【書評】日本人が見抜けない、外国人の「ウソ」と「騙し」のテクニック

 

本書はそれ以外にも、日本国内はもちろん、海外のメディアの情報を分析する際などに、彼らのいわゆる「レトリック」などを見抜くのに活用することができる。

たとえば、ある一つの情報が報じられた際に注目すべきは、その情報が「何を報じたのか?」ということよりも、「何が報じられなかったのか?」という点にあることは、情報分析の初歩の初歩である。

つまり、この「知らされなかった部分」を本書の内容に即して言えば、「戦略的隠蔽秘匿」になるのだが、これを知るために伝統的に使われてきた手法が、いわゆる「スパイ」であり、それに関する活動などを学問的に研究しようということで最近注目されているのが「インテリジェンス」という分野である。

更に、このスキームを「個人の分析に適用してみることも可能だ。まさか本書のアイディアが個人に使えるはずがない、と思われるかもしれないが、発想豊かに拡げ、分析の対象・範囲を拡大して解釈してみると、例えば、「自分の正直な気持ちにはウソをつきつつ、他人には素直な気持ちを話している」といった行動を取る人がいることにも、なるほど、納得出来るのである。

つまり自分を客観的に分析する際にも、このミアシャイマー教授のスキームは多いに活用出来るわけである。

本書を実際に手にとって読み始めて頂けば直ぐお気付きになると思うが、ミアシャイマー教授のその他の著書と同様、各章毎の構成がスッキリとした論理構造になっているので、その構造の大枠さえ先に掴んでしまえば、自らが興味を惹かれた章から読み進めるのも良いかもしれない。

それよりも重要なのは、これから先、我が日本国が対峙せざる得ない、諸外国との厳しい交渉・折衝の場において確実にサバイバルするため「嗅覚」を本書お読みになったみなさんも身に付けて頂きたい、ということだ。

それこそが「リアリズム」学派における世界的な泰斗であるミアシャイマー教授の著書を皆さんに紹介している、本当の狙いでもあるのだ。

image by: Shutterstock

 

日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信
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