実は資源大国のギリシャ。デフォルト騒動にはドイツの思惑があった?

 

デフォルトを望むEUと資源大国ギリシャ

そのような強硬な姿勢の裏には、なにか別な意図があるような匂いさえ感じてしまう。どうなのだろうか?

日本では、「トロイカ」のギリシャ支援プログラムの条件として緊縮財政だけが注目されているが、条件はこれだけではない。ギリシャ政府が保有する国営資産の大規模な民営化が条件になっている。ギリシャは社会主義的な福祉国家であったため、ガス、石油、電気水道、鉱山など多くの分野で国営企業が多数存在している。これらの国営企業を民営化して、その売却で得られた資金を債務返済に充当することが条件になっていた。そのため、ピレウス港や国営ガス会社など、多くの国営企業の民営化プロセスが進んでいた。

そのようななか、実はギリシャがヨーロッパ最大の資源大国である事実が分かってきた。ちょうどギリシャの債務危機が判明した2010年、東地中海の沖合のギリシャ、トルコ、キプロスの国境上に巨大な海底油田が発見された。早速ギリシャ政府は、国営企業の「シルタキ・エネルギー」に調査をさせたところ、イオニア海には220億バーレルの油田があり、さらに北エーゲ海には40億バーレルのガス田があることが分かった。これは世界第12位の埋蔵量だ。

さらにギリシャの北東部には、「スコリーズ金鉱山」が発見されている。ここの埋蔵量は、ヨーロッパのみならず世界最大であると見られている。

さて、こうした天然資源の掘削はすべてギリシャの国営企業が行っていた。だが、2012年くらいから、支援計画の条件となっていた民営化のプロセスが始まり、ドイツを筆頭とした企業への売却が進められた。

実は、昨年に成立した「シリザ」のチプラス政権は、この民営化プロセスを国益に反するとして停止し、国営に戻そうとしている政権なのだ。

このように見ると、今回のギリシャの債務問題にははるかに深い背景があることが分かる。ドイツはギリシャのデフォルトを望んでいるのかもしれない。

あまりに長くなるので、続きは次回に書く。

image by: Shutterstock

『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』より一部抜粋

著者/ヤス
早稲田大学卒。企業の語学研修、IT関連研修、企業関連セミナー、コンサルティング等を担当。世界の未来を、政治経済のみならず予言やスピリチュアル系など利用可能なあらゆる枠組みを使い見通しを立てる。ブログ『ヤスの備忘録』で紹介しきれない重要な情報や分析をメルマガで配信。
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