天皇退位は「一代限り」か。新聞各紙の報道を比較してわかった温度差

uttii20170124
 

1月23日に安倍総理に提出された、天皇陛下の退位を巡る政府の有識者会議の論点整理。民進党の野田幹事長が「一つの方向に傾斜している」と疑問を呈すなど、まさに賛否両論渦巻く展開となっていますが、新聞各紙はこの論点整理の内容についてどう報じたのでしょうか。メルマガ『uttiiの電子版ウォッチ』の著者でジャーナリストの内田誠さんが詳しく分析、解説しています。

「一代限り」の特例法の流れ変わらず。「退位」問題を巡る有識者会議の論点整理提出を、各紙はどう報じたか

【ラインナップ】

◆1面トップの見出しから……。

《朝日》…「退位「一代限り」推奨」
《読売》…「退位「一代限り」の方向」
《毎日》…「退位「一代限り」促す」
《東京》…「「一代限り」色濃く」

◆解説面の見出しから……。

《朝日》…「典範改正の課題列挙」
《読売》…「論点整理 国会に配慮」
《毎日》…「退位論議 結論ありき」
《東京》…「国会に議論ゆだねる」

ハドル

天皇の退位を巡る有識者会議の論点整理提出で、各紙の1面トップと解説面が揃いました。《朝日》は定番解説面の代わりにトランプ氏関係の解説を載せているのですが、次の面に匹敵する規模のものを持ってきています。というわけで…。今日のテーマは「一代限りの特例法の流れ変わらず。退位問題を巡る有識者会議の論点整理提出を各紙はどう報じたか、です。

基本的な報道内容

天皇の退位を巡る政府の有識者会議は、これまでの議論を中間的にまとめた論点整理を安倍総理に提出。一代限りの退位容認が望ましいとする考えが強く出た内容で、政府は近く国会に提示。与野党の意見を踏まえた上で、4月以降に関連法案を国会に提出し、成立を図りたい考え。

特例法ありき

【朝日】は1面トップと3面の解説記事。7面には論点整理の全文を掲載。見出しを並べる。

  • 退位「一代限り」推奨
  • 有識者会議 法整備 明示せず
  • 特例法ありき 本質論低調(視点)
  • 典範改正の課題列挙
  • 恒久制度か 反論盛る
  • 「見せ方」に腐心

uttiiの眼

今回の論点整理が、事実上、政府が推進しようとしている特例法を後押しする内容となったとして、《朝日》は1面記事に付けた記者による「視点」で、この論点整理は特例法ありきのものであり、「日本国憲法における天皇の役割」というような、もともと有識者会議が専門家のヒアリングを行うに当たって論点の冒頭に掲げていた本質的な論点について議論が深まらなかったと批判している。

その結果として、天皇陛下の「お気持ち」が問いかけていた、「象徴天皇制はどうあるべきか」については、議論を深めていく課題があったのに疎かにされ、「事実上先送りされた」としている。

「視点」は最後に、「3月末にもまとめる最終提言では意見の羅列にとどめず、皇室制度の専門家を含まない有識者会議メンバーだからこそできる、『国民目線に立った説得力のある論理を示してほしい」と、かなり大上段に要求。有識者会議の大義名分に沿った批判を展開している。課せられた崇高な使命を果たせということだろう。

結論ありき」という言葉をキチンと使っていること、今回の中間報告を「意見の羅列」と一刀両断にしていること、以上2つの点で、主張が明確になっている。「退位の恒久的な制度化」を望む声も大きいなか、結局は「政権の施策に対するお墨付き効果」だけに終わらせるのであれば、何のために時間と金と労力を費やしたのかと批判されても仕方がないだろう。

3面の解説は、論点整理がこうした内容になった経緯を分析していて興味深い。政府が推進する特例法案と野党の多くが必要だとする皇室典範改正との間で一種の妥協が成立するのでないかとみられていたが、有識者会議の6人は座長代理の御厨氏をはじめ、「特例法」を支持する人たちばかり。特例法案を容認する内容になるとの方向性が見えてきた頃から、民進党や議長などから、不信感や不快感が表明されてきた。そうした立法府側の反発を受けて、報告書の体裁が総花的になったとの理解が示されている。さて、国会ではどんな議論になることか。

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