【書評】日本人が見抜けない、外国人の「ウソ」と「騙し」のテクニック

 

現実世界では、この本は具体的にどう役に立つのか?

我が国では「ウソはついてはいけない、正直に生きよう」という、素晴らしい文化的伝統が現在まで脈々と受け継がれているが、異文化との衝突、異民族との間の殺戮合戦をくり返して、否応無しに身も心も鍛えられてきた諸外国の人々にとっては、「ウソをうまく使うことはある意味当然である」という認識・意識が厳然と存在していることは否めない。

ところがグローバル化した現在の世界情勢下においては、諸外国と外交を行う際に、相手の繰り出してくる「ウソ」や「騙し」に対して、日本人だけが極めて鈍感であり、国際社会の冷酷な現実を知らない、というのがいかに致命的でナイーブ」なものであるかは容易にご理解いただけよう。

我々日本人が普段ほとんど行うことのない知的作業、すなわち「ウソ」そのものを「分類」する、という極めて特殊なことを行っていることに、この本の意義がある。

ミアシャイマー教授は今回の著書の中で、「ウソ」だけでも

  1. 「戦略的」
  2. 「自己中心的」

なものの二種類があること、そしてさらに、「騙しの仲間として

  1. 「印象操作」
  2. 「秘匿」

という二種類を挙げて、詳細な分類を行なっている。

必ずしも論理的思考に慣れているわけではない我々日本人からすると、「そのような『理屈っぽい』知識など何の役に立つのだ!」と、思ってしまいがちである。しかし、今後、グローバル化が増々進む世界において、日本人が外国人と交渉・折衝を行う際には、このような知識はデフォルトとして認識しておくべきものなのだ。そして本書からはそのような普通のビジネス本には書かれていない、基本的な認識・知識を大いに学ぶことができるのである。

たとえば「印象操作」に類するものは、実際に日本でも、就職活動などをはじめ、ビジネスの現場においてはごく日常的に行われている、ということは、いかに「ナイーブ」な我々でも、リアルに実感出来るのではないだろうか。

そして、外国の友人やビジネスパートナーがいる方であれば、ある程度は実感していると思うが、彼らは「ウソそのものはあまり言わない代わりに、「印象操作」や「秘匿」を駆使した、「騙しを日常的に行っていることが理解できるのだ。

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