ばれている飲み物。
これは1980年代に台湾で大人気となった、タピオカ入りの甘いミルクティーで、タピオカを粒ごと吸えるような太いストローで飲むソフトドリンクです。
近年、日本でも飲まれるようになりました。
バブルとボバは発音が似ていますが、単語的には全く無関係で、バブルはカップを振るとミルクが泡立つことから来た言葉で、ボバはタピオカボールのことを表す台湾の俗語だそうです。
このバブルティー、世界的にはすでにかなり大きなマーケットになっているようですが、怪物スターバックスの規模(アメリカだけで店舗数が1万3千以上、時価総額は88.4億ドル)には、どこのバブルティー企業もまだ届いていません。
以下が、有名な4つの企業です。
チャタイム(ChaTime):世界に1000店舗以上を展開し、台湾株式市場に上場済み
クィクリー(Quickly):4カ国に2000店舗以上を展開
ゴンチャ (Gong Cha) :1000店舗以上あり、年に100店舗以上のペースで出店
ココ フレッシュ ティー&ジュース(Co Co Fresh Tea & Juice) : 北米とアジア、南アフリカに拡大中
台湾企業のバブルティーも、スケール展開の秘策である“官僚化”をもちろん行っています。
まず客が店に入ると、店員は微笑みながらその注文を受けます。
砂糖や氷の分量は明確に決まっていて、わかりやすい選択肢の中から選ぶことができます。
店員は必ず注文を復唱し、客はレジの脇のタブレット画面でそれを確認します。
店員は出てきた注文ラベルをカップに貼って、ドリンクを作る同僚に手渡します。
そしてほんの2〜3分で、客はできあがった注文どおりのバブルティーを受け取ることができる、というお決まりの手順です。