移民阻止。世界が失笑した「トランプの壁」は物理的に可能なのか?

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トランプ米大統領が選挙中から主張し続けていたメキシコとの国境に「壁」を作る計画、いわゆる「トランプの壁」。選挙期間中は、パフォーマンスとしての発言と見られていたのですが、大統領就任後も「メキシコに費用を負担させて壁を作る」と繰り返し、ついにはメキシコからの輸入品に課税するという発言まで飛び出しています。静岡県立大学グローバル地域センター特任助教の西恭之さんは、軍事アナリスト・小川和久氏の主宰するメルマガ『NEWSを疑え!』の中で「あの壁が完成する可能性は限りなく低い」と断言。その根拠を様々な視点から検証し列挙しています。

実現可能性から「トランプの壁」を眺めると…

トランプ米大統領が、メキシコとの国境全体に壁を築くとの大統領令に署名し、建設費をメキシコに負担させるという当選前の発言を繰り返したことを受けて、メキシコのペニャ・ニエト大統領は1月28日、トランプ氏との首脳会談を中止した。トランプ氏はその後、壁の建設費にあてるため、メキシコからの輸入品に課税する考えを示した。

しかし、そのような課税は世界貿易機関(WTO)協定違反であり、米国が実施した場合、メキシコは米国製品のコピー商品の取締りを中止するなどの報復措置が可能となる。メキシコがWTOに提訴すれば、ここでまずトランプ大統領の「壁」は第一の躓きに直面することになる。

壁そのものについても完成する可能性は高くない。メキシコとの国境全体に壁を築くことは、費用と期間がかかる割に、密入国や麻薬密輸を阻止するうえで、既存のフェンスを上回る効果は期待できない。トランプ氏が、壁の建設費をメキシコに払わせることにこだわっているのは、国境全体の壁の建設費を米議会が支出する見込みはないと理解しているからかもしれない。

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