子どもの頃によく遊んだおもちゃの中に、「折り紙」があります。今では「ORIGAMI」として、広く海外でも知られていますが、最近は折り紙をモチーフにして新たなアイテムを生み出す芸術家たちが続々と登場してきました。今回はそんな「ORIGAMI-Inspired (折り紙にインスパイアされた) グッズ」をご紹介します。
移動も楽々、狭いマンションでも収納に困らない「折り畳みカヌー」
FAST COMPANYは折り紙に影響を受けてカヌーを作った人を紹介しています。
ベルギーの都市ヘントに住むOtto Van De Steene氏の趣味はカヌー。
ですが、都心でカヌーを所有するのは、収納や移動など、何かと問題が多いのだそう。
それでも、都会での暮らしは慣れてしまうと退屈で、毎日同じ場所を往復する生活から抜け出したいと思っていたVan De Steene氏は、折り紙でカヌーを折って遊んでいた時にふと、折り紙のカヌーの実物大、つまり折り畳み式のカヌーを作ることを思いついたのです。
わざわざ車に乗せなくても持ち運びやすく、狭いマンションでも収納に困らないのではないかと考えたそうです。
以前にも携帯用のカヌーに挑戦したそうですが、うまくいかなかったとのこと。
「水上で速いスピードが出せる高性能のカヌーは、その代わり本当に重くて、組み立てるだけでも1時間はかかってしまうし、膨張式のカヌーは急流下りには最適だけど、穏やかな川下りには不向きなんだ」
そこで彼の友人であり、エンジニアでもあるThomas Weyn氏と協力して、折り畳み式カヌーの原形を製作すること2年。
「Onak」と名付けられたその折り畳み式カヌーは、スーツケースサイズに折り畳むことができ、自宅のクローゼットにも簡単に収納可能で、持ち運びもラクラクです。
つまり、例えば自分の住む街を飛び出して、スーツケースに折り畳んだカヌーを持ち込んで、国内外の川や海を満喫することも可能なのです。
今回の製作では、これまた折り紙をヒントに開発されたカヤック「Oru」を参考にしていますが、Oruはプラスチック製の段ボールシートで作られているのに対して、Onakはポリプロピレンから作られています。
そのため、Oruに比べて強硬で軽く、より丈夫なのだそう。
また、現在特許を出願中のこの素材は、再利用が可能で、何より長持ちするとのこと。
「人命を乗せるボートは、長持ちして丈夫であることが必須条件」。
確かに、水上で漕ぐボートが軟弱では、恐ろしくて乗れませんよね。
Van De Steene氏は、今後この折り畳みカヌーをもっと広めたいそうです。
より気軽に、手軽にカヌーを楽しむ人たちが増えるようにと、Kickstarterにて現在クラウドファンディングを行っています。
電池や建造物など他にも続々、「ORIGAMI-Inspired」
昔に比べて漏電しにくく、長持ちするようになった電池類。
性能が上がると同時に、その価格も高くなっています。
そこでBinghamton大学の研究者たちがコスト削減のために思いついたのが、紙でできた使い捨て電池。
その見た目はまるで忍者の手裏剣のようです。
初期に作られたものに比べて折り畳み部分がより大きくなり、その結果より多くの電力を蓄え、より高いボルト数まで達することができるようになったそうです。
これが「紙製電池」。
とても電池には見えませんよね。
1ユニット当たりわずか70セント (日本円で約70円) ほどで購入可能だそう。
また、折り紙にインスパイアされた建造物も世界中で展開されています。
Tel Aviv Museum of Art (イスラエル)
image by: Architizer
Nestlé Chocolate Museum (メキシコ)
image by: Architizer
Panteón Nube (スペイン)
image by: Architizer
Klein Bottle House (オーストラリア)
image by: Architizer
Park Pavilion (スペイン)
image by: Architizer
Karuizawa Museum Complex (日本)
image by: Architizer
Embedded Project (中国)
image by: Architizer
Centre for Sustainable Energy Technologies (中国)
image by: Architizer
Origami House (スペイン)
image by: Architizer
どれも独創的で奇抜なデザインですが、いずれも確かに「折り紙」を感じますよね。
折り紙を愛する建築家たちは、「普通の建物には成し得ないことができるのが折り紙の魅力だ」と語ります。
折り紙では、大胆なフォルムをたった1枚の紙切れで表現することができます。その構成は建築物にも共通する「本質的な構造」であり、それでいて曲げたり縮めたり広げたり、建築物にはできない手法が可能であることが、折り紙の魅力なのだそう。
私たちが小さい頃から慣れ親しんだ折り紙が、こうして世界中の芸術家から称賛され、何かのモチーフとして利用されるのは、何とも言い難い嬉しさがありますよね。
何だか久しぶりに折り紙で遊んでみたくなりませんか?
image by: Onak公式フェイスブック
Source by: FASTCOMPANY、Oru、Kickstarter、GIPHY、POPURAR SCIENCE、Architizer, ONAK CANOES
文/貞賀 三奈美