それは区別か、差別か。LGBTの「トイレ使用」に関する法案が全米で物議

2016.05.24
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みなさんは「LGBT」という言葉を聞いた事がありますか? 最近では、日本国内でも耳にする機会が増えて来ていると思います。このLGBTへの取り組みは、各国で大きな動きを見せていますが、法的な対処のスピードや考え方は国によって大きく異なります。日本国内での動きを踏まえ、各国の取り組みについて見てみましょう。

LGBTに対するアメリカでの取り組みと分断された意見

LGBT」とはレズビアンゲイ両性愛者バイセクシュアル)、性同一性障害を含む性別越境者など(トランスジェンダー)の頭文字を取って作られた言葉。

現在、LGBTに該当する人々に対する法律制定への取り組みが各国で進められています。

5月、カリフォルニア州議会が、男女に分かれた通常のトイレとは別に、LGBT専用トイレを設置するための法案を通し、大きな話題を呼んでいます。

というのも2016年3月、LGBTへの取り組みで真逆の可決を行った州があったからです。

アメリカ国内での人口は10位、南東部に位置するノースカロライナ州では3月23日、「House Bill 2」(略称HB2)という、反LGBTといえる法律が可決されています

これにより、同州では地方自治体がLGBTについての反差別法を作ることができなくなりました。

この可決のきっかけとなったのは、「トランスジェンダーの人々は、自認するジェンダーに沿ったトイレを使用できる」という「バスルーム法」と呼ばれる同州シャーロット市で制定された反差別法でした。

「この決定は間違っている」と判断した同州のパット・マクロリー知事は、「LGBTの人も、あくまで身体的な性別に基づいてトイレを使わなければならない」という、バスルーム法を否定する内容を含めたHB2を制定。

この一連の動きにはじまり、アメリカ国内では大きな反響がありました。

「アメリカは大きな国だから、ひとつの意見がすべての人に受け入れられるはずがない。でもこれは、多様性を皆で考える絶好のチャンスになるはず」

「LGBTは少数派であって、決してマジョリティではない。国は少数派の要求ではなくて、あくまで多数派の要求に答えるべきだ」 

「女性や幼い女の子がいる親たちはどう思っているの? たしかに男性は女性がトイレに入って来ても気にしないかもしれないけれど、女性は男性がトイレに入って来た時に気にしないはずないのでは?」

「HB2に反対する人もいるけど、じゃあ性別に関わらずどちらのトイレにも入れるって状況はどうなの?クレイジーすぎるよ」

「そもそも今の公共トイレに入って行く人をチェックする警備員なんている? 犯罪目的で女性トイレに忍び込んだ男性がいたとしたって止められる状況じゃないじゃない。こんな法律作ったって何の意味もないわよ」

アメリカでは州別に法律が制定され、交通法規も税制も州によってバラバラ。

今回のカリフォルニアとノースカロライナのように、真逆のアクションがとられることも珍しくありません。

しかし、2016年のアメリカ全土を対象とした調査では、55%が同性婚に反対し賛成派は35%という統計も出ており、LGBTに対する考え方は、必ずしも寛容とは言えない状況のようです。

国民の間で議論が白熱する中、州を跨いでビジネスを行う企業のCEOたちは3月下旬、HB2への反対の意思を示す声明文を連名で提出しています。

中には2014年にゲイであることをカミングアウトしたアップル社のティム・クック氏や、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ氏、その他にもグーグルIBMツイッタースターバックスシティバンクなどのCEOが名前を連ね、そのリストは冒頭の声明文に続いて5ページ、約90社に及んでいます。

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ゲイであることをカミングアウトしたアップル社CEOティム・クック氏

 

世界で決済サービスを提供するペイパル社は、ノースカロライナ州で計画していた事業センターの設立を見送り、ドイツ銀行も先月、同州で予定していた事業拡大計画を凍結させると発表。

合わせて650の雇用機会が失われたと予測されています。

企業だけでなく、アメリカの人気バンドMaroon5や、ロック歌手のブルース・スプリングスティーン氏はHB2に抗議の姿勢を示すため、同州でのライブをキャンセルしました。

州内で経済的な効果をもたらす企業や、国民への影響力あるアーティストによる反対意見は、州にとっても安易に無視できるものではなさそうですね。

アメリカ以外でのLGBTへの取り組みは?

アメリカにおけるLGBTの考え方はまちまちで、なかなか収まる気配はありませんが、メキシコの大統領は5月国内での同性婚を認める提案を発表し、これが可決されれば、メキシコはラテンアメリカで5つ目の同性婚を認める国となります。

ちなみに、現在世界で同性婚を認めている国は以下のとおり。

オランダ、ベルギー、スペイン、ノルウェー、スウェーデン、ポルトガル、アイスランド、デンマーク、フランス、南アフリカ、アルゼンチン、カナダ、ニュージーランド、ウルグアイ、イギリス、ブラジル、米国、メキシコ、ルクセンブルク、アイルランド、グリーンランド(デンマーク自治領)、エストニア、コロンビア、フィンランド

アジアではまだ例がありませんが、タイ、台湾、ベトナムでは、同性結婚法案が国会で審議されています。

2015年の電通ダイバーシティ・ラボの調べによると、日本国内におけるLGBTの人口は7.6%で、左利きの人口とほぼ同数とのこと。

なんと市場規模は5.9兆円

渋谷区や世田谷区では同性パートナーシップを認める制度を導入しています。

企業もLGBTを支援する取り組みを進めており、日本航空と日本トランスオーシャン航空は、航空券の購入や買い物でためたマイルを、家族や配偶者と同じように、パートナー間でも分け合えるサービスの提供をはじめています。

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東京で毎年おこなわれているLGBTパレード「Tokyo Rainbow Pride」の様子

 

しかし、そもそもLGBTを知らない人による学校や会社内での否定的な発言や、社内規定が整っていない企業はまだまだ多く、一般的には他国と比べて日本のLGBTへの認識や取り組みは遅れていると言わざるをえないのが現状です。

みなさんも、ぜひ自分のまわりで行われている取り組みや、世界中で議論されているLGBTの動向を追ってみてはいかがでしょうか。

image by: Joseph Sohm / Shutterstock.com

source by:  Harvard Business Review/ HRC/ The Verge/ NYMAG.COM/ The Christian Schience Monitor/ EMA日本/ 沖縄タイムス

文/長塚香織

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