なぜ安倍総理はフィリピンのドゥテルテ大統領を責めなかったか?

 

日本は、アメリカとフィリピンの仲を取り持つ

皆さんご存知のように、アメリカとフィリピンの関係は相当悪化しています。ドゥテルテさんは、オバマさんのことを、「売春婦の子」と呼んでいる。そして、「アメリカとの軍事演習は今年が最後だ!」と言う。訪中時には、「グッバイ、アメリカ!」と宣言し、習近平を大喜びさせました。これは、中国と問題を抱える日本にとって、極めてマズイ事態。今回の首脳会談では、どうだったのでしょうか?

首相は、大統領が先に「決別した」と言及した対米関係について説明を求めた。これに対し、大統領は「米国と外交関係を断ち切るわけではない」と釈明した。両首脳は、南シナ海問題の平和的解決や日米、米比同盟の重要性を確認する共同声明に署名した。
(同上)

「日米、【米比同盟】の重要性を確認する共同声明に署名した」。

これも重要ですね。ドゥテルテさん、オバマさんのことは嫌いでも、安倍総理が間に入ったので、こんな共同声明になったのでしょう。

総理は、ちゃっかりフィリピンの防衛力を強化する

さて、フィリピンと中国の和解を歓迎するといった安倍総理。その一方で、ちゃっかりフィリピンの防衛力を強化しました。

安全保障分野では、フィリピンの海上対処能力を向上させるため、大型巡視船2隻の供与や、海上自衛隊練習機「TC90」の貸与で合意。
(同上)

これは、中国の脅威に怯えるフィリピンが最も欲しいものでしょう。安倍、ドゥテルテ会談の結果は、こうなりました。

大統領は首相のフィリピン訪問を招請し、首相も快諾した。
(同上)

というわけで、首脳会談は成功だったようです。安倍総理、オバマさんを見習って、ドゥテルテさんを冷遇することもできました。しかし、アメリカとは正反対で、ドゥテルテさんを引き寄せた。日本外交も、少しずつ自立に向かっている気すらします。

image by: 首相官邸

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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