尖閣「安保適用」確認にしがみつく日本の安全保障の危うさ

 

トランプも中国と戦争をするつもりはない?

第3に、オバマもそうだったが、トランプもたぶん、中国と戦争を構えるなんてお止めなさいという立場だろう。彼は9日、明日は安倍首相が来て「日米同盟を強化して中国と戦いましょう」と言い寄ってくるのを百も承知の上で、習近平=中国主席と初めての電話会談を行い、「1つの中国原則を尊重する旨を伝えた。翌日の安倍首相との共同会見で産経新聞記者から中国の東シナ海・南シナ海での強硬姿勢にどう対応するかを問われたトランプは、こう答えた。

私は昨日、中国の国家主席と素晴らしい会話をした。我々は仲良くなろうとしているところだと思う。日本にとってもそれはとても利益になるだろう。

「対中国ズレ」と題した朝日新聞12日付の解説によると、

尖閣問題を抱え、中国の軍事拡張に懸念を強める首相としては、トランプの対中国強硬姿勢はマイナスではなかった。海洋進出への懸念で足並みをそろえ、中国を牽制する絵を描いてきた。

この日の会見でも、首相は「東シナ海、南シナ海、インド洋、いずれの場所であろうとも航行の自由をはじめ、法の支配に基づく国際秩序が貫徹されなければならない」と強調。米中がせめぎあう南シナ海に触れた。

ところが、日本メディアから中国への認識を問われたトランプは、前日の習との電話会談に言及、一転して融和的な姿勢を前面に出した。

首相にしてみれば、はしごを外されかねない展開とも言えるだけに、トランプの隣で落ち着かない様子を見せた……。

TPPが経済・通商面からの対中包囲網なのだから思い直してくれという安倍の訴えかけには、トランプは全く耳を貸さなかった。そこで、尖閣を持ち出して安保面からの対中包囲網を再確認しようとしているまさにその時に、トランプは中国とは仲良くするので日本もそうしろと言った。これでは安倍首相は面子が立たない。

とはいえ、トランプ政権の中枢では親中派と反中派がせめぎ合っていて、対中政策が今後どう転がるかは予測の限りではない。共和党系の外交政策エスタブリッシュメントの大ボスで親中派のキッシンジャー元国務長官はトランプに対して強い影響力を持っていて、9日の習との電話会談もその勧めによるものと言われている。しかし一方でトランプは、『中国による死』『米中もし戦わば』などの著作で知られる狂信的なまでの反中派のピーター・ナバロ=カリフォルニア大学教授を国家通商会議議長に任命しており、その影響力が強まる可能性もある。

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