その食事がうつ病の原因に?「うつ病と食生活」の意外な関係

2017.04.25
by gyouza(まぐまぐ編集部)
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うつ病を招く生活習慣として、ストレスや睡眠の習慣が関連していることは広く知られています。

最近では、食生活も深く関わることが注目されているのをご存じでしょうか。

誰でも起こりうるうつ病を予防するために、身近な食生活の見直しをしてみましょう。

今回は「うつ病と食生活の関係」についてご紹介していきます。

うつ病と食事の関係

うつ病はまだまだわからないことが多い疾患です。

それでも、これまで多くの研究が行われ、原因になりうることや、うつ病によって起こる身体の変化がわかってきています。

その人がもともと持つうつ病になりやすい性質である遺伝的要因、几帳面、責任感が強い、他人からの依頼を断れないなどの性格的要因、ストレスや環境の変化、睡眠不足、運動不足、食生活の乱れ、身体の病気、薬の影響といった環境的要因など、複数の要因が重なりあって発症します。

うつ病になると脳の機能に異常が生じ、神経伝達物質のセロトニン、ノルアドレナリンの量が減っていることがわかっています。

また、精神活動、運動、言語などを担う脳の前頭葉を中心に、脳の血流や代謝が低下していることもわかってきています。

ヒトは食事で摂る栄養素のおかげで身体のあらゆる機能を働かせることができます。

当然ながら、脳の機能も例外ではありません。神経伝達物質を作り、運び、働かすことや、脳の血流や代謝を促すことにも、食事で摂る栄養素や食事の摂り方が深く関わっているのです。

何気なくやっていませんか?うつ病を招く食生活

何気なくやっている食生活が実はうつ病のリスクになっていることもあります。

次のような食生活をしていませんか?

食事を抜くことがある、朝食を食べない

健康な身体づくりのためには、特定の栄養素を摂ることよりもまず、「1日3回の食事をバランスよく」が基本です。

なぜなら栄養素はそれぞれが影響しあって働き、全身のさまざまな場所で働いているからです。

特定の栄養素ばかりをたくさんとっても、一緒に働く栄養素がなければうまく働かなかったり、働いてほしいところで働かないということが起きます。

また栄養不足は、集中力の低下やイライラなどといった精神的不安定につながります。

適度なタイミングと量で必要な栄養素を補うためには、基本を守ることが大切なのです。

食事を短時間で済ますことが多い、仕事をしながら食べることが多い

カラダとココロの健康は、戦闘モードの「交感神経」とリラックスモードの「副交感神経」という2つの自律神経のバランスによって保たれています。

副交感神経が優位になる時間が少なく、自律神経のバランスが乱れると、不眠や抑うつ状態など、うつ病につながる症状を引き起こします。

副交感神経が優位になる時間のひとつが食事中。

ひとりでパパっと食べるなど、戦闘モードのまま食べると、副交感神経が優位になる時間が減ってしまいます。

必要な栄養素が摂れていない(食生活が偏っている)

また、身体に必要な栄養素が不足することもうつ病に関係しています。次のような食生活を送っていませんか?

○主食・主菜・副菜がそろわない食事が多い、菜食主義者だ

○インスタントやレトルト食品、ファストフードが多い

○食事制限のダイエットをしている

 

このような食生活を送っていると、身体に必要な栄養素が不足してしまいます。

どういうことなのか、次の項で栄養素について詳しく解説していきます。

うつ病を予防する栄養素

精神疾患が広く知られるようになり、発症や悪化の予防に効果のある栄養素についても、多くの研究が行われるようになりました。

けれども、残念ながら、明確に効果があるといえる特定の栄養素は今のところありません。

ただ、改善効果は明らかではないものの、うつ病に関わる可能性が示唆されている栄養素がふたつあります。

その1.オメガ3系脂肪酸

「オメガ3系脂肪酸」は、脂質の一種です。体内で作ることができず、食物から摂る必要がある必須脂肪酸のひとつです。

なぜオメガ3系脂肪酸が効くのかは研究段階ですが、脳の細胞膜を柔らかくし、脳を活性化させる働きが関係していると考えられています。

また、オメガ3系脂肪酸のひとつであるDHAは神経伝達物質を受け取る膜を作る材料です。

不足すると神経伝達がうまくいかなくなり、それが精神疾患の発症や悪化に影響しているのではないかと考えられています。

オメガ3系脂肪酸は、アジ、イワシ、サバなどの青魚に多く含まれる魚油、エゴマ油や亜麻仁油などに多く含まれています。

その2.トリプトファン

セロトニンが不足すると、脳の働きに不調が起こります。トリプトファンはセロトニンの原料となるアミノ酸です。

アミノ酸はたんぱく質の構成成分であることから、たんぱく質の多い食品に含まれます。中でも豆腐や納豆、肉、魚、チーズなどにはトリプトファンを多く含む食品です。

脳の組織や神経伝達物質を作るには、ビタミンB群、鉄分なども必要です。

これらは肉、魚、大豆製品に多く含まれるものなので、主菜をしっかり食べることが大切です。さらに、脳に栄養素を運び、合成を促すためには「糖質」が必要です。

結局のところ、特定の栄養素だけではなく、主食と主菜を合わせて食べるという基本の食事が重要というわけです。

うつ病を予防する食生活を始めよう!

うつ病を予防する食生活とは、1日3回、主食・主菜(特に魚)・副菜をそろえた和食中心の食事をとること、そしてよく噛み、楽しんで食べることです。

しかし、忙しい日常生活でこのような食生活を毎日毎食で実現することは難しいでしょう。

まずは、1日3回食べるようにする、1日の中で1回は基本の食事を心がけるなど、自分ができる範囲で予防に取り組んでみましょう。

 

執筆:山本 ともよ(管理栄養士・サプリメントアドバイザー・食生活アドバイザー)
医療監修:株式会社とらうべ

 

<執筆者プロフィール>
山本 ともよ(やまもと・ともよ)
管理栄養士・サプリメントアドバイザー・食生活アドバイザー。
株式会社 とらうべ 社員。企業で働く人の食と健康指導。糖尿病など疾病をもった人の食生活指導など活動中

<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

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記事提供:Mocosuku(もこすく)

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