「豊かな社会」の悲惨な末路。なぜ機械化社会は格差を産んだのか?

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2016年から続く、トランプ大統領の就任、英国のEU離脱、欧州における極右政党の台頭など、不安定な世界情勢が続いています。Windows95の設計にも携わった世界的エンジニアである中島聡さんは、自身のメルマガ『週刊 Life is beautiful』の中で、今のような世界情勢を作り上げた一因に「より豊かになる」ことを目指し過ぎたエンジニア達にもあると持論を展開。「機械化社会」のあり方に疑問を投げかけています。

機械化社会のあり方

米国の大統領選の結果や、英国のEUからの離脱を見てつくづく感じるのは、このままでは世界はますます不安定になって行くという事実です。ソフトウェア・エンジニアの私がなぜそんなことを気にするかと言えば、それは私が過去30年以上に渡って、深く関わってきた情報革命、そして、ようやく黎明期を迎えた AI 革命と深く関わっているからです。

古くは産業革命から始まり、エンジニアたちが作った「機械」は、社会の生産性を上げ、人類を豊かにすることに貢献してきました。しかし、同時に、人から職を奪ってきたことも否定できません。

人々の働く場が、農林水産業から製造業へ、そして製造業からサービス業へとシフトして来た一番の理由は「機械化」でなのです。機械にできることは機械にさせた方が安いし効率も良い、人間は人間にしかできないことをすべき、という話です。

各国のGNPは伸び、ものは安くなり、電気自動車やスマートフォンが身近なものになり、そこだけ見れば、私たちの生活は「豊かになった」と言えます。

しかし、同時に起こっていることは貧富の差の増大です。マシンやコンピュータを作ることのできるエンジニアたち、それを活用したビジネスをグローバルに展開する経営者たち、そんなビジネスに投資をする資産家たちに富が集中し、機械化により職を失ったり、最低賃金でサービス業で働くことを余儀なくされた人たちが貧困生活を送る、という構図が出来てしまったのです。

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