実は資源大国のギリシャ。デフォルト騒動にはドイツの思惑があった?

 

紐付き融資とドイツの帝国化政策

これは言って見れば、ドイツが全EUを自らの経済圏として編成するドイツの帝国化の動きにほかならない。EUではドイツ経済が最強なので、そうした強い経済と共通通貨を使うことになったら、そのような状況になることは当然の成り行きではないかという見方もできる。ドイツは意識して帝国化したわけではないということだ。

だが、EUをドイツ経済圏として編成する方向はドイツ政府によってかなり意識的に実施されていた。それはたとえば、ドイツで長い間続いている賃金の抑制政策に見て取れる。2002年のユーロ導入後、EU全体で労働力需要が高まったため、各国では平均27%もの賃金上昇があった。通常ならば景気のよいドイツでもこの水準を上回る賃金の上昇があってもおかしくない。

しかしドイツ政府は、高賃金が競争力にマイナスに働くとして、賃金の伸びを7%に抑制する政策を実施した。この結果、ただでさえ強いドイツ経済は、南ヨーロッパを圧倒することになった。

それだけではない。いまギリシャはトロイカへの債務の返済に苦しんでいるが、かなり以前からドイツ政府はギリシャにかなり大きな融資を提供していた。もちろんこの融資の返済は国債の発行に依存しており、ギリシャが国債を過剰発行するための背景のひとつになっていた。

ではドイツの融資はどのような目的に使われたのであろうか? 実はこの融資は日本の「政府開発援助(ODA)」と同じように、ドイツ企業の製品を購入するこために使われることが条件となっていた。特にこの融資はドイツの兵器産業に使われ、ギリシャはドイツ製兵器のかっこうの市場になった。

ドイツ国内の野党である「左派党」などからも、「これはドイツがギリシャを市場化するために借金づけにしたのだから、ギリシャの債務問題の責任はドイツにある。ギリシャ国民に債務の支払いを押し付けるべきではない」とドイツ政府を非難する声もある。

ギリシャの従属構造

日本ではギリシャの債務問題を一方的にギリシャの放漫財政のせいにして責める報道ばかりだが、実際の債務の実態を見ると、ギリシャがドイツのくいものになっていた事実が浮かび上がってくる。このようにして、ギリシャはドイツ経済の成長を支えるための市場として、ドイツ経済圏に組み込まれたのだ。

これとほぼ同じことはフランスも行っていた。また、ドイツの紐付き融資の提供先はギリシャのみならず、スペイン、ポルトガル、イタリアにも行われていたであろう。

これは明らかに、ドイツを中心とした従属構造である。この構造をこれからも維持するのであれば、ギリシャを緊縮財政を強制して追い込むのではなく、ギリシャ経済に回復する余地を与えるために、もっと緩やかな返済プランを受け入れてもよいはずだ。そちらのほうが従属構造を維持できるため、長期的にはドイツにとって有利なはずだ。

だが、ドイツを中心とする「トロイカ」は、ことのほか強硬だ。口ではギリシャのデフォルトは望まないと言いつつも、妥協を拒否する強硬な姿勢はギリシャをデフォルトへと追い込んでいるようにさえ見える。

>>次ページ なぜドイツはギリシャをここまで追いつめるのか?

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