消費税の還付金で「トヨタがボロ儲け」は果たして本当なのか?

 

上の記事を書いた人は、還付金の部分だけを見て「電装が苦労して収めた消費税を、トヨタ自動車が還付金として受け取っている」と文句を言っているのですが、これは大きな勘違いです。還付金は、トヨタ自動車が電装から部品を購入する際に払った消費税のうち輸出分に相当する分を払い戻してもらっているだけなのです。

一方、これとは違う話ですが、実際に消費税増税が中小企業を苦しめるケースもあり、そちらは大いに注目に値します。消費税が5%から8%に上昇した際に、大企業が部品を提供する下請け企業に対し「消費税の上昇分の値引きを迫るケースです。

立場の弱い小さな町工場あたりだと、顧客から「消費税の上昇分の値引き」を迫られた際に断れなくなるケースが実際によくあるあるそうです。そもそも粗利益率の高くない下請け会社にとっては、売り上げの3%に相当する値下げは、非常に重い負担なのです。ただし、その場合にも、決して、下請けが消費税を過剰に支払ったり購入側が消費税を着服したりするわけではないので、そこは正しく認識する必要があります。

国は、「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」という、不当な値引きの強要を禁止する法律を作りましたが、必ずしも守られていない上に実体の把握が難しいのが現状です。

つまり、問題視すべきなのは還付金ではなく、(実際に幅広く行われている)大企業が下請け企業に迫る「消費税の上昇分の値引きの強要」なのです。この記事は、全国商工団体連合会の発行する新聞に掲載されたようですが、そんな媒体に、こんな的外れの記事が書かれてしまうこと自体が私にはどうも納得できません。

image by: Aggie 11 / Shutterstock.com

 

週刊 Life is beautiful』より一部抜粋

著者/中島聡(ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア)
マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。IT業界から日本の原発問題まで、感情論を排した冷静な筆致で綴られるメルマガは必読。
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